004.絆創膏 |
*幼稚園児パラレルにつき、苦手な方はお戻り下さい。*
とてとてとてとてとて。 つんっ。 「あっ」 ずざざっ! 「いったあい!」 おやおや、また派手に転びましたねぇ、和ちゃん。 「だいじょうぶ?かずちゃん」 一緒に走っていた竜ちゃんがびっくりして、なぜか涙目になって心配しています。 和ちゃんはちょっと膝を擦り剥いてしまったようです。 「いたくない?いたくない?」 「…いたい…ち、でたぁ」 竜ちゃんの心配も、余計傷を意識してしまってなんにもなりません。 それどころかどんどん痛くなってくる気がして、和ちゃん瞳、うるうる。 そこへちょこちょこと寄ってくる少年が一人。 「どうしたの?」 「じゅんちゃん」 膝を抱えて俯いている和ちゃんのかわりに竜ちゃんが答えます。 「かずちゃん、ち、でたの。いたいの、ち」 「おひざ、いたい…」 竜ちゃんの説明では心もとないと思ったのでしょうか、和ちゃんが補足説明をします。 血が滲む和ちゃんの膝を見た淳之介くんは、自分のズボンのポケットを何やら探り出しました。 「ん〜と…」 ごそごそ。おっと、あったみたいです。 淳之介くんが嬉しそうな顔になりました。 「はい!ばんそこ!」 淳之介くんがポケットから出したのは一枚の絆創膏。 ああ、先生が近くにいない今、淳之介くんが救世主に見えます。 「はったげる!」 いうやいなや、ぺりっと裏紙をはがして和ちゃんの傷に素早く貼ります。 もちろん、ちゃんと砂を払ってから。 本当は水で洗った方が良いんですけどね。 「いたいのいたいの、とんでけ〜!」 その手際よさに、和ちゃんはびっくりです。 本当に痛いのがとんでいったようです。 「すごぉい…」 「じゅんちゃん、じょうず」 「えへへ」 和ちゃんと竜ちゃんに褒められて、淳之介くんは照れたようにはにかみます。 「すごいね!かずやね、まえにじんにはってもらったことあるよ」 「じんちゃん?」 「うん。でもくちゃくちゃになっちゃった。じゅんちゃんすごい!」 「たつもゆうちゃんやってくれた。ゆうちゃんじょうずだった」 「いいなあ。じんはへただからだめだね」 絆創膏を貼るのが下手だというだけで駄目と言われた仁くん。気の毒です。 「じんくんだめ?ぼくじょうず?」 「うん!」 「すごいなあ」 改めて聞き直して、再び褒められた淳之介くん。 満足そうに笑って、二人にバイバイします。 「じゃあね!」 淳之介くんが向かった先は、お庭の端にある小さな丘。 園のみんなは「おやま」って呼んでいますが。 「お〜い、じゅん!」 そのお山のてっぺんで淳之介くんを呼んでいるのは聖ちゃんです。 勇者ごっこでもしているのでしょうか、風呂敷をマントのように着けて木の枝を振り回しています。 淳之介くんが来るのがよほど嬉しかったのでしょう、身を乗り出すようにして淳之介くんを呼び寄せます。 あ、危ない。そんなに前に出ると…。 ずるっ! 「うわあっ!」 ずざざっ。 「…う…」 ほらぁ、言わんこっちゃない。 聖ちゃん、見事にお山の斜面を滑り落ちていきました。 転びかたが和ちゃんの数倍派手です。 これは痛いぞぉ…。 涙目になった聖ちゃん。 オレは強いんだと自分に言い聞かせて必死に泣くのを堪えています。 「こうちゃん、だいじょうぶ?」 一部始終を目撃してしまった淳之介くん、心配そうに聖ちゃんに近寄ります。 「はい、またばんそこはったげる!」 和ちゃんの膝の手当をしたときと同様、慣れた手つきで聖ちゃんの肘にも絆創膏を貼ります。 「あ、ありがと…」 「いたいのいたいの、とんでけ〜!」 転んだところを見られて恥ずかしく、俯いてしまった聖ちゃん。 こうして淳之介くんに絆創膏を貼って貰うのは何度目でしょうか。 今も聖ちゃんの両膝と右頬にある絆創膏は、つい昨日、淳之介くんに貼って貰ったものです。 「こうちゃん、まだいたい?」 「…もう、いたくない」 不思議なことに、淳之介くんに絆創膏を貼って、呪文をかけて貰うと、全然痛くなくなるのです。 少なくとも、聖ちゃんはそう思っています。 自分に絆創膏を貼るのはお母さんか先生か、淳之介くんだと決めつけています。 「じゅん、おやまであそぼうぜ」 「うん」 すっかり元の調子を取り戻した聖ちゃん、俺様前回で淳之介くんを引っ張ります。 聖ちゃんも淳之介くんも、とっても楽しそうです。 毎日新しい傷を作る聖ちゃんと、毎日聖ちゃんの傷に絆創膏を貼る淳之介くん。 成程、淳之介くんが絆創膏を上手に貼れるわけです。 何せ、二人は将来の約束までしているようですから…。 「おまえはずっと、おれのばんそこがかりだからな!」 って、それは淳之介くんが可哀想かも…。 「うん、やくそくだよ!」 え、いいの!?
…淳聖メインでした。使われてるなぁ…淳之介くん(笑) |