誕生日を忘れる恋人


パン!パン!パァン!

数回の単発破裂音。

次いで降り注いできた色とりどりの細かい紙切れ。

独特の火薬の匂い。

…クラッカー?

いつものように遅刻をして、楽屋に入った俺を突如襲った「いつもと違う」歓迎。

「おめでと〜♪」

一瞬何が起こったのか分からなかったが、誰かが発した一言でハッと気がついた。

そうだ、俺今日でハタチになったんだっけ。

「中丸はぴば〜♪今日から大人の仲間入りってコトで、ちょっとしたドッキリを仕掛けてみました☆」

亀梨が先陣切って言えば赤西や聖も。

「びっくりした?びっくりした?嬉しいっしょ?」

「てかいつもいつも遅刻してくれるから、こういう時は都合がいいよなぁ」

などと騒いでいる。

どうやらこのドッキリの企画をしたのはこの3人らしい。

クラッカーを鳴らしたのもこの3人。

俺の恋人、上田竜也はといえば、3人に合わせて田口と拍手を送ってくれている。

まぁ、こいつらはそんなところだろう。

「おお〜サンキュー」

嬉しかったのは事実だから、素直に感情を表現してみる。

おめでとうおめでとうと、いつも騒がしい楽屋が更に騒がしい。

別にこんな空間は嫌いじゃないし、俺もこの中なら率先して騒ぐタイプ。

だけど竜也はちょっと苦手みたいで、楽屋の隅で鏡を見ていることが多い。

ところが今日は竜也にとってもやはり「特別」らしくて。

聖に肩を組まれハッピーバースデーを歌われていた俺の袖口(聖の反対側だ)をそっと掴んできた。

「中丸」

大好きなボテッとした唇が俺の名前の形に小さく動く。

こういう時に小さな幸せを感じてしまう。

「ん?どした?」

「…おめでと」

そういった時の竜也のはにかんだ顔といったら!

最近あまり笑わなくなったせいで貴重になったってのもあるけど、可愛いのなんのって!

「たっ、たつやぁ!」

聖の腕を振り払って思わず抱き締めてしまうくらい。

「もう、超嬉しい!竜也が俺の誕生日覚えててくれただけで充分!」

「あー…、うん」

コイツ過去に忘れてたことあったからさぁ。

丁度一ヶ月違いの恋人の誕生日、普通は忘れないだろうと思うけど、そこは竜也だし。

「あれ?上田今朝『今日中丸の誕生日なの?』って言ってなかったっけ?俺らが準備してる時」

「バカ、仁!」

「あ」

…やっぱりそうですか。

赤西、今更口元押さえても意味無いっつーの。

少々肩を落として腕の中の竜也を見ると、目が泳いでた。

嘘つけないよなぁ、コイツ。そんなところも可愛いんだけどさ。

「…たつやぁ…」

「ゴメン」

いや、謝られても…複雑。

「ゴメンね、雄一」

項垂れていると上からそんな言葉が降ってきて、竜也の掌に両頬をそっと覆われた。

「…竜…?」

何がしたいのか分からなくて(いつものことだけど)竜也の顔を見つめてみる。

するとその顔がだんだん寄せられて…。

「…っ!?」

唇に柔らかい感触。

驚きに見開いた目に映るのは、閉じられた瞳。

あまりにビックリして硬直してたら竜也の唇が俺の唇をこじ開けるように動いて…。

しっ、舌まで入れてきた!?

俺の舌に絡みつけて、自分の咥内へ引き込もうとする。

どっ、どどどどーなってんの!?

「…ん…っ」

漏れる声が色っぽくて誘ってるみたいで…いや、これは絶対誘ってるよな!?

じゃあ遠慮無く…。

「!…っん、…ふ…」

逃げられないように後頭部と腰を押さえつけて、思う存分竜也の口腔を犯した。

竜也も俺の首に腕を回して、夢中で答えてくれた。

ココが楽屋だとか、メンバーがいることとか、全て頭の中から消えてしまう。

辺りに湿った音が響くくらいの濃厚なキス。

名残惜しげに漸く離した竜也の唇は、二人分の唾液で妖しく光りながらはぁはぁと荒い息を吐く。

それがとろけた瞳やほんのり色づいた頬と相まって、ひどく扇情的だった。

「竜也…どうしたんだよ急に」

人前でいちゃいちゃしたり、ましてやキスなんて、恥ずかしいってかなり嫌がってたはずなのに。

どういう風の吹き回しなんだろう。

「…したかったから。ダメ?」

そんな首傾げて聞くなよ…。

「駄目な訳無いじゃん。つーかすっげー嬉しいし☆」

再び抱き締めると今更恥ずかしくなったのか真っ赤になっちゃって。可愛い♪

「もしも〜し、お二人さん」

「ココは楽屋なんですけどぉ」

「もうちょっと周りを意識してやってくださ〜い」

赤西と亀梨が両手をメガホンのようにしてからかい半分に言ってくる。

ふとその横に目をやると、聖と田口が耳まで真っ赤になって俯いてた。

この二人、耳年増なだけで純だからなぁ…。

刺激が強すぎたらしい(笑)

「雄一、雄一」

何度か名前を呼ばれているのに気がついて下を向く。

とりあえず落ち着いたらしい竜也が、うんしょと腕の中から抜け出そうとしていた。

しつこくすると機嫌悪くするから、仕方なく離してやるけど。

人前であんなキスを仕掛けてきたクセに何やらモジモジしている。

「竜也?」

「ん、あのさ…。プレゼント用意してなくてさ…」

あぁ、そりゃぁそうだろう。

誕生日だってコトも覚えてなかったのに、プレゼントなんて(涙)

「だから、今日泊まりに行ってもいい?」

「いいよ。大歓迎なんだけど」

「よかった…それでね…?」

「何?」

問いかけると、ふわりと抱きついてきて俺の耳元で小さな声で言った。

「!!」

すぐに離れようとする竜也の手をがしっと掴む。

「ちょっと、雄一」

「マジで!?」

今耳にした言葉、聞き間違いじゃないよな?

竜也が頷いたから、確かなんだよな?

「…中丸、お前顔ヤバイよ」

聖からツッコミ。

言われなくても相当緩んでるだろうって自覚はあったさ。

だって。

「大人になった中丸が欲しいんだ。だからプレゼントはオレ自身ってコトで…受け取ってよ」

なんて世にも珍しい竜也からのお誘いがかかっちゃったんだから。

この夏はあまりにも忙しくて、そっちの方はすっかりご無沙汰だったし。

マジ、誕生日万歳!






ちなみに。

「…あんなこと、言わなきゃ良かったかも」

とは、翌日の竜也のセリフ。

勿論お疲れモード。

俺としてはたっぷりと堪能させて貰ったから元気いっぱいなんだけどね!

どうも、ごちそうさまでした☆











END











 リクエスト通りになっていますかね…?中上らぶらぶ、ということでしたが、皆の前でもらぶらぶな二人、を書きたかったんです。感想なぞありましたら掲示板なりメールなりで教えて下さると嬉しいです。
そもそもさすがにもう、忘れるなんてことはないでしょうけどね。私は上田さんをバカにしすぎなのだろうか…。しかしバカな子程愛しいと言うし(苦笑)
 あ、そういえば作中で上田さんが泣かなかったのって、VとのMIX話を除けば初!?

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