天使光臨


 ふわふわと揺れる純白の羽根。

 と。

 金色の輪。






「何、これ」

「何って、羽根。と輪っか」

 そんなことは見ればわかる。

 そんなことを聞いてるんじゃなくて。

「どうしてこんなものがここにあるんだよ」

「そりゃあもちろん、竜也さんに着けていただこうと」

「…変な物でも食ったか」

「ヒドッ。俺は至って正常なのに」

「余計悪い…」

 力の抜けた身体がソファーに沈み込む。

「今日は竜也さんの誕生日ですよね」

「そうだけど」

「天使の日でもあるわけですよね」

「…そうだけど」

 っていうかそれオレが言い出したんだけど。

「というわけで、はい」

 だから、そんなふうに差し出されても。

 何がどういうわけなのかさっぱりわかんない。

「天使の日に生まれた竜也さんは、天使なんでしょ?」

「そうだけど」

「そこは否定しないのね…」

「悪いか」

「いいえ」

「で?」

「天使の日に生まれた竜也さんがこれを着ければ、ほら、天使に早変わり♪」

「…はぁ」

 頭痛くなってきた。

「要するに、コスプレさせたいだけだろ」

「まあ、そんなところですかね」

「嫌だ、と言ったら?」

「無理矢理にでも」

「抵抗したら?」

「抵抗できないようにまずは足腰立たなくしてあげる」

 こういう時の宣言はマジで実行に移すから怖い。

 冗談じゃない。

 誕生日に恋人に無理矢理犯されるなんて御免だ。

「しょうがない、着けてやる」

 それでも着替えているところを見られるのは恥ずかしいから部屋の外へ追い出して。

「あ、ちょっと待って。服もこっちのにして」

 部屋を出る直前にそう言って渡された紙袋の中には。

 白い羽根に合わせたふわふわの真っ白なセーターと…スカート?

 しかも短っ。

「……アイツめ…」

 もう意地だ。

 こうなりゃびっくりするくらい着こなしてやる。

「竜也ぁ。終わった?」

 着替え終わって返事を返すと、喜々としてドアを開けたアイツが固まった。

「……」

「…なんだよ、なんか言えよ」

「可愛い」

 それはぽろり、と思わず口からこぼれた、という感じで。

「可愛い。ってか綺麗。ってかマジ似合う。最高」

 単純な褒め言葉の羅列。

 そりゃ、自分でも鏡見て結構イケてるかも、とは思っちゃったけどさ。

「あ〜、ここまで似合うとは思わなかった。可愛すぎるっ」

 唐突に抱き締められた。

「可愛い。用意してホントよかった〜」

 また強く、ぎゅーって抱き締められる。

 ちょっと痛いかも。でも、嫌いじゃない。

「…なんか、オレの誕生日っていうより、お前の誕生日みたいじゃん」

「まあまあ。誕生日、おめでと」

「…ありがと」






 結局、その後美味しくいただかれちゃいました。

 …やっぱり、コイツの誕生日みたいじゃん。











END











お祝いらしいお祝いしてないけど…おめでとう、上田さん。

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