伊達弘樹の極めて強運な人生

「ほらっ! 寒いからって気を抜くな。真面目に素振りをすればすぐに暖かくなる」
 えっらそ〜に、竹刀をばんばんと格技場の床に叩き付けながら、やる気なさげに竹刀を振る生徒に喝をいれている体育教師の吾妻に、伊達弘樹はちらりと冷たい視線を投げた。
 足さばきが基本からして間違っているだとか、本人は決まっているつもりであろう素振りが、最後まで振り切れていなくて、しかも肘が開いているだなんてだなんてことは、この際どうでもいい。
 いくら、金鷲旗・玉竜旗(柔剣道における甲子園みたいな大会)の存在さえ知らない生徒達が相手だからといって、教える方がこんなに礼儀作法がなっていなくてどうする。
 確かに足さばきと素振りは剣道の基本中の基本でああるが、剣道にはもっと大切なものがある。
 柔道ももちろんそうではあるが、剣道は武士道の精神を色濃く残すスポーツであるから、相手に対する礼儀、更には道具に対する礼儀を重んじる。
 武士にとって剣が命の次に大切なものであるのと同様に、剣道をする人間にとって竹刀は決して粗末に扱ってはいけないものだ。
 そんなことは、ちょっとでも剣道を真面目にやったことがある人間ならばすぐに判ることだ。
 剣先を床につけることさえ許されなければ、床に置いてある竹刀をまたぐだなんてもってのほか。ましてやその竹刀で床を叩きつけるだなんて良いも悪いもない、問題外だ。
 そんな奴に竹刀を持つ資格はない。
 ましてや、他の人間を指導する資格など──
 とはいえ、単なる体育教師にそんなものを望むことが間違っていることは弘樹にも判ってはいる。
 彼らは決められた授業の内容を決められた時間数こなす為だけに、この剣道授業を行っているのだから。
 和泉澤には竹刀片手に生徒指導に精を出すような教員などいなかったから、この手の不愉快さをしばらく忘れていた弘樹だったが、それを思い出すと同時に、前通っていた高校の記憶が蘇ってきた。
 スカート丈が高々規定より2センチ程短かった女生徒──しかも、彼女のスカートが短かったのは、急に身長が伸びてしまったせいだ──の足を、常に携帯している竹刀でいきなり叩き付けた生徒指導の教員。
 彼は、校則は校則だと、彼女を助けにふたりの間に割って入った弘樹の話を聞こうともしなかった。
 弘樹はその教員に激しい怒りを感じた。
 理由も聞かずにいきなり暴力に訴えるところにも、校則と自分だけが全て正しいと思っているような尊大な態度にも、なにより竹刀をそんな風に扱うところにも。
 が、だからと言って、彼が率いる剣道部の主将が優勝を狙っていた県主催の剣道大会に個人でエントリーし、その優勝をかっさらった弘樹も大人げはない。
 まあ、16歳の高校1年生にそんなに大人げがあっても貰っても困るという話ではあるが。
 そんなこんなで、妙なところで思いこみの激しい弘樹は、竹刀を粗末に扱うヤツは絶対に尊敬にできない人間だと決めつけていた。
 もちろん、そんな体育教師の言うことなど、ひとつも聞いてやりはしない。
 大体、スパーンではなくぼふっという音を立てるわ、剣先から中結いまでの位置で打てていないわ、踏み込みは甘いわ、あげくに竹刀の弦(ツル)が下を向いているわといった、できることならばマイナス1本を取ってやりたいくらいに不様な打ち込みをして見せたあげくに、「これは悪い見本だ」というオチをつけなかった体育教師から教えられるべきことなど、弘樹には一つもない。
 吾妻をちょっと挑発してやって、自分が模擬試合の相手になれば、彼をこてんぱんにやっつけることは出来ただろうが、そんなことをしたってなんの得にもならないことは、弘樹にも解っている。
 ただ、黙って時間が過ぎるのを待つだけだ。
 だが、せめてもの反抗に、あからさまにやる気なさげに。
 当然のように弘樹のそんな態度は、体育教師の目についた。
 足は冷たいし、何年物か知れない学校の備品の防具は酸っぱいんだかかびくさいんだか一概には形容しがたい臭いを放っているし、(一応武器を持っているので)怪我人が出ないように気をつけなくてはならないしといった、この剣道授業。
 唯一の良いところがあるとすれば、指導にかこつけて、普段は様々な事情から手を出しかねる生徒達を(防具の上からとはいえ)思いっきり殴りつけられるところだ。
 実際、この剣道授業というのは、彼のいいストレス解消法なのである。
 だが、今日の彼は、そのために自分の相手として弘樹を指名することはしなかった。
 そんなことをしたら逆に自分がやられると察した彼の野生の勘なのか、それとももっと楽しい企画を思いついたからなのかは、当の本人も含め、誰にも解らない。
 ただ、その日の授業終了時。
 体育教師の口から、2年A・B組(時間割の関係で体育は2クラス合同授業)の生徒に、10日後に新春剣道大会(町内企画)なるものが開催されるという情報が与えられ、続いてこう問われる。
「この大会に出たい者はいないか?」
 そう言いながら、吾妻の視線はしっかりと弘樹を見据えていた。
 俺の授業を真面目に受ける気がないのならば、この大会で優勝でもしてみせろよと言わんばかりに──

