019.膝枕 |
ん〜、なんか、頭が心地良い…。 俺ってこんなフィットする枕、持ってたっけ…? びっくりした。 目を開いた瞬間、飛び込んできたのは田口の顔。 っつーか、寝顔。 俯いているから、パーマのとれかけてきた長めの髪が重力によって肩から落ちてる。 って、え、なんで田口の顔が俺の上にあんの? 俺、横になってるのに。 起きたばっかりで思考がうまく働かない。 とりあえず、庇護欲をかき立てられる寝顔をじっと見てみる。 こうしてみると、実際の年齢より幼く見える。 「…ん」 田口の身体が少し身じろぐ。 あ、起きたかな? ゆっくりと瞳が開いていく過程を観察する。 なんか…なんか、セクシーだぞ…。 「ん…あ、赤西くんおはよ」 柔らかく微笑んで、「あれ、寝ちゃってた?」なんて聞いてくる。 朝からこれはキツいって…。 「…はよ」 「よく眠れた?あ、それより大丈夫?」 「は?何が?」 「…もしかして、覚えてないの?」 「?」 「…とりあえず、降りてくれる?」 「へ?」 さっきからクエスチョンマークのついたセリフばかり並べられて、俺の頭の中もクエスチョンマークだらけ。 でも、田口が下を…要するに俺を指さしたことで、今置かれている状況を把握しようと視界を巡らせたとき。 ちょっと待て。 今俺が頭を乗せている、この、やたら寝心地の良い枕って、もしかして…。 「!!」 「ぅわっ!いきなり起きないでよ」 「っていったって!」 立ちあがったから、ソファーに座っている田口を見下ろす形になる。 一緒に暮らし始めるときに二人で選んだ紺のソファー。 起きあがるとき、勢いがよすぎて危うく田口と激突しそうだった頭をフル稼働させる。 だって、身に覚えがない。 「何で俺、田口の膝枕で寝てんの!?」 昨日俺は、上田に誘われて中丸の家で飲んでいた。 療養中の田口を除いたメンバー全員が集まっていたのだが、俺は田口がいないからつまらなくて、泊まらず帰った…筈。 そのためにタクシーを捕まえて…それで? そっから先が思い出せない。覚えていない。 「はぁ…」 そこまで話すと、改めて隣同士に腰掛けたソファーで田口は呆れたように溜息をついた。 「あのね、赤西くん」 「昨夜、日付が変わった頃、やたらチャイムを鳴らされて」 「近所迷惑だから文句言ってやろうとドアを開けたら赤西くんで」 「慌てて部屋の中に入れたらリビングでぶっ倒れて」 「どうやって帰ってきたのか聞いたらタクシーだって言ってたけど声も完全に酔っぱらってたし」 「とにかく着替えさせてベッドに連れて行こうと思ったんだけど」 『な〜ぁ田口ぃ、お願いがあるんだけどぉ〜』 『何?水?それとも気持ち悪い?』 『そんなのいいから』 『薬とか、いる?』 『膝枕、して?』 「…正直、この酔っぱらいが、って思ったけどね」 「あああああ…」 痛い、頭が痛い。 二日酔いではないんだけど、むしろすっきりしてるくらいなんだけど。 自分のとった行動で頭が痛い。 「な〜、しろよ〜、いいだろ〜?」 「…真似しなくていいから」 「してくんないと田口の愛を疑うぞ〜」 「…ごめんなさい」 「膝枕一つで疑われるような愛だったんだ。オレの赤西への愛って」 「…」 ばかばかばかばか、俺のバカ! 前後不覚に陥っていたとはいえ、なんという醜態…。 しかも、足の療養をしている田口に向かってそんな負担のかかることをねだったというのが最悪。 しゅんとしている俺にクスリと笑うと、肩に頭を預けてくる。 「でも、なんか昨日の赤西くん可愛かった♪なんか、いつも見せない本心が分かった感じ」 俺としても、して欲しい、と特に思っていた訳じゃないけど…心の奥深くで眠っていた欲望が出てきてしまったんだろうか。 「…ただ、痺れちゃって動けないけどね」 ぺろっと舌を出す、悪戯っ子な表情。 寝顔同様、年齢以上に幼く見える田口にすっげー罪悪感。 「すみません。お詫びに何でもします」 なんかもう、平謝り。 そりゃあ何でもっていっても、無理なものは無理だけど。 「じゃあ、今度は赤西くんが膝枕、してくれる…?」 「え?」 「一度、されてみたいと思ってたんだ…。駄目?」 駄目だなんて、そんなこと無い。 田口が望むなら。 「…いいえ、よろこんで」
実は同棲している設定です。そこだけパラレル?リアルネタもちょっと入れてみました。一応まだ、中上以外は未成年ですけれども〜…。 |