for Yuichi Nakamaru |
<3.田口 淳之介>
昨日渡しそびれてしまった。 誕生日プレゼント。 中身は極普通のスポーツタオルなんだけど。 普段からよく使う物だし、使ってくれてるか確認できるし。 そんな理由で選んだんだけど。 店員さんにわざわざラッピングして貰って。 らしくもなくメッセージカードなんて書いちゃって。 …恋人でもないのに。 それで結局渡せないでいる。 なんて無様。 ずっと鞄の中に準備していたのに。 皆が渡してるとき、冗談みたいに渡すことだって出来たはずなのに。 「田口は!?」なんて訊いてくるから。 ファンや皆のプレゼントに囲まれて嬉しそうに訊いてくるから。 つい「忘れてた」なんて言っちゃった自分。 恋人と別れた今のアイツに遠慮することなんて無いはずなのに。 即座に後悔したよ。 得意のギャグもとばせない。 今はもう、どうして渡さなかったのかと自分を責めるばかり。 机の上にはお持ち帰りしてしまった包みがちょこんとのってて。 寂しく存在をアピールしてる。 ゴメンね。 僕の部屋で一晩過ごさせちゃってゴメンね。 受け取って貰えなかったプレゼントって、こんなに悲しいものなんだ。 正確には「渡せなかったプレゼント」なんだけど。 だって、僕はアイツが好きなんでしょ? 一年にたった一度のこのチャンスを自分の手で潰してしまった。 なのに、出来ることならやり直したいと思ってる。 なんて都合の良い。 意地を張ってプレゼントを渡すことすら出来なかった子どもの僕。 本気と冗談を見分けて受け流すことの出来る大人のアイツ。 痛いほどわかってる。 そうだよ、大人なんだから。 見かけがどうであっても、僕が子どもであることには変わりないんだから。 数字的に、今は三歳も離れてるんだから。 一日ぐらい許してくれる? 遅れてしまったけど、受け取ってくれる? 今日は絶対渡すから。 気持ち伝えるから。
だから、受け取って下さい。 プレゼントに想いを込めて。 |