☆   ☆   ☆

 折角の休日を潰されるのだから、大会参加を望む生徒は皆無かと思いきや。
 吾妻とて、長年教師をやってはいないから、生徒を動かすツボというのを心得ていた。
 1回でも勝てたヤツには、食堂のプリペイドカード500円分、ベスト8に入ったならば同じく3,000円分、ベスト4なら5,000円、まかり間違って優勝したならば今年度の体育授業は免除の上に10段階評価での8以上保証、更にプリペイドカード1万円分をつけることを約束したのだ。
 そんなに金が欲しければ、近所の中学生相手に家庭教師でもやれば、もっと短時間で楽に稼げるだろうに、気分の盛り上がり方の違いなのだろうか、何故か高校生はこういう企画に弱い。
 斯くして、和泉澤学園には、多少なりとも運動神経に自信がある者達による、にわか剣道同好会が発足し、大会までの10日間、格技場はいつにない賑わいを見せることとなる。
 結局のところ、彼らは暇なのだ。
 まんまと吾妻の口車に乗せられ、剣道同好会の申請に来たクラスメートに呆れた視線を投げかけながら、生徒会室で彼が差し出す書類をチェックしていた神岡智史は、チェックの途中であんぐりと口を開けた。
 どうやら本人の許可なく、大会にエントリーする人間を全てメンバーとして記述してあるらしい、その書類には、何故か自分の同居人──つーか、厳密に言えば恋人──の名前があったからだ。
 いや、確かに和泉澤の生徒の中では、吾妻の企画に乗って得をできそうなのは弘樹だけし、その体育教師があからさまに彼を挑発していたのは知っている。
 だが、弘樹という奴は、そういうキャラじゃなくって、なんつーかこう、もっとアレな感じ──そう、ルパン3世に出てくる五右ェ門みたいな奴で、剣道を金の為に使うような人間ではないし、自分より程度の低い者の挑発に乗ったりはしない奴なのだ。
 そう、思えば弘樹には『またつまらぬものを斬ってしまった……』とかいう台詞が良く似合いそうだ。
 ──じゃなくって!
 部屋に戻ったら、そのことを問いただしてみなくては、と気持ちを明後日の方向にやりつつも、智史は生徒会長印を書類に押した。
 そんな智史は知らない。
 自分さえ今初めて知ったこの事実を、風折迅樹はとっくの昔に知っていたことを。

