学園天国


「おっはよ〜♪」

「おはよう健くん、今日も可愛いね」

「えへへ、ありがとう☆」






 オレ、三宅健。

 17歳の高校二年生。名前の通り、性別は男。

 自他共に認める学園のアイドル。

 ムサ苦しい男子高に咲いた一輪の花ってヤツ。

 この愛くるしい容姿と甘え上手な性格で、学園内の多くの男を翻弄しちゃってる。

 にもかかわらず、オレを嫌ってるヤツはこの学園にはいないと思う。

 まぁ、オレが理事長の孫っていうのもあるけど。

 隙あらば、と狙ってる人間は大勢いるんだけどね。

 でもオレはそいつらのモノにはならない。

 なぜなら…。






「あっv井ノ原先せ〜いv」

 お目当ての人物を見つけると勢いよくその背中に飛びつく。

 するとその人物は振り返り、だらしのない笑顔で抱き締め返してくれた。

「おー健ちゃんおはよう。今日も元気だねぇ」

「おはよーございますー。先生は今日もカッコイイv」

「この〜、朝から嬉しいこと言ってくれるじゃん。ん〜v」

 人目も憚らず降ってくるキスを喜んで受け止めて、仕上げにオレから先生の唇に触れるだけのキス。

 周りの視線とか、「あぁ…」という嘆きの声なんて聞こえない振り、知らない振り。

 今のオレは目の前のこの人だけが全て。

 学園のアイドル三宅健、社会科教師井ノ原快彦との『禁断の恋愛』に只今夢中。






「朝っぱらからよくやるよなぁ、お前」

 教室に入って席に着くと、隣の席の森田剛が呆れた目を向けてきた。

 剛は窓際の席だから、ボンヤリと皆の登校風景を眺めてたら一部始終を目撃してしまったらしい。

 オレと剛はイトコ同士で、同じ敷地内に住んでるから、オレがただチヤホヤされてるだけじゃないってこと、一番よく分かってる。

 だからよく、オレと付き合う男に対して「ご愁傷様」なんて言ってるんだけどね。

「お前はいいかもしんねーけどさぁ。アイツそのうち辞めさせられんじゃないの?」

 今回は相手が悪いぜ、と剛は言う。

「大丈夫だって。オレと剛が頼めばじーさんだってそんなこと出来ないって」

「まぁ…お前の魔性のおねだり攻撃にゃ、毎度毎度じーさん撃沈だけどさ」

「それにオレ達が付き合ってたって、周りはオレが先生に懐いてる、程度にしか思わないよ」

「確かに」

「は〜い。これで心置きなく、オレは先生とイチャつけるってワケですねぇ」

「…ってかお前さ、井ノ原の何処がいいわけ?オレにはさっぱりわかんね」

「はぁ!?」

 何いってんの、超失礼!

「全部だよ、全部」

 井ノ原先生にはクラスや担任をもってもらったことはないけど、とある事情があってすっごい優しくしてもらったんだ。

 それからはLOVE一直線。

 剛だってその場にいたんだから知ってる筈なんだけど、もう一人その場に居合わせた養護教諭の長野先生の方がよかったみたい。

 ま、オレと剛とじゃ、好みが全然違うんだからしょうがないか。

 そのお陰で恋愛ターゲットがダブることが無くて良いしね。

「めっずらしい。本気なんだ、今回は」

「まぁね。てかいつも本気だけどね。その時その時はちゃんと真剣」

「ウソつけ」

「ウソじゃありません〜」

 いつもの言い合いをしていたら担任が入ってきた。

 あ〜あ、またつまんない授業かぁ。

 早くお昼休みにならないかなぁ…。






「いっのはっらせっんせ〜♪」

 四時間目終了のチャイムが鳴って、隣のクラスで授業を終えて出てきた先生に後ろから飛びついた。

「うをっ!健ちゃん。ビックリしたー」

 その拍子に持っていたテキストや参考書を落としかけて、持ち直す先生。

 振り向いたその顔は相変わらず笑っていて、元々細い目を糸のように細めている。

 そんな顔がオレは好き。

「ねぇねぇ。お昼ゴハン一緒に食べよ」

「良いけど、あれ、剛ちゃんはどうするの?」

 オレの後ろにいた剛に気付いた先生は不思議な顔をした。

 いつもオレと剛、二人で食べているから、こうやってオレが先生を誘うことって珍しい。

「俺はいいよ。保健室で食べるし」

 そう言い残して剛は行ってしまった。

 元々長野先生と約束してたみたい。

 そういう訳で、今日は先生とランチタイムなんだ♪

 内緒で屋上に出て、二人きりの世界になる。

 何でもない話をしながら二人でお昼を食べた。

 ココ、ホントは立ち入り禁止なんだけど、そこはそれ。

 理事長の孫と教師だし?ちょちょいとね。

 バレたらまずいけど、こんなに楽しいならまたこうやって先生とお昼食べたいな。

「…なぁ健」

 食べ終わった後も二人で笑い合いながらお喋りを続ける。

 ふと会話が途切れた時に、急に先生が真面目な顔で言った。

「…なに?」

 目がなくなる程笑っている顔も好きだけど、こうやって真剣な顔してるのも男らしくてカッコイイ。

 それに何かあるんだよ、こういう顔する時って。

「俺、ずっと健に渡したい物あってさ。なかなか二人きりになれなくて今日になっちゃったけど」

 そう言ってポケットから小さな包みを取り出した。

 濃紺の包装紙に淡いブルーのリボンがかかっていて、掌に乗るくらいのサイズ。

「…開けても、いい?」

「いいよ」

 そっとリボンを解き、破らないよう丁寧に包みを開けて、出てきたのは。

「…キレー…」

 箱の形から何となく予想はついていたけど、中身を見た途端感動でそれしか口に出来なかった。

 上目遣いで井ノ原先生を見た。

「先生、コレ」

「俺の気持ち。本気なんだってこと、知っておいて欲しかったからさ」

「高かったでしょ?こんな…オレなんかに」

「いいんだよ。それだけ本気なんだってこと」

 でも…ホントに受け取ってもいいのだろうか。こんな高い物。

「ホントに?貰っちゃってもいいの?」

「他に誰にあげるんだよ。それは健のだから」

「うん…ありがとう!」

 もう一度、受け取ったものを見つめた。

 プレゼントなんて、今まで数え切れないくらい貰っているのに。

 大好きな人から貰う物がこんなに嬉しいなんて初めて知った。




 それが「リング」だったから…尚更。




「ねぇ、はめてみてもいい?」

「いいよ。それはもう健の物だから、健の好きなように」

「うん、じゃあお願い、はめてくれる?」

 貰ったリングと左手を先生に差し出す。

「…どの指にしますか?お姫様」

 わかってるくせに。

「もちろん、他のリングをすることが出来ないように…薬指に」






 二人きりの学校の屋上で、この日オレ達は永遠の愛を誓った。











END











 コレも随分前に貰ったキリリクなのですが…ようやくできあがりました。勝手に学園パラレルにしちゃったけどよかったかな?やまもおちもいみもない話でごめんなさいです。

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