YOU&I・・・


僕の彼への気持ちは『特別』なもの。

でも『特別』って何だろう。

僕は彼の『特別』になりたいんだろうか。




「つ〜よしくんv これ受け取ってv」

 楽屋に入ってくるやいなや、そう言って光一が差し出したのは、真っ赤な包装紙と金のリボンで綺麗にラッピングされた、小さな箱。

「…何コレ。」

 ホンマはわかっとった。この箱が何なのか。そして、今日がどういう日なのか。

 ただちょっと、光一の笑顔と勢いに圧されて、こんな言葉しか出えへんかったけど。

「何って…チョコレート。今日バレンタインやろ? だから、いとしのつよしくんにv」

 予想通りの答えやけど、あまりに軽ぅてどこまで本気なんかわからへん。

 最近、こんなんばっかやな…。

 テレビでもコンサートでも、光一はオレを好きだの愛してるだの、簡単に言ってのける。

『あんなコト言うて、もし本気やと思われたらどないすんねん。』

 どこまでが冗談でどこまでが本気かわからへんかったこともあって(まあほとんど冗談なんやろーけど)初めのうちは、俺も周りの目とか気にして言っとったんやけど、光一は、 

『ええてええて。誰も本気やなんて思わへんよ。』

 なんてへらへらしとるから、今では敢えて止めようとも思わんようになった。

 それに、単なる悪フザケとしか思えへんかったから、自分だけが振り回されるのもイヤやったし。

 いちいち振り回されてるオレもオレなんやけど。

 …だけど光一はわかっとるんやろか。オレのキモチ。

「まぁ、くれるんなら有難くもろとくわ。サンキュな。」

 ちょっと冷たかったかな。

 光一への気持ちを知られるわけにはいかへんから仕方ないんやけど、こういうときは自分でも驚くほど感情を押し殺した声になる。

 案の定、光一は不服そうな顔をした。

 キレーな顔しとるから、そんなんでも様になっとる。

「何だよ〜。折角俺からつよしへの愛がたぁっぷりこもってんのに。つれないなぁ。」

 ぶつくさ言いながら光一はソファーに腰掛ける。

 思わずオレは溜息をついてしまう。

「あのな光一、いくら誰もいない楽屋の中やからって、誰かに聞かれたら誤解されるやろ。いい加減そーゆー冗談やめてんか?」

 違う。他人なんて関係あらへん。オレが……苦しいから。

 光一のこんな態度は、オレの心を苦しめるから。

 冗談やて思う度に、オレの心は苦しめられてく。そのうちに……隠しきれなくなる。

 光一は悪くない。全部、こんな感情を持った自分の所為なのに。

「…冗談やないんやけどな…。」

「え?」

「なーそれより、俺には?俺にはくれないの? つよしくん。」

 …今の言葉、聞き間違いやったんやろか。

 一瞬だけ見せた真面目な表情がまるで嘘のように、また普段の光一に戻ってる。

「あらへんよ。大体何でオレがお前にバレンタインチョコやらなあかんねん。」

 こんな事を言ってしまったのは照れ隠しでもあったかも知れないけれど。

「え〜? だってつよし、俺のコト好きなんやろ?」

「なっ?」

「俺のコト、愛してるんやろー?」

 上目遣いにオレを見上げて、いかにもいたずら小僧って感じで訊いてくる。

「ばっ、馬鹿なこと言うな。フザケンのもええ加減にせえよ。」

 図星を指されて、俺は光一に背を向けた。

 その途端、自分のカバンが目に入って、あることを思い出した。

「そうや…。今日確かV6も一緒やねんな。チョコ渡してこーへんと。井ノ原くんおるかな…。」

「ちょっ、ちょっと待てや!」

 独り言を呟きながら(別に頭がおかしいとかそーゆーんやないで。たまたま口をついて出てまっただけや。)カバンを開けて中に入ってたチョコを取り出すオレに、光一が慌てて寄ってくる。

