怖がらないで、側に来て。


その日、KAT−TUNの楽屋は重く沈んでいた。

「ねー何で皆そんなに落ちこんでんのさ。体に悪いよぉ?」

「そーだよぉ? 明るく明るく! れっつすまいるっ、いえー」

 重苦しい雰囲気に耐えきれなくなった約二名が意味もなくテンションを高めてみるが、反応はゼロ。

 却って無意味なテンションが暗さを二割増ししてしまったとも言える。

 これには二人も為す術はなく。

「こうなったら僕のダジャレで盛り上げるしかないかな」

 田口淳之介……れっつすまいるとか何とか言った方……はもう一人……中丸雄一だったり……にこっそり耳打ちしてみる。

「そんなことしたらさらに逆効果になるって」

 間を置かず中丸が同じ様に耳元でたしなめると、自称ダジャレ王田口は不満気に唇をとがらせた。

 何か言いたそうな田口を放っておいて、中丸は今このくら〜いムードを作り上げている張本人達をぐるりと見回した。

 普段は目も当てられない程のいちゃつきぶりを見せる赤西仁と亀梨和也は、それぞれ楽屋の端と端に腰を下ろし個人所有の雑誌に目を落としているものの、どちらともページを進める音がしない。

 ところ構わず筋トレをしているはずの田中聖は、腕立て伏せをしようとしていたらしいがそのままべったりと床に這い蹲るような格好で寝そべっている。

 受験も間近に迫り、追い込みのために楽屋でも参考書云々を広げている上田竜也は、こちらも赤西&亀梨ペアと同様、一向に進んでいる気配がない。

 そして何よりこの四人に、会話と笑顔がない。

 いつも隣の楽屋から苦情が来るほどの騒ぎっぷりを誇るこのユニットの楽屋で、これほど重苦しい雰囲気になったことがかつてあっただろうか。

 何故このような状況となるに至ったのか。原因は分かっている。

「そんなさー、気にすることないと思うよ〜?」

「そうそう、周りの言うことなんて気にすんなって。からみにくいのもまた個性だよ」

 取り繕うような二人の言葉に、沈んでいた四人の耳がぴくりと動いた。

「気に…するなだって…?」

 亀梨さん、声、低くなってますよ〜?

「そうはいかねーんだよ!!」

「お前らに分かるか!? ちっちゃいコ達に恐れられてしまっている俺達の気持ちが!!」

「分かる訳無いよね? 人気者だもんね二人とも」

 亀梨に続き、聖、赤西、トドメに上田が心情を吐露する。

 彼らのローテンションの原因は、某Jr.番組の新春スペシャル企画の中で行われた、Jr.が選ぶ“Jr.ランKING”(笑)。

 ジュニアにアンケートを行い、「もっとも〜なジュニアは誰か」ランキングにしたものである。

 設問には“一番可愛いのは?”“一番ダンスが上手いのは?”などがあり、5位までがフリップに名前が載せられた。

 …ここで問題なのは、ランクインしたからといって全てが全て喜べるわけではないということ。

 そしてこの、やたらナルシストばかりが集まったユニットの面々(ただし四人のみ)が、見事に“ランクインしたくないランキング”にランクインしてしまったのだ。

 その“ランクインしたくないランキング”のKAT−TUNランクイン状況はこうであった。

 まずからみにくいジュニア〜上位三名を亀梨、赤西、上田で占め、こわそうなジュニア〜では二位に聖、五位に亀梨(ただし一位は“居ない”という回答だったために実質は一位と四位)。赤西に至ってはうるさいジュニア〜でも五位。何ともすばらしい結果である。

