057.寝起き |
ピピピピピ…。
「ん…」 いつもの音で目が覚める。 鳴り続ける音を止めようと腕を伸ばしてみたけれど、あと少しが届かない。 仕方なく上半身を起こそうとすると、その動きを阻止された。 「竜也…」 隣に眠っている中丸の腕が、オレの身体をしっかり抱き込んでいる。 あまりに強い力だし、タイミングも良いし、起きてんのかなって付き合い始めた頃は思ってたけど、どうも無意識らしい。 無意識でもオレを求めてくれているらしい。 それは嬉しいけど、今はうるさく鳴り続ける目覚まし時計を止めたいからこの腕ちょっと邪魔。 無理矢理抜け出して、はい完了。 「…さて、と…」 何かを探すようにシーツの上を彷徨っている中丸の腕。 何かって…オレなのは間違いないんだろうけど、何もないシーツの上で腕だけ動いてんの、おかしな光景。 これで実は起きてる…とかだったら楽なんだけど。 「中丸、中丸朝だよ。起きて」 ぐっすり眠っている身体を少し揺さぶって声をかける。 反応無し。 ちなみに、今までこれだけで起きた試しはない。 ついでに言っておくと、田口以外の他のメンバーも似たようなモノ。 ッたく、寝汚いヤツばかりなんだから。 「なーかーまーるーっ!」 今度はもう少し声を大きくして、首ががっくんがっくんなるくらい激しく揺さぶってみる。 「んー…?」 あ、ちょっと反応あり。 でも覚醒には至らないらしい。 他のメンバーはこのくらいで起きるんだけどなぁ。 中丸は絶対起きない。 だからいつも、他にイロイロと試すんだけど…生憎、今日は朝から仕事が入ってて時間がない。 出かけるまでに二時間あるとはいえ、シャワー浴びて、身支度して、簡単な朝食をとったらもうギリギリ。 …手っ取り早く起こしますか。
バサッ。
乱暴に布団をめくると、下着しか着けていない中丸の身体が外気に触れてビクッと動いた。 どくんっ。 下着だけなのはオレも同じなんだけど…昨夜のことを思い出して鼓動が速くなる。 落ち着け、オレ。 深呼吸して中丸の身体を仰向けにさせると、ゆっくりその上に跨った。 ギシッと2人分の体重にベッドが軋む。 「んー?」 さすがに体重がかかって圧迫されるから、苦しそうに眉根を寄せる。 でも、まだ起きない。 ある意味、さすが中丸だね。 ゆっくりと身体を倒して中丸に密着するように抱きつく。 あったかい…人肌って何でこんなに気持ちいいんだろ。 っと、うっとりしてる場合じゃなかった。 「中丸…」 寝息をたてるその唇を塞ぐようにして唇を重ねる。 「ん…」 柔らかい。 中丸はいつも「竜也の方が柔らかい」って言うけど、中丸の唇だって柔らかくて気持ちいい。 しばらくそのままでいたけど反応が無くて。 昨日キスに酔わされたことだとか、この唇が、中に潜んでいる舌が、オレの全身を愛してくれたことだとかを思い出してしまう。 早く、起きてよ…。 本来の目的は中丸を起こすことなのに…、早く起きてくれないとどんどん身体が熱くなってくる。 「んっは…んぁ?」 ふと、後頭部を押さえつけられたことを感じた途端、薄く開いていた唇から侵入してきた中丸に強く舌を吸われて背筋を痺れるような感覚が走り抜けた。 「んぁっ、はっ…ちょっ…なか…ま、るっ、…ンふっ」 それを快感だと自覚する間もないまま、口内をこれでもかというくらいに蹂躙される。 「…っもう!」 無理矢理身体を起こして逃れると、悪戯が成功した子どもみたいな笑みを浮かべた中丸と目があった。 「…っはぁっ、は…」 「おはよ、竜也」 あれだけ揺さぶっても起きなかったヤツとは思えないくらい爽やかに言う。 「…っ、はよ…じゃないっ。朝から何考えてんだよッ」 「何って、竜也から仕掛けてきたんじゃん。おはようのちゅーv」 「お前が全然起きないからだろッ。それにちゅーなんて可愛らしいもんでもなかったし!」 「まあまあ」 「いいから、さっさと起きないとまた遅刻するよ」 中丸を起こすという用事は終わったのだから、中丸の上…っていうかベッドから降りようとすると腕を捕まれた。 「…なに?」 中丸はといえばニヤニヤと何やら怪しい笑みを浮かべてる。 「いや〜イイ眺めだなぁと思ってv誘ってんの?」 確かに、今の体勢は俗に言う騎乗位ってヤツで、更に言うと中丸の好きな体位でもある。 「ばっ、何言って…」 「俺は全然構わないし〜、むしろ大歓迎?みたいな?」 「寝言は寝てるときに言ってろ」 「ごめん、調子乗りすぎた。ごめんって」 完全に呆れて中丸の腕を力任せに振り解くと、焦って縋り付いてくる。 「ホントに時間無いから。オレ先シャワー浴びてくるから」 実は今ちょっと、ヤバイ状態になってるんだよね…。 ばれたら当然調子に乗るから、気付かれないようにしつつ平然を装って中丸から離れようとする。 「あ、じゃ俺も一緒に…」 「…朝から何考えてんだ」 いやらしい笑みを浮かべる中丸を睨みつけてやるけど、相手は笑みをより濃くするだけで。 「だって竜也、今のキスで」 「ひゃっ」 下着越しに熱くなりかけていたモノを撫で上げられて、急な刺激に上擦った声を上げてしまった。 「…な?」 「〜っ」 「どうせ一人で抜くつもりなんだろ?悲しいじゃん。最愛の恋人がここにいるのに」 バレてる…恥ずかしい。 今きっと顔真っ赤だよ…。 仕方なく二人で浴室に向かったけれど、案の定、一回抜くぐらいで終わるわけが無くて、そのままなし崩しに中丸を受け入れてしまった。 朝食なんてとる間もなくスタジオに向かったものの、二人揃って遅刻した上に俺はまともに踊ることもできなかった。 お陰でメンバーのいい笑いのネタになって、散々な一日だった。 全く、寝汚い恋人を持つとろくな事にならないんだから。 でも…中丸だから良いか、って思ってしまうオレも相当重症かも。
中上の日常、みたいなのを書きたかったのですが…。とりあえず上田さん、重症なのは確かです。 |