for Koki Tanaka


<2.中丸 雄一>



ちょっと聞いて聞いて。

今日アイツの誕生日だったっしょ。

ファンの子とか、メンバーとかからすっげーちやほやされててさ。

まぁアイツの場合普段からオレ様気質なんだけど。

プレゼントや祝いの言葉がこれでもかと飛び交っている中で。

まるで本当に王子様にでもなったかのような態度とってんの。

だからさ、俺ずっと考えてたこともあって。

アイツの誕生日忘れたふりしてみたんだよね。

上田とか亀梨は嫌そうな顔してたけど、どんな反応するか見てみたくって。

いっさい誕生日については触れなかった。

そしたら案の定。

皆からの祝いの言葉に嬉しそうにしながら、ちらちら俺の様子窺ってんの。

いつくるか、いつくるか…って。

しまいにゃ「早く来い」とでも言いたげだった(笑)

そんなアイツが面白くて可愛くて…この気持ち分かる?

何か止められなくてさ。

「え? 嘘、今日誕生日なの?」

端からすればわざとらしいことくらい、すぐ分かるようなセリフを口にした。

ん〜これは自分でも酷いと思ってます。

ものすごい怒りの形相になって楽屋出て行っちゃたから。

しかも、一瞬泣きそうな顔したんだよ。

上田たちが慌てて俺をアイツのところに向かわせるけど。

元々ここで追いかけて、優しい言葉を書けてやるつもりだったから計算通り。

もうすっかり寒くなった廊下をアイツを目指して走り抜けて。

隅っこで小さくなってるアイツを見つけたときは悪いけどマジ顔が緩んで。

ああ、俺って愛されてるんだなぁって実感。

勿論、泣かせたままになんかする訳無いよ?

ちゃぁんと誤解を解いて、プレゼントだって渡した。

抱きしめて、キスもしてやった。

キスしながら、このまま仕事が終わったら…なんて考えもした。

まぁそれは、家で家族がパーティーを開いてくれるとかなんとかで。

お持ち帰りは叶わなかったけど。

今日はアイツの色んな表情が見られたからまあ良いか。

いつもオレ様なアイツの喜怒哀楽。

一日で堪能させて貰っちゃったし。

楽屋に戻ったら上田と幸せそうに座布団の取り合いなんかしてた。

あ〜やっぱり可愛いわ。

本人は大人ぶってるつもりみたいなんだけど。

もうちょっと、子供っぽくても良いと思うんだけどな。

だってまだ、17歳になったばかりなんだからさ。



それにしても。

あまりにも計算通り事が進むから面白かったよ。

っと、最近俺、誰かに似てきてる?






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