 何はともあれ、年下のコ達から“からみにくい”“こわそう”と思われていたことが発覚して、四人はそれなりに凹んでしまったわけである。

 中丸・田口の二人は一切名前が挙がっておらず、逆にちょっと残念がっていたのだが、それとこれとは訳が違う、と言わんばかりの周りの雰囲気。

 四人は再び沈黙。

 とうとう見かねた二人は。

「中丸くん、俺20番の楽屋ね」

「おう、じゃあ俺は32番の楽屋な」

 溜息をついて愛しい人の元へと向かう。

「「!!?」」

 まさに早業。

 田口は上田を、中丸は聖をそれぞれお姫様抱きにして。

「じゃ、一時間後に」

「頑張れよ」

「そっちも」

 何が起きたのか思考がついていかない二人を余所に、ごく短い会話をすませ楽屋を出ていく。

 ドアが閉まったところで、我に帰ったらしい上田と聖の声が廊下から聞こえてくる。

「た、田口ぃ〜。どこ行くのぉ〜!! 降ろして!」

「何? 何してんだよ!? 降ろせよ!!」

「あんまりわめくと見つかるぜ。まあ俺達は構わないけど」

「そうそう、あんまり大きな声出さない方がいいよ。あ、じゃあ中丸くん、僕達はここで」

「撮影には遅れるなよ」

「それはこっちのセリフ」

 会話が途切れ、遠くで同じドアを閉める音がすると、うってかわって静かになった。

 四人が出ていったドアを見つめしばし呆然としていた赤西・亀梨ペアは同じタイミングで顔を見合わせる。

 思わず作ったような笑いを浮かべる赤西と、間を置かず俯く亀梨。

 そこで赤西は、亀梨の方が自分より重症なのでは、と直感した。

 俺を抜いて、何せ一位だもんな。

 読んでもいなかった雑誌を閉じると、楽屋の対角線上にいた亀梨の元へと寄っていく。

 ゆっくりと隣に腰を下ろした。

「カメ」

 肩を抱き寄せると、頭を赤西の肩に乗せ、体を預けてくる。

「仁。オレってこわそうなのかな」

 消え入りそうな声。

「聖は分かるんだよね。見た目がああだからさ。オレも前はこわそうだと思ってたし」

「見るからに逆らわない方がよさそうって感じだもんな」

「逆らうより前に近づかないと思うけど」

 さりげに酷いことを言っていることに二人とも気付かない。

「って何? お前が落ち込んでたのってそっちの方なの!?」

「…そうだけど。からみにくいのなんてホントの原因分かってるし」

「え、え、ちょっとまって。俺分かんないんだけど何? えー!?」

「バカ」

 慰めようと近寄ってきた時は周りに自慢して歩きたいくらいの男前だったのに、やっぱりヘタレはヘタレだったか、と亀梨は溜息をついた。

「何!? マジで分かんないんだけど」

 おそらく自分は「からみにくい」の方で凹んでたのであろう、赤西は本当に分からないようだった。

 ここで教えるべきなのか…亀梨は赤西の目をじっと見つめた。

「うっ」

 何を隠そう(隠してない)赤西仁、亀梨のこの上目遣いに非常に弱い。

 そして今は他に誰もいない楽屋。

 本能のまま突っ走りそうになる。

 そう、「楽屋ではしないでね」二人でしたはずの約束も役に立たないくらいに。

「わっ、ちょっ、仁!」

「カメ…」

 急に座っていたソファーに押し倒され、亀梨は焦った。

 ヤバい、このままでは……っ。まだ撮影残ってんのに!

「仁っ、これ以上手出したら一ヶ月間キスも無しだからねっ!」

 ぴた。

 赤西の動きが止まる。

 その隙に亀梨は起きあがると再び溜息をついた。

 何も本気で言ったわけではない。

 一ヶ月なんて赤西も耐えられないだろうが自分も耐えられるかどうか怪しい。

 それでも今こうして赤西が“今”を諦めてくれたからよかった。

「かめぇ〜」

「うるうる目で頼んでもダメ。約束したじゃん?」

「だって、カメ可愛いんだもん…」

 そういって抱きつく。

「…だからそーゆーのなんだって」

「え」

 亀梨は意を決する。

「仁がところ構わずベタベタくっついてくるから皆からめないんだってよ」

「……そなの?」

 そんなこと思いもしなかったと言わんばかりの返答。

 実際亀梨も人に言われるまで気付かなかったのだからお互い様なのだが。

「オレらってさ、楽屋でもスタジオでも割とくっついてるじゃん。気付いたら二人で居る〜みたいな」

「まあ、だって俺カメといつでも一緒にいたいし」

「オレも…だけどそのせいでからみにくいって言われるのもちょっとね。オレらの間に割って入るようなヤツって草野ぐらいじゃん」

 草野博紀。

 皆の前で亀梨のファンだと堂々と宣言している少年。

 赤西は正直彼が苦手だった。

「草野か…確かに」

「あれ、仁ヤキモチ? 草野はオレのこと大好きだからね〜」

「そんなんじゃねーよ。草野なんて眼中にないっての」

 本当は最近気になるのだが、あえてそう言っておく。

「まあね。彼はただ友達になりたいってだけだから。もう友達なのにさ」

 亀梨は気付いていない。

 彼、草野の亀梨を見る目が変わってきていることに。

 単なる憧れの眼差しから、恋愛感情剥き出しの視線に。

 真実を知った時、隣の恋人はどうするのだろうか? 何を思うのだろうか?

 決して他人に渡したりはしない、この腕から放すつもりはないけれど。

「だけどなんだ。そうだったのか。俺達が仲良いから皆遠慮してたのか。なんだ。」

 ちえっ、なんか落ち込んだ自分がバカみたいじゃん。

 赤西は思った。

「そう。だからね、オレの中では“からみにくい”ってのより“こわそう”って方が大問題なの。」

 何でなんだろうね。拗ねた顔がまた可愛い。

 本気で落ち込んでる亀梨に不謹慎ながらそう思ってしまう。

「でもさ、カメは良いじゃん。“一番人気者だと思うジュニア”で三位だったし、“一番おしゃれだと思うジュニア”でも二位だったでしょ? 俺なんかうるさいジュニア五位だよ〜?」

「だってうるさいし」

「うわっ、カメまでそんなこと言うの〜? 俺実は密かに“おしゃれなジュニア”狙ってたんだけどな〜」

「山Pの真似をやめない限り無理だね」

「ひっど〜!! 真似なんかしてないのに〜」

「はいはい」

 鳴き真似をする赤西の頭を亀梨がよしよしと撫でる。

 こういう動作を人がいようといまいと行うからからみにくいと言われるのだろう…。

 そしてこの二人はこの後、他のメンバーが帰ってくるまでこの調子でいちゃつき続けたのだった。






「やっぱりね。二人にしてよかったよ。え、僕達はどうなったかって? もちろん、円満に解決済みに決まってるじゃない。ねぇ上田くん?」

「田口…あれのどこが円満解決なのさ!!」











END











急に書きたくなったネタ。下書きもせずとりあえず仁亀です。内容はすっからかんですが。所要時間は実質5、6時間かな?とうとうやってしまった感がありますね。くさのん(私は彼をこう呼ぶ)出してみたりとか。今だったら藪くんがプラスされてるでしょうね。カメちゃん大人気♪不思議なくらい後輩の少年に人気があるので仁くんも大変だ(笑)この話では田口と上田・中丸と聖がそれぞれカップルになってます。他の組の話は今のところ考えていません。リクエストがあれば書こうかな? お粗末様でした。

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