025.ピアス


 …何か、違和感。

 上田がいつもと違う気がする。

 でも、どこがどう違うのかは分からない。

 何だろう。

「あれ、上田さぁ、ピアス替えた?」

 こういうことには目敏い赤西が、近づいて耳元を覗き込んでいる。

 あぁ、そうか。ピアス替えたのか。

 けど前のヤツ、結構気に入ってたんじゃなかったっけ。

 替えるの珍しく早くね?

「へっへっへ〜。いいでしょ、似合う?」

 前半の怪しい笑い声は聞かなかったことにしよう。

 俺はそう思ったのに満面の笑みで訊かれた赤西は急にデレッとして。

「似合う似合う!あ、でもどっちかって言ったら…」

 ちらっと俺の方を見る。何だよ。

「聖に似合いそうな感じがする。ソレ」

「俺ぇ?」

「うん。何か聖が好きそうなタイプだし」

 そ、そうなのか?ここからじゃよく見えないからわかんないんだけど。

 なんて思ってたら上田と目があって、にっこりと微笑まれた。

 …その顔、ファンに見せてやれよ…。

「こ・お・き♪」

 ちょっとこっち来て、とでも言いたげに視線を投げかけてくる。ご丁寧に手招きつき。

 まぁ、中丸は遅刻してるし、田口と亀梨は他グループの楽屋に遊びに行ってるしで暇だったから、相手くらいしてやってもいいかと上田に近づく。

「あんだよ」

 上田に対していつもぶっきらぼうになる自分が嫌だけど、相手は気にもしないでニコニコしている。

「ハイ。誕生日おめでとう」

 目の前に差し出された小さな包みとその言葉で、今日が何の日であるのか漸く思い出した。

 …そうだよ。今日俺誕生日じゃん。

 最近忙しくてすっかり忘れてた。

「あ、あぁ、サンキュ。開けてもいいか?」

「うん」

 いつもなら乱暴に開けただろう包装紙も、なるべく破らないよう慎重に開けていく。

 心なしか逸る胸を押さえ、小さな箱を開けて中身を見ると。

「あ…コレ…」

「いいでしょ?お揃い」

 上田の言うとおり、今コイツが身に付けているものと全く同じピアス。

「な…っ、何で何で!?上田、何で〜!?」

 相変わらず何を考えてるのか分からない笑みを浮かべた上田の後ろから、覗き込んだ赤西が騒ぎ出す。

「なぁ、何で!?何で聖と上田がお揃いなんだよっ」

「…さぁ?何故でしょう?」

 切羽詰まった表情で上田を問いつめる赤西と、さらりと余裕でかわす上田。

 俺はといえば、暫く呆然とそのピアスを見つめてこのプレゼントの意味を考えていた。

 と、そこで初めて箱の中に入っていた小さなカードに気付いた。

 未だに納得がいかないらしく上田に迫っている赤西にだけは絶対に気づかれないようにそっと取り出して読んでみる。

 ……。

 反則だろ、オイ。






『Happy Birthday★ 大好きな聖へ愛をこめて。by上田竜也v』






 もう一度ピアスに視線を戻す。

 男っぽいんだけどシンプルなシルバーピアスは、まさに俺の好みそのもので。

 上田が俺のために選んでくれた、しかもお揃いのピアス。

 自分は既に身に付けているあたり、そーゆー意味と捉えてもいいんだよな?

「聖」

「あ?」

「ソレ冗談なんかじゃないからね。返事は帰りまでにヨロシク♪」

「!!」

 赤西に絡まれたままの体勢で俺に向けたウインクの威力は絶大だった。

 …このピアス、身に付けらんないかも。

 っつかもう、宝物でしょ。






「なぁ、どーゆーことなんだよ!」

「…赤西、いい加減ウザイ」

「!!たっちゃぁぁん(TOT)」











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