WATER BALANCE |
最近、俺変なんだよね。 岡田の顔見るとドキドキして、岡田が他の人と笑ってるとイライラして、岡田が俺に触れると嬉しくなる。そう、まるで、岡田に恋をしているみたいで・・・。 この奇妙な感情に気付いたのは剛と別れたすぐ後。 あの日は強い雨で、俺は剛に対して抱いていたものを全て洗い流すように傘をささずに歩いていた。
「うぁっ!健くん!?どうかしたん?はよ中入りぃや!!」 「岡田ぁ〜〜〜・・・。」 全身ずぶぬれで、ただ泣きじゃくるだけの俺を岡田は優しく迎え入れてくれた。服も貸してくれて、止めてくれて、そんな優しい岡田を利用してるって事はわかってたけど、頼らずにはいられなかった。 「何があったん?」 「・・・っく・・ひ・・っく・・」 俺はただ泣くしかなかった。理由が話せなくて、話したくなくて。口に出したくない、認めたくないって気持ちが大きかったけど、何も知らない岡田に同性の剛が好きだったなんて言ったらこの優しさも消えてしまうんじゃないかって思って怖かった。今考えると岡田がそんなコトするはずないのに、この時の俺には何一つ、自分さえも信じられなかった。 ただ・・・泣いていた・・・。 「・・・ええよ。わけは聞かへん。今日は泊まってってええで。どうせ明日は午後からやし。」 ただ泣くしかない俺を、岡田はぎゅって抱き締めてくれて、頭をぽんぽんってたたいて、子供をあやすように俺の涙を拭き取ってくれた。俺の中での緊張の糸が一瞬にして切れて、俺は岡田に縋りついて泣いた。泣いて泣いて泣きつかれて、岡田の腕の中で眠ってしまった。きっとこの夜から、俺の中で岡田の存在が少しずつ大きくなっていったんだ。
「・・ん!健!!」 「え?!あっナニ?」 俺は井ノ原くんの声で我に返った。 「何じゃねーよ。行くんだろ?メシ!」 「あ・う〜ん・・・今日はやめとくよ。」 「えーどうかしたん?健くん行かへんの?」 お前がいるからだよ・・・。 「ふーん・・・んなら俺も今日はやめとく。」 「えー岡田もかよー。」 「うん、また今度な。」 なんでだよ・・・。 「イノッチと二人だけってのもつまらんし〜。健くん行かへんのなら、俺も今日は帰って本でも読もっかな。」 ほら、まただよ・・・。 「あー岡田ひでー!!」 「ごめんって!またこんど!」 嬉しさと苦しさがこみ上げて・・・。 「ちぇっ!しょうがねーか!」 「そーそー!しょーがねーんやって!」 俺、どうかしてる・・・。狂ってくみたいに・・心が・・・わからない・・・。
俺は男だから男の岡田を好きになるなんてしちゃいけない事なんだ。 わかってる。わかってるんだ・・・。
「健くん?!健くん?!」 あれ・・・岡田・・・?あぁ、そっか。俺はまたあの雨の日みたいに傘ささずに岡田んちに行ったんだ。 「大丈夫か?健くんあかんやん。雨降っとったらかさささんと。」 「あぁ・・・悪い。」 はぁ〜俺ってサイテー・・・。岡田も困るよな。 「俺、迷惑やねんで。イキナリずぶぬれでウチ来て、ぶっ倒れるんやから、かなわんわ。」 あーだめだよ岡田。そういうキツイ台詞は優しく笑いながら言うもんじゃない。俺の中での気持ちはお前を絶対に苦しめるモノだから、これ以上優しくすんなよ・・・。 「まったく健くんは・・・。俺がおらんとダメなんやな。」 そうだよ・・・。俺、お前が居ないとダメになってく・・・と思う・・・。 「しゃーないから傍におったるよ。」 だめだ・・・ってわかってるのに・・・。 「俺、岡田が好きだ。」 言ったとたんに涙が溢れ出た。 「どうしたん?健くん・・・。俺も健くん好きやで。」 違う・・・そうじゃないんだ・・・。 「違うよ岡田・・・。俺、恋愛対象としてお前が・・・好きなんだ・・・。」 俺、どうかしてる。思ったことがこんなにスラスラ言えるなんて・・・。 「え!?・・・。」 ほ〜らね。やっぱり岡田困ってるよ。 