 さっきまでのニヤニヤ笑いはどこにもなくて、ホンマに焦ってるっぽかった。少なくともオレにはそう見えた。

「お前、俺にやるチョコはなくて、井ノ原くんにやるチョコはあるんか?」

 肩を掴んで光一はオレを問いつめてくる。ちょっとしたイタズラ心が沸き起こった。

 ホンマはV6全員に宛てたモンなんやけど。

「そうや。ちょっと放してんか。渡してこなあかんのや。」

 ショックを受けて固まった光一の手をゆっくり退けると、オレは立ち上がった。

「待てよつよし! つよし?」

 我に返った光一が呼び止めようとしているのを無視して、楽屋を後にした。

 光一の態度に少なからず満足して、取り敢えず隣の楽屋に向かう。

 そのとき。

「よう剛、久しぶり。」

 何とも都合良く、楽屋に戻ってきたらしい井ノ原くんと出会った。

「久しぶり。丁度良かった。これ、チョコレートなんやけど、よかったらみんなで食べて。オレからの差し入れやと思ってさ。」

「あぁ、サンキュ。」

「いいえ。じゃ。」

 ホンマに用件だけ済ませて井ノ原くんと別れかけたとき、バタンと大きな音とともに扉が開き、光一が楽屋から出てきた。

「つよし!!」

 構わずに歩き出す。

 光一は、追いかけてくるやろか。

 それとも怒って、楽屋に戻ってしまうんやろか。

 追っかけてきてほしいな…。

 期待と不安で、胸が締めつけられるみたいや。

 ついさっき、オレに対して焦った光一を見たときはあんなに嬉しかったのに、また苦しい気持ちに逆戻り。

 こういうとき、自分がひどく弱々しい気がしてイヤになる。

 別に強い方だと思っていたわけではないけれど、やっぱり少し気持ちが沈む。

 後ろの方で、光一と井ノ原くんが喋ってる声がする。

 内容はわからへんけど、きっと怒っとんのやろーな…。

 今更楽屋に戻るのも気まずいので、多少早いけれども撮影所に向かう階段を上がる。

 丁度踊り場にさしかかったとき、慌ただしい足音が聞こえてきた。「待てよつよし!」

 光一だ。

 そう認識した途端、思わず立ち止まってしまう。

 来て、くれたんやな…。

 体の内側から嬉しい気持ちが沸き上がってくるものの、振り向けない。

「つよし……悪かった。まさかお前があんなに怒るとは思わへんかったから。からかったりしてごめんな。」

 普段の光一からは想像できないくらい、真剣な声。

 それっきりオレも光一も何も言わんから、長い沈黙が訪れる。

 長い、と感じただけで、実際はそんなに時間は経ってへんかったかもしれんけど。

 重たい沈黙に耐えかねたのか、光一が先に口を開いた。

「じゃ、俺楽屋に戻るから。」

 引き返そうと体を翻したのが分かった。

「光一。」

 一歩踏み出した光一を呼び止めて、オレは隠し持ってた手のひらサイズの箱を、振り返った彼に向かって放り投げる。

 光一は慌てて受け止め、驚いたように目を見開いた。

「つよし、これ…。」

「やる。」

 光一はまだ固まったまま。全く、今日はよく固まる日やなぁ。

「名前忘れてまったけど、なんとかってケーキ屋のチョコ。うまいって聞いたで光一のために買うてきたんや。おまけでクッキーまで付けてくれた気前のいいトコやったで。味わって食べろよ。」

 言うだけ言って、オレは撮影所へと向かう。

 光一はまだ呆然と立ち尽くしている。何が起こったのか理解に時間がかかっとるようや。

 階段を上りながら、一人思ってた。

 光一へのこの想いが間違ったものだとしても、光一がオレを同じように見てくれなくても、オレはこの感情を持ったこと、後悔せえへん。

 そう、オレたち二人でこの仕事を続けていく限りは。

 だってオレが望んでんのは、想いを打ち明けることでも、ましてや両想いになることでもあらへん。

 ただずっと、光一の側にいたい、一緒にいたい、それだけなんやから。

 誰にも代わられることのない、『特別な人』として。











END











う〜よくわからない〜(焦)とりあえずは「何があっても二人」みたいな雰囲気を出したかったんです。恋人にはなっていないですが、キンキはたった二人ですから。五人や六人のグループとはまた違った思いがあるんじゃないかな〜みたいに考えて。本命大学の入試の直前に思い立って書いたんです〜。勉強しろよって感じですがね。これはバレンタインシリーズを作りたくて、当時私の中で主流だった井健と坂剛を取り混ぜたV6Ver.と設定考え中だった嵐Ver.も作って何処かでリンクさせるつもりだったんだけど未だに取りかかっていない…1年半過ぎてるよ(苦笑)いつかは書きたいです!

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