☆   ☆   ☆

「いけーっ、伊達! そこだっ! 退くなっ! 前だっ前に出ろっ! 1本っ! 今の入っただろうがっ! どこ見てんだ審判っ!」
 ──それはお前だ。今のは入ってない。
 試合中にもかかわらず、弘樹は心の中で吾妻の声援に突っ込みを入れた。
 多分、当初の目的は勢い込んで剣道大会に出場した生徒に結局は骨折り損だったと思い知らせる為に仕組んだことだろうに。
 弘樹が剣道大会で順調に勝ち進んでいく内に、吾妻の目の色は変わってきた。彼が試合に出る度に大きな声で声援を送ってくるのだ。
 ──ふん、突如愛校心でも芽生えたか。
 心の中で吐き捨てつつ、相手が振り下ろしてきた竹刀をすりあげて面──今度こそ1本。
 思った通り、審判が3人揃って弘樹が銅の紐に結びつけているたすきと同じ色の旗を上げる。
 柔道と違って剣道は1本取れば勝ちではない。だが、残り時間が10秒そこそこの現在、余程のことがないかぎり弘樹の勝ちは動かない。
 それでも気は抜かずに定位置に戻って、主審の二本目開始の声を聞くと同時に竹刀を振り上けかけた相手に、出小手(竹刀を振り上げかけた相手の小手を、自分が打たれる前に素早く取る技)でとどめの1本。
 これで弘樹は決勝に勝ち残ったことになる。
 別に内緒にしていた訳ではないのだが、報告する前にバレてしまって、智史に問いただされた時にも言ったことなのだが、弘樹がこの大会に参加したのは、別にプリペイドカードが目的ではない。
 弘樹が狙うはただ一つ。大会優勝のオプションである、今学期の体育授業免除である。
 別に体育は嫌いじゃないが、あれ以上吾妻のなんちゃって剣道授業と竹刀の扱いを目の当たりにしていたら、キレずにいられる自信がなかったからだ。
 こういう言い方は何ではあるが、所詮優勝してもペラペラの賞状と副賞の竹刀が1本もらえる程度のこの大会。ちょっとばかり不純な動機で優勝したところで罰は当たるまい。
 ──それにしても……
 なんにつけても、吾妻という男はうっとうしい。
 弘樹が強いと解ると、ころりと態度を変えて、周りの人間に彼を指導したのは私ですよとアピールするかのように(本人的には)アドバイス(のつもりのもの)をしてくるのだ。
 それを綺麗さっぱり無視して、弘樹はギャラリーへ視線を移した。
 それでなくとも朝に弱くて、更に寝不足続きでへろへろの智史ではあるが、それでも試合は見に来てくれるあたり、言葉とは裏腹に弘樹の恋人は行動が割と可愛い。
 そんなつもりは全くなかったけれど、弘樹が勝ち上がる度に歓声を上げて喜んでくれる智史の姿が見られただけで、この大会に出場した意味はあったと思いさえする。
 だが、そこに居るはずの智史の姿はなく、呼んでも居ないのに何故かちゃっかりその場に居た、風折と涼の姿があるばかりだ。
 自分が吾妻に気をとられている隙にトイレにでもたったかな(自分の試合中は絶対に智史が席を立たないと思っている辺りがさすが弘樹)、と首を傾げた瞬間、風折がおいでおいでと手を振り、廊下の方を指差した。
 よもや智史に何かあったかと、うながされるまま廊下に出た弘樹は、風折からそのよもやな話を聞くこととなる。
 先刻の弘樹の試合中、寝不足の為か突如具合の悪くなった智史は今、このスポーツセンターの向かいにあるホテルの一室で休んでいるのだという。
 どうしてスポーツセンターの医務室ではなくホテルの一室なのかと尋ねれば、「だって今、ここの医務室カラでしょうが」という簡潔な答え。
 確かに試合中に怪我人が出た場合に備え、医務室の人間は全て会場に出ている。
 風折が言うように「それにアレ、病気じゃなくて単なる寝不足でしょ」ということならば、その会場で医者なり看護士なりを探して時間をくうよりは、さっさと智史の寝場所を確保してやった方が彼の為だろう。
 ましてや、目の前のホテルの看板の上に、小さく風折観光グループと入っていたならば、そうなって当然だ。
「それに智史も大丈夫だから、試合が終わるまで弘樹には知らせるなって言ってたし。弘樹が心配して試合に集中できなくなったら困るからだって。まあ、ここんとこが智史のツメの甘いところだよね。知らせなくたって、会場に彼がいなけりゃ君は試合に集中できないだろうに。ってな訳で、僕判断で君に知らせることにした訳。感謝してよ」
 例によってすかさず恩を売ってくる風折の言葉に、取りあえず頷きはしたものの、弘樹の意識は既に智史の病状(?)に飛んでいた。
 自分がこんな大会に出ると言わなければ、智史は今日くらいはゆっくりと寝られただろうし、こんなところで倒れることもなかっただろうし、作りたくもない風折への借りも作らなくて済んだのに──とか、今したところでどうなるものでもない後悔にさいなまれながら、苦しそうにベッドに横たわる智史の姿を想像して弘樹の眉間にしわが寄る。
 普通に考えれば寝不足で倒れた人間ってのは、すやすやと幸せそうに寝ているにもんだろうに──だなんて突っ込みは、智史が倒れたと聞いて既に一杯一杯になってしまっている弘樹には、どうか入れないでやって欲しい。
 そんな弘樹の様子に、仕方ないなと言わんばかりに軽く肩をすくめると、風折はジャケットのポケットからカードキーを取り出し、弘樹の手に握らせた。
「次の試合までちょっとは時間あるだろ。寝てるだけだから多分大丈夫だけど、気になるなら様子見といでよ」
 それを受け取った弘樹は、胴をつけたままの剣道着という姿が、そのホテルロビーでものすごく目を引くだろうだなんてことはおかまいなしに、素足にスニーカーを引っかけ、スポーツセンターを飛び出した。
 なぜなら、この世で弘樹が一番信用していないのが、案外見栄はりな智史の『大丈夫』という言葉だからである。

