007.流星群


「上田、早く早く!」

「わかってるってば。もうちょっと待って」

 撮影が終了した後の楽屋。

 いつもなら他のメンバーと雑談したり、この後の予定なんかを聞き合って、都合が付けばご飯食べに行ったりなんかするんだけど、今日は違う。

 中丸に急かされるがまま慌ただしく帰り支度をして、まだまったりしてるメンバーを尻目に早々に楽屋を出た。

 珍しいことではあるけれども、今日みたいなのは別に初めてじゃないから、メンバーにも笑顔で送り出された。

 明日の朝遅刻しないように、と念を押されて。

 …努力、してみます。

 早く帰宅するために、と今日は車で来ていた中丸。

 力入りすぎだし。

 でも、助手席から運転する中丸の顔をちらりと見ると、すっごい目ぇキラキラしてんの。

 いかにもわくわくしてますって分かる。

「中丸、ホントに好きだよねぇ」

「ん?そう?」

「そう」

 ホント、好きすぎだよ。

 宇宙。






 今日は、双子座流星群が見られるんだって。

 結構沢山の流れ星が見えるらしくって。

 しかも流星群って、深夜の一時間ぐらいだけしか見られなかったりするじゃん?

 今回は日が沈んでから夜明けまでっていう、長い時間見られるんだって。

 凄くない?






 朝楽屋で会ってすぐに中丸がオレに話してきた。

 その時点で今日のオレの過ごし方が決定した。

 いつも、流星群とか普段見られない天体ショーが見られる日は中丸の家に泊まりこんで、一緒に星を見るから。

 いつの間にか、そういうことになっていたから。






 一緒に見るとは言っても、中丸はお気に入りの望遠鏡を一人で覗き込んでしまうから、オレは邪魔しないように横で窓の外を見てるだけ。

 悪く言えばほったらかし、かな。

 でも流星群って、特に宇宙とか星とかに興味のないオレでも何となくロマンチックだなって思って見ちゃうし、ちょっと星に飽きても嬉しそうに望遠鏡にかじりついてる中丸を見てると楽しいんだ。

 うん、オレにとっては中丸見てる方が飽きないね。

 あまりに見つめすぎちゃって、今もほら…中丸がオレの視線に気付いて望遠鏡を覗かせてくれたりもする。

 そんな時、中丸は「俺ばっかり見ててごめんね」って言う。

 望遠鏡で星を見たいから見てるんじゃなくて、中丸を見てると楽しいから…自分も楽しくなるから見てるんだけど…こんな事知られたら恥ずかしいから勧められるまま星を見る。

 今見えるのが何とかっていう星でね、なんて解説してくれてもちっとも分からないんだけど…。

「雄一〜!御飯出来たよ〜」

 再び中丸と交代してしばらくしたところで、中丸のお母さんの声がした。

 中丸は…と、こりゃ気付いてないな、毎度のことだけど。

 星に夢中の中丸を一人残して、キッチンへ向かう。

 そこでは中丸のお母さんが食卓に夕飯を並べているところだった。

「おばさん」

「あぁ上田くん。雄一は…また?もう…」

「はい、また…です」

「ごめんなさいね〜。いつもいつもあんなんで。じゃあちょっと待ってね」

 『また』という言葉だけで全てが通じるのが可笑しい。

 おばさんは今まで食卓に並べていた夕飯のうち二人分をトレーに乗せてくれた。

「ありがとうございます。食べ終わったらまた下げて来ますんで」

「ありがとね。上田くんが居てくれると助かるわ」

「いえ、そんな…」

「ホントよ。今日みたいな日は私たちがなんか言っても聞きやしないんだから、あの子」

「今日はきっと徹夜ですよ」

「でしょうね」

 クスクス笑いながらおばさんと喋って、受け取ったトレーを持って中丸の部屋へ。

 中丸はオレが部屋を出る前と変わらないカッコで望遠鏡を見ていた。

 全く、好きだよね。

「中丸」

「ん?何」

「夕飯。持ってきたから冷めないうちに食べよ?」

「あ〜そだな、まだ夜は長いんだし」

 熱中しているときの中丸は、おばさんも言っていたように家族の声すら耳に入らない。

 でもオレが声をかけるとちゃんと返してくれる。

 そんなところが嬉しいよね。

 オレって特別!?みたいな。

 それに…こうやって二人きりで家の御飯食べるのも、中丸にとってもオレにとってもお互いが唯一だし。

 流星群は、こんな嬉しい時間も提供してくれる。

 御飯を食べ終わって、交代でお風呂も入って、それ以外の時間中丸はずっと望遠鏡を楽しそうに覗き込んでいた。

「ね、中丸。オレさ」

 日付もとっくに変わった時間、未だ飽きることのない中丸に話しかけてみる。

「ん〜?」

 熱中しすぎて生返事だよ。

「オレさ、今日みたいな日、好きだな」

「へ?」

「なんかねー、中丸は自分の好きなことができて楽しいでしょ?オレもねー、中丸が楽しそうで自分も楽しい。…って、あ〜オレ何言ってんだろ、へへっ」

 言ってて照れくさくなったから笑ってごまかしてみた。

「…俺はさ、ただ単純に星が見れるから楽しいんじゃねーよ」

「ん?」

「上田が傍にいてくれるから。一緒に俺の好きな星を見れるから楽しいんだよ。やっぱさぁ、二人で見ることに意味があると思うんだよね」

 あ、ヤバイ。嬉しい。

「…ありがと」

「礼を言うのはこっちだと思うけど?いっつも付き合わせちゃってさ。もしかして上田は楽しくないのかなーなんて思うときもあるわけでして。だから楽しいって言ってくれて…その…嬉しかった…」

 星をよく見るために部屋を暗くしてるからよく見えないけど、中丸照れてる?

「上田」

「?」

「これからも、一緒に星見ような?いや、見て下さい。お願いしますっ」

「…はい。お願いされましたっ」






 流れ星に願い事?したよ、もちろん。

 またこうして二人で星を見られますように…って、ね。











今日(H16.12.13)双子座流星群なるものが見られる(見られた)そうですよ。これは本当です。ただまったりした話にしたいなぁと思って、でも今日中にアップしなきゃってスピード書きです。あんまり意味とか無いんで、まったりしていただければ幸いです(笑)

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