「まさか俺を見捨てないよね・・・?」 うわ〜俺すっげーヤな奴になってるよ・・・。 「ごめ・・ンッ!!」 俺、ムリヤリ岡田の唇を塞いだ。俺の唇で・・・。 岡田は俺から逃れようともがいたけど、俺はしっかり岡田を押さえつけて離さなかった。まるで、今している事は俺じゃなくて、俺の形をした別の人物がしているみたいに感じていた。 「け・・んくん!!やめろって!!」 岡田が力いっぱい俺を突き飛ばした。 「どうしたん?!健くん今日はなんか変やで!?」 「変じゃないよ。俺はマトモだよ・・・。今やっと自分に正直になれたんだ・・・。」 そう・・・、これが俺。岡田を手に入れたいって思った俺が本当の俺。 「健くん・・・ホンマにごめん。俺、健くんのこと大切やし大好きやけど、そういうんやないねん。健くんのことそういう意味で好きやないし、これからもたぶん好きにはならへんと思う。」 そんなキッパリ言わなくてもわかってるって・・・。 「ごめんな。」 謝んなよ・・・。お前が悪いわけじゃないのに・・・。 「これからもメンバーとして仲良くしてほしいねん。」 俺の気持ちが空回る・・・。どうしたらこの感情を押さえることが出来るのか教えてくれよ・・・。 「けんく・・・ンッ!」 「嫌だよ!!俺の気持ちはどうしてくれるんだよ!!」 分かってる。許されないことぐらい。自分が普通じゃないことぐらい。 だから今だけでいい。今だけ俺に抱かれてよ・・・。 もがく岡田を押さえつけて、嫌がる唇に熱い口付けをする。少しずつ、少しずつ君の唇は色づいて。首筋に舌を滑らせると、君は小さく声をあげる。きっと嫌悪感に満ちた声なんだろうね。でも今の僕には甘い囁きにしか聞こえない。今だけでいい。今だけ俺のものになってよ・・・。 服をムリヤリ剥ぎ取って、胸元に唇を這わせると岡田は大粒の涙を流した。でも、そんなことじゃ俺の気持ちは押さえられないよ。 ズボンのベルトに手をかけたとき、背中に鋭い痛みを感じた。 「・・・や・めろ・・・。」 引っ掻くほど・・・そんなにも俺が嫌なのかよ・・。 「け・・んくん・・・。」 そんな目で見んなよ・・・。 岡田は悲しそうだった。ただ・・・悲しそうで、瞳が濡れてその奥に悲しみが満ち溢れていて・・・。ただ、悲しそうだった・・・。俺にどうしろていうんだよ・・・。 お前の性格って時々ムカツク。嫌なら嫌ってハッキリ言えばいいんだ。我慢なんかしないで、思いっきり拒絶すればいいのに。抵抗だって、引っ掻くだけじゃなくてもっと出来るはずなのに。 俺、矛盾してるよな・・・。でもできねーよ・・・。そんな目で見んじゃねーよ・・・。怒鳴り散らして、俺のこと殴ればいい。そんな悲しそうな目で見るなよ・・・。 「健くん ごめんな・・・。」 なんでお前が謝んだよ・・・。 「ごめん・・・。」 やめろよ・・・。 俺は、涙をいっぱい目に溜めた岡田の腕の中で、涙をいっぱい流しながら意識を手放した。 このまま目が覚めた時には何も無かったことになっていればいいのに・・・。
目が覚めた時、岡田はもう居なかった。机の上には小さなメモ。 『俺、昨日のことは忘れるからな。』 何も無かったことにすればいい。そう、始めっから。この感情さえも無かったことに。それが一番いいから。メンバーとして、仲間として、俺達は永遠だと思えば、こんな面倒な感情捨ててしまえる。 とめどなく流れ出る涙で、全て流してしまおう・・・。
THE―END
☆あとがき☆
私本来は健攻めって受け付けないんですよ。健剛なら読むことは出来るんですけど他のCPでは駄目ですし、自分で書くことは不可能だと思われます。それはCP傾向のところに書いてある通りなんですけれども、これは実際にカップルになっていないこともあってボーダーラインでしたね。「読むだけなら何とか」なるような内容だったんで、サイトの方にも載せてしまいました。岡田くんの優しさに愛を感じますね(笑) |