☆   ☆   ☆

「風折迅樹……あんにゃろ〜、覚えてろよ」
 智史がベッドに横たわるホテルの一室にて。
 弘樹は握り締めた拳と声を震わせながら、とてつもなく低い声で彼に似合わぬ台詞を呟いていた。
 弘樹の想像とは大分様子が違ってはいたが、やっぱり智史が大丈夫ではなかったからだ。
 彼がこの部屋に飛び込んだ時、智史は自分の身を抱き込むようにしてベッドの上で身もだえしていた。
 予想以上に苦しそうな智史の様子に、病院にいった方が良いのではないかと思った弘樹が、彼の身体に手を触れようとすると、その手は「触るなっ!」という大声と共に、思いがけない力で払いのけられた。
 そんな状態の人間に「俺は大丈夫だから試合に戻れ」と言われたところで、到底そんなことが出来るはずもなく。
 粘ったあげくに、弘樹は智史からとうとう真実を引き出した。
 確かに寝不足気味ではあったけれど、普段からして寝不足慣れ(?)している智史にしたら、こんなものは寝不足の内に入らない程度のもので、ましてや具合が悪くなることなど有り得ない。
 多分、1時間程前に風折が奢ってくれた自販機のコーヒーに何か入れられていたに違いない、という智史の話を聞いて、弘樹は一瞬にして、その『何か』が『何』であるかを察した。
 多分もきっとも恐らくもありはしない。
 風折は絶対に、一月ばかり前に智史を脅迫するネタに使った『とある薬』を使いやがったのだ。
 弘樹の呟きを聞いて、彼が自分に盛られた薬が何であるかに気付いてしまったことが解ったのだろう。
 智史は弘樹をなだめにかかる。
「風折さんの目的は……よく解んねーけど……お前を…ここに寄こしたってことは……彼が俺に何か…する気は…ないってことだ。……ああ…つーか…お前を優勝させない…ことが目的か。……だったら…まんまと…風折さんの…思うとおりに……することねーし。それに……俺は…取りあえず人目の…ないところにいれば……問題ない…し。だから…な、試合……戻れよ。まだ間に…合う…だろ」
 智史の言葉に弘樹はチラリと室内の時計を眺めた。
 確かに今から全力疾走で会場に戻れば、試合開始時刻にはなんとか間に合う。
 しかし、こんな状態の──涙目になりながら、時折じれったそうに身もだえし、話すことさえ辛そうに浅い呼吸を繰り返す──智史を見てしまっては、彼を放ってはおけない──というか放っておいたら男じゃない。
 やっぱり、妙なところで思いこみの激しい弘樹は、多分話すのも辛い状態の癖に、早く試合に行けと言い続ける智史の口を、彼の得意技で塞いだ。
 それでも果敢に抵抗を試みる智史の動きを封じる為に、徐々に口付けを深くしてゆきながら、今はもう自分の身体を守ってくれるものではなく、ただ邪魔なだけなものに成り下がった防具の紐を三ヵ所片手で素早く解き、ホテルの床へと放り投げた。
 その防具は絨毯の上で一旦弾み、その衝撃でゆらゆらと左右に揺れた。
 そして、その動きが止まる頃には──
 智史の両腕は恋人の首にからまっており、スポーツセンターでは、弘樹の対戦相手に不戦勝が宣言されていた──

