彼とのカンケイ |
皆が健を気にしてる。 皆が健を見つめてる。 皆が健を愛してる。 そうさせるだけの何かが・・・健にはある。
「け〜んちゃ〜ん、一緒にボーリング行こうぜ!」 井ノ原くんが誘っても、 「やぁだよぅ。井ノ原くん一人で盛り上がっちゃうもん」 さらりとかわしてしまう健。
「健くん、今度オフが重なったら一緒にドライブでもせえへん?海行こうや」 岡田が誘っても、 「やぁだ。何でオフの日までお前と顔会わせなくちゃなんねーんだよ」 得意の毒舌ではねのける健。
「健、この前お前が好きそうなアクセの店見つけたんだ。一緒に行かねえ?」 坂本くんが誘っても、 「いい。場所だけ教えて。一人で行くから」 可哀相なくらい突き放す健。
「健、おいしいラーメン屋あるんだけど、一緒に行かない?」 長野くんが誘っても、 「う〜ん、今ラーメンって気分じゃないんだ。ゴメン、また今度誘って?」 躊躇いがちに断る健。
他人のぬくもりを必要としながら、どこかで拒否しているような。 必要以上に近づくことを、恐れているような。
そうして俺はいつものように、メンバーの誘いを断り尽くした健を連れ出す。
「健、帰るぞ」 俺の誘いには、 「うん」 二つ返事で乗ってくる健。
背中の方から、 「え〜」 「剛くんばっかりずるいやん」 「健ちゃんまた今度ボーリング行こうねぇ♪」 「気を付けて帰れよぉ」 いつもの健のキツイ態度にへこんだ様子もない、メンバーの声がかかる。
社交辞令的な挨拶だけして、健を連れて地下の駐車場を目指す。 健は喋らない。 俺も一言も喋らない。
「乗れよ」 「うん、ありがと」
車に乗り込むときだけ言葉を交わす。 車内でも俺たちは口を開かない。 ラジオから陽気な女の声が聞こえてくるだけ。
着いた先は俺の部屋があるマンション。 俺が車を降りると健も降りる。 別に俺が何か言ったわけでもない。 これがいつもの、メンバーも知らない俺たち。
部屋に入ったら交代でシャワーを浴びて。 いつものようにそんな雰囲気になる。
「ん・・・剛・・・」 行為の最中、潤んだ瞳が見つめてくる。 その瞳に映っているのが自分一人である瞬間。
誰よりも他人との距離に敏感で。 誰よりも他人のぬくもりを必要とする健だから。 他人とのスキンシップを常に求めているのは知っている。 仕事中であっても過剰すぎるボディータッチの数々。 こうして健と躰を重ねるようになって数年が経ったけれど。
オレタチハコイビトジャナイ。
お互い付き合ってる女だっている。 俺ほどまではいかなくても、健も女遊びには相当激しい方だと思う。 今の女が何人目なのか、お互い知らないくらいに。
デモ、タダノナカマデモナイ。
仲間というだけであったら・・・親友というだけであったら。 こんな風に逢ったりはしない。 躰の関係などもってのほかだ。
コノカンケイヲナントヨブノダロウ?
ただ、健が俺を必要とするとき。 心の底から触れあえるぬくもりを必要とするとき。 それが俺にはわかるから。 同じ時に俺も健を必要としているから。
だから、何も言わずに求め合う。 女といるだけでは満たされない何かを。
人は簡単に騙される。 健の外見に、天使のような微笑みに。
誰も健の心の奥に潜む悪魔に気付かない。 その笑顔の奥に隠された“何か”に惹かれてはいても。 ・・・メンバーの中には、見て見ぬ振りをしているヤツもいるようだけれど。
俺たちの間にあるのは、健が俺を求め、俺も健を求める、ただそれだけのカンケイ。 そこには愛の言葉も何もない。 きっとそれはこれからも続いていく。 今まで続いてきたように。
終わりがあるとすれば・・・。 それは健に、そして俺に“心から愛する人”が現れたときに違いない・・・。
END
何がなんだかわからない、小説と呼べるかどうかも怪しい話になってしまいました。済みません。どうしてこんな暗い話になっちゃったのかな〜。自分でも謎。これが途中から『Smile for me, please』の展開になったのもさらに謎。この二つの話がくっついていたことが今では考えられません。その時の私はいったい何を考えていたのでしょう・・・。まぁ、プロットも何もないままいきなり書き始めるからいけないんですが。 |