Ordinary conversation


 坂本くんと剛が喧嘩した。

 元々衝突の多い二人だったけど、今回はオレから見ても坂本くんに非があると思う。

 確か、最初はコンサートの内容で意見がぶつかっただけのことだったはず。

 真剣にコンサートのことを考えてるのが分かるから、それだけではどちらが悪いということはない。

 けれど、やっと話がまとまりかけたとき、坂本くんが剛を怒らせる発言をしてしまった。

 剛が子供扱いされるのが嫌いだってコト、知ってるクセに。

 怒った剛に大人気なくも逆ギレしちゃってさ。

「みっともないよね、坂本くん」

 コンサートの打ち合わせが終わって、ここは坂本くんのマンション。

「はあ…」

 ビールを呷りながら何回目か分からない溜息をつく彼を見かねて言う。

「あんなにムキになっちゃって…剛だって…健や岡田だってデビュー当時と同じような子ども扱いされたら怒るよ。もう子どもじゃないんだからね」

 楽屋を飛び出した剛を健と岡田が宥めて連れ戻してきたけど、あれからずっと機嫌が悪くて、結局また後日打ち合わせをやり直すことになってしまった。

 予備の日が取ってあったから良いようなものの。

「…わかってるよ。」

 ボソッと独り言のように呟く坂本くんに苦笑する。

「多分ね、そう言うと思ってた。「わかってるけどつい」でしょ。まだまだ可愛いコドモたちだもんね」

「…お前もあいつらのこと子どもだって思ってんじゃねーかよ」

 呆れてるのか、ちょっと引っかかったぞ、みたいな言い方。

 けど駄目だよ坂本くん。

 子どもの扱いには気をつけないとね。

 面と向かって子ども扱いして喜ぶ子どもなんて、今の小学生にだっていないでしょ。

 下手すりゃ幼稚園児だって怒ると思うけどな。

「坂本くんみたいに直接的じゃないから大丈夫なんだよ、オレは」

 立ったまま壁にもたれ掛かって、下戸のオレのために常備されてる烏龍茶の缶を開ける。

 うん、よく冷えてて美味しい。

「坂本くんは特に剛が可愛いから、ついつい余計なことまで言っちゃうんでしょ」

「はあ?アイツを俺が?バカ言え剛より健や岡田の方を構ってんだろーが」

「ふふん、気づいてないなら別に良いけど。オレからすると剛の注意を引きたくてちょっかい出してるようにしか見えないってだけだし」

 まるで好きな女の子を苛める小学生の男の子みたいにね。

 意地悪く微笑んで、全くわかってない坂本くんを見下ろす。

 ソファーの背もたれに思いっきり身体預けてる彼は、何言ってんだって顔をしてたけど、そのうち悪戯を思いついた、それこそ子どもみたいな表情になった。

「何、お前もしかして剛に妬いてんの?」

 そういうことですか。でもオレが剛相手に?

「バカじゃない?」

 あり得ないよ。

「剛を可愛いって思ってるのは坂本くんだけじゃないんだからね。オレだって、カミセンはちょっかい出したくなるほど可愛いんだから」

 剛に妬くってコトは、父親に溺愛されてる娘に母親が妬くようなものじゃない。

 そこまで堕ちてないから。

「オレにヤキモチ妬かせたいなら、もっと相手を考えなよ」

 悪戯が不発に終わり、ちぇ〜、とか言って唇を尖らせてる坂本くん。

 ホントにあんたは子どもか。

「剛が最近イライラしてたの、わかってたんでしょ?」

「あ〜なんとなくな。健と岡田だろ?」

 そういうところは鋭いのにね。

「剛としてはショックだったんだろうな〜」

「だろうね。今のところ仕事に影響は出てないし、今日も井ノ原が追っかけてったみたいだから大丈夫だとは思うけど」

「は?何、あいつ追っかけてったの?」

「気になる?剛が他の男に取られちゃいそうで」

「だからそんなんじゃないって」

「はいはい、お父さんは娘が心配ですねぇ〜」

 そしてオレはそんなお父さんを宥めるお母さん役。

 いつの間にかこんな役回り。

 勿論嫌じゃない。

「最近お前、V6の母が板に付いてきてるよな…。あ、空だ」

 二本目の缶ビールを冷蔵庫から出してやりながら。

「だってしょうがないじゃない?オレたちの関係って家族を映したみたいなんだよ?」

「ま、な。で、お前今日無防備にウチに来たってコトは、アレなの?了解してんの?」

 ニヤニヤとやらしい笑い。

「オヤジくさい笑い方しないでよ。別にどっちでもよかったけどね」

 うん、確かに来たときは別にどっちでもよかったんだけど。

 今は状況が変わっちゃったんだよね。

 残念でした、坂本くん。

「酒の匂い、気持ち悪いから嫌」











END











 短っ。これは短すぎだろ、と思えるくらい短すぎ(苦笑)こちらもリクエストが達成できてるか怪しいところです。こちらはV6一の夫婦の普段の会話っぽくしたかったんです。更に、権力は奥さんが握ってるという、坂長界では実にありふれた構図です。あと、ストーリーを会話で完結させるの好きらしいです。以前にもちらっとありましたが、それはおまけみたいに会話がくっついていただけだったんで、今回はそのまま完結させてみました。坂長単独の話はこれが初めてでしたが、またいつかやりたいCPなんで、気紛れにやるかもしれません(笑)

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