☆   ☆   ☆

「よし、合格」
 弘樹の不戦敗が決まった丁度その時。
 涼とならんで二階ギャラリーに座っていた風折は小さな声で呟いた。
 そんな風折に向かって涼が「何が?」と尋ねてくる。
「智史には弘樹ぐらい思いこみの激しくて行動力のある奴が丁度いいってことさ。智史の大丈夫は弘樹が思ってるよりは本当に大丈夫なんだけど、それでも大丈夫って言葉が出る時点で多少は無理してるってことでしょ。だから、智史の側には智史を信用してない人間が居なきゃ駄目なの。でもって、弘樹が試合に戻ってこなかったことは、彼が智史を信用してないことの証明な訳。まっ、解っちゃいたけど最終確認みたいなものかな。ともかく、これで僕は安心して卒業できるよ」
「迅樹〜、俺にも解るように話せよ」
「今の話を聞いて解らないような人は、説明したって解りません。ほら、帰るよ涼」
「それ、ひでーよ迅樹。きちんと話してくれれば俺だって解るってば」
 ──言って解ってくれるなら、僕はこんなに苦労してないって。
 と心の中で呟きながらも、スポーツセンターを後にする風折の顔には、大層ご機嫌な表情が浮かんでいた。
 それはもちろん、智史と弘樹の行く末に安堵を覚えたからではない。
 先程、口にしたのは、当の本人達に詰め寄られた時に言ってやろうと思っている言い訳だ。
 剣道大会で弘樹が勝ち進むに連れ、いきなり始まった──というか、風折が裏で糸を引いて始めさせた──トトカルチョ。
 愛校心もあってか、体育教師の吾妻を含め和泉澤の生徒全員が弘樹に賭けて、賭が成立しなくなりそうだったところに風折が一枚かんで──もちろん、これも予定の内──対戦相手に100口(一口50円)賭けたのだ。
 結果──当たり前だが、風折が一人勝ちし、金は水と違って下から上に登っていくものだということを、皆に知らしめた(八百長だけど)。
 だが、これくらいのことを、電話が鳴っているから受話器を取るというのと同じレベルで、なにげにやってのけるのが、風折迅樹という男なのである。
 しかしながら、彼の名誉の為と、筆者の保身の為に、これだけは付け加えておこう。
 風折が涼に語った話の内容が、本当に、まるっきり、徹底的に嘘な訳でもないということを。

☆   ☆   ☆

 さて、風折の仕掛けた罠にまんまとはまりながらも、結構楽しめちゃってる恋人達はともかくとして、既に人気の無くなったスポーツセンターで一人佇む男が一人。
 それは言うまでもなく、自分が指導したと自慢しまくった生徒に試合放棄で赤っ恥をかかされた上に、その張本人にくれてやらなくてはいけない5,000円分のプリペイドカードと勝てると踏んで乗ってしまった賭のせいで、今日一日で1万円を散財してしまった体育教師の吾妻である。
 体育授業免除は逃したものの、ちゃっかりオイシイ思いをしている上に、嫌いな人間にもきっちりダメージを与えている伊達弘樹──
 なんのかんのと言いつつも、やはり彼はこのシリーズで一番の強運の持ち主なのである──

2004.11.25

※予想外に長くなってしまいましたが、うまい具合に切れないので、
 一気にUPします。
 本文中にも書いてるけど、弘樹って何か五右ェ門なイメージあるのよね。
 クールなようで、案外誘惑に弱いの(笑) 
●和泉澤TOP●

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