for Ken Miyake |
<1.森田 剛>
いつも一緒にいた。 この世界に入った頃から、親しくはなくてもお互いの存在は知っていた。 それがいつの間にか、隣にいるのが当たり前になっていた。 年中一緒にいるから、必然的に年間行事などのイベント事にも。 誕生日だけじゃなく、クリスマス、お正月、バレンタインデーに至るまで。 他のメンバーや仕事のスタッフとお祝いしたり。 わざとその日に合わせての仕事が入っていることもある。 逆にバラバラでどうしても会えないときは、連絡だけはしておいて。 せめて二人だけでも、と別の日に改めてイベントを過ごす。 何年も、何年も。 二人だけの予定なのに、たまにいのっちや岡田がいたりいなかったりするのがわかんねーけど。 アイツがいないことは今までなかった。 俺の誕生日の時だって、三日後にはそれらしく二人でケーキも食った。 アイツがドラマの撮影で、当日には会えなかったけれど。 今日はアイツの誕生日。 上手くいかないもんだな。 お互い別々の仕事。しかも泊まり。 昨日だったらテレビ番組の収録で一緒だったのに。 わずかに不満を漏らしたアイツ。 今頃何をしてるんだろう。 携帯電話を取り出して、その番号を表示する。 メモリbO00。 携帯を変えるたびに交友関係もリセットする俺が、必ず一番初めに登録する番号。 向こうの様子も分からないのに、さすがに電話は憚られるため、メール作成画面に変更。 日付が変わったと同時に送る、なんてことはここ数年やっていない。 誰が最初に言おうと、大したことじゃないんだって気付いてからは。 アイツの中での俺の位置が変わることがないことくらい、もう分かってる。 昔はちょっとしたことですぐムキになってケンカしていたけど。 毎日のように『好き』だとか『愛してる』だとか言っていたけど。 人間、大事なのは心なんだよな。 大切に思う心、アイツの誕生を祝う心、感謝する心。 無駄に言葉を吐き散らすより、ふとしたときに握った手とか、触れた肩とか。 そんなときにお互いの間に流れる想いがあれば、それが一番いいんじゃないだろうか。 豪華な料理も、二人きりの甘い時間もないけれど。 『誕生日おめでとう』 これだけで十分だと思うから。 『―――送信が完了しました―――』
だけど二人だけのバースデーパーティーも、ちゃんとやろうな。
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