041.花吹雪 |
「田口って、桜似合うよな」 「何、突然」 「いや、何となく。あ、髪に花びら付いてる」 満開をちょっと過ぎたくらいの桜の花。 スタジオの隣の公園で、花見って言うほど大それたモノじゃないけど、休憩時間に田口と二人で見る薄紅色の桜。 ちらちら舞ってる花びらが綺麗で、二人してバカみたいに見上げてたんだけど。 ふと、隣の田口に目をやったら、これがまた、びっくりするくらい桜が似合ってるもんだから、つい口をついてしまった。 「それってオレが醤油顔だって言いたいの?」 「いや、顔がどうとかじゃなくてさ、お前が纏ってる雰囲気っての?」 「雰囲気?」 「自然な感じ。柔らかくて、暖かそうで」 今度はまじまじと田口と桜を交互に見比べてみる。 「うん、やっぱり似合う。っつーかこんなに似合うヤツ初めて見た」 「そう?…なんか嬉しいな」 あ、ほっぺた桜色。 「赤西も髪、花びらだらけだよ」 「うっそ、マジ?」 「うん。じっとしてて。とったげる」 クスクス笑いながら田口の細長い指が俺の髪に絡まった花びらを一枚一枚とっていく。 あー、なんかすげーまったり気分…。 ぶわっ! 「うわっ」 まったり気分から一転。 突然突風が吹いて、とっさに目をガードする。 数秒後、風は最初ほどの勢いはなくなったものの、未だ強く吹き続けていて。 「…田口…」 ゆっくり目を開けると、視界一面にピンクの花びらが舞っていた。 隣の田口も同様に呆気にとられている。 「わー、花吹雪だ…」 「すっげ…」 さっきまで穏やかに降っていた花びらも綺麗だったけど、こうして視界を遮るくらい華やかに舞っている花びらも凄く綺麗。 だけど。 「すごい、夢の世界にいるみたいに綺麗」 そう言って駆け出そうとする田口の腕を思わず掴んだ。 「?赤西、どうかした?」 田口が不思議そうに訊いてくるのを笑ってごまかした。 言えない。 痛すぎる。 田口が桜の花びらと一緒に攫われそうに見えたなんて。
カツンで一番桜が似合うのは田口さんだと思ってます。やっぱ、「和」なのかな? |