Peaceful Daily Life |
「なぁなぁP、このジャケット、この前の収録でPが着てたのと似てない?」 赤西が嬉々として訊ねてくる。 ここはとあるTV局の楽屋。 レギュラー番組の収録が終わった後の風景。 「っつーかさぁ、お前がオレの真似してるだけだろ〜?」 オレは今まで幾度となく繰り返されてきた問いに同じ答えを返す。 「違うって、俺のが先! ただ収録のとき着てこなかっただけなの!」 「あーはいはい」 毎度毎度同じような会話を繰り返すオレら。 隣で風間くんが笑いを堪えているのが分かる。 っつーかオレとしては、オレと風間君に割り当てられたこの部屋に赤西がいること自体が謎なんだけど。 なんか最近はもう、真似をしてるとかしてないとかはどうでもよくなってきてて、赤西の扱い方まで覚えてきたくらい。 だからこの会話にも慣れてはきてるんだけど、今日はちょっとウザい。 だって! だってこれから大好きな亮ちゃんとデートなんだよ? 収録中は正に“ウキウキ”って気分だったんだけど、直前にウダウダ言われて楽しい気分も吹っ飛んじゃった。 おまけに相手は俺の不機嫌に気付きもしないで喋り続けてるし。 あーもう、早く亮ちゃん来ないかなぁ。 と思ったその時、楽屋のドアがノックされる。 「山P,俺やけど」 ナイスタイミング! ドアの向こうから聞こえてくる愛しい人の声に、急いで荷物を持ってドアを開ける。 「亮ちゃん!」 「お待たせ。さ、行こっか」 「うん。じゃあ風間くん、お疲れ様〜♪」 「お疲れ様」 で、ここで亮ちゃんとの楽しい時間の始まり・・・のハズだったんだけど、赤西ってばしつこいのなんの。 「えぇ〜、Pもぉ帰っちゃうのぉ〜?」 「そう、帰るの」 亮ちゃんがいるのに、もうアンタに付き合ってらんない。 「ん〜、じゃあ俺も一緒に帰る」 何だってぇ!? 冗談じゃないよッ! 「赤西君、アンタいい加減にしなよ」 あれ、この声は。 「げっ! カメ!? なんでいんの?」 亀梨だ。ラッキー、助かった。 「『何でいんの!?』じゃねーよ。アンタ一人残して帰れるかっつーの!」 「そんな、小さい子供みたいな・・・」 「小さな子供よりタチ悪いヤツが言うか!? また山Pたちの楽屋乱入して」 「え〜? だってPカッコいいしぃ・・・」 「だってじゃない!! 二人共迷惑してんじゃん!」 「いや別に俺は」 風間くんがボソッと言う。 けど亀梨に睨まれて慌てて「迷惑です迷惑」と言い直してる。 「とにかく! アンタはオレが連れて帰るから」 「や〜ん、カメちゃん大胆〜」 「黙れ」 「はい・・・」 さすが亀梨。赤西の扱いがうまい。保護者レベルだね、もう。 「どうもお騒がせしました。お疲れ様〜」 文字通り赤西を引き摺って連れ去っていく亀梨を見送ってから、オレたちも局を後にする。
デートコースはいつものようにショッピング中心。 オシャレな服屋を数軒ハシゴし、アクセサリーの露店を覗き込んで、公園のベンチで休憩。 偶然近くにいた屋台でアイスを買って、二人で食べる。 いつもと変わらないんだけど、ちょっとしたことなんだけど、オレにとってはすっごく幸せ。 “亮ちゃんと一緒”ってだけで、心があったかくなる。 この幸せがいつまでも続くといいな。 「Pちゃんは人気者やねぇ」 「んにゃ?」 チョコレートアイスを一口食べたところで亮ちゃんが言った。 意図が掴めなくてオレは変な声を出してしまう。 「『んにゃ』だって。Pちゃんかわい〜♪」 思いっきり亮ちゃんに笑われちゃって、冷たい物を食べてる筈なのに顔が火照ってくる感じ。 オレはともかく、なりふり構わず大笑いしている亮ちゃんはすごく可愛い。 笑われてる立場としてはちょっと複雑なんだけどさ。 「もぉ、そんなに笑うことないじゃん・・・。で、何? さっきの赤西のコト?」 思い当たる節といったらそれしかない。 本当は二人きりでいるときまでアイツの・・・っていうか他の人の話題なんか出したくないんだけどな。 「アイツさ、俺がゲストに出るとき楽屋に遊びに行くと、いっつもPちゃんに引っ付いとるやん」 「・・・浮気はしてないよ?」 なんかヤな方向に進みそうで、おずおず口をはさむと、亮ちゃんは力なく首を横に振る。 「Pちゃんはそうかもしれへんけど、アイツはどうやろ・・・。今日もPちゃんのコトかっこええとか言うとったやろ」 「そういうことだったら、滝沢くんとかもかわいいって言ってくれてるじゃん」 「滝沢くんはええんや。翼くん一筋やし、俺らのこと弟みたいに思うとってくれとるし」 「でも赤西は違うって? ・・・亮ちゃんもしかしてヤキモチ?」 そうだといいなぁと思って言ったんだけど、亮ちゃんてば固まっちゃった。 もしかして、もしかすると・・・。 「ああそうやっ、ヤキモチや。Pちゃんに近づく男皆に嫉妬しとる」 「男? 女だったらいいの?」 「・・・あかんといえばあかんけど・・・そないなこと言うとったらファンはどないすんねん。圧倒的に女のコばっかやで」 「ふふ。ファンがいてくれるからオレたちって成り立ってるわけだもんね」 「そういうことや。けどPちゃんに邪な気持ちで近づく奴は許さへん」 「亮ちゃん・・・」 なんかカッコイイ・・・。 「ホンマはいつも一緒に居たいねん。けど、仕事で一緒になることなんて殆どあらへんやろ。俺のおらんとこでPちゃんが大勢の男達に囲まれとることが心配でたまらんのや」 最後の方は声が消えかかってた。 おまけに顔は耳まで真っ赤。 亮ちゃんてば・・・ホントに、ホントに。 「嬉しいっ!!」 「え!? な、何!?」 思わず抱きついてしまった。 「すっげー嬉しい。オレにヤキモチやいてくれるなんて」 嬉しくて嬉しくて、亮ちゃんに愛されてるんだって実感して、まるで夢のよう。 「Pちゃ〜ん? ちょっと、アイス服に付いてまうで」 「え? あ、わっ」 もう亮ちゃんてば、いきなり現実に戻してくれるんだから。 ・・・確かに、アイス持ったままなの忘れて抱きついたオレが悪いんだけど。 慌てて身体を離そうとしたら、オレの持ってたストロベリーアイスが亮ちゃんのほっぺたに付いちゃったよ・・・。 「あ〜!? もぉPちゃん・・・」 ブツブツ言いながらカバンからティッシュを取り出そうとする手を止める 「ゴメンね? すぐとってあげるから」 「え?」 きょとんとしている亮ちゃんに顔を近づけて。 ぺろん。 「ん、亮ちゃんのほっぺた、イチゴ味で甘くておいしい♪」 そう言うと、一度元に戻った顔が再び真っ赤に染まる。 面白いなぁ。 「Pちゃん、またえらい大胆なコトを・・・」 「ヤだった?」 反応からしてそんなことないのは分かってるんだけど、ちょっとからかってみたりして。 「・・・嬉しかった。というよりビックリしたわ。ほな、可愛い事してくれたPちゃんにお礼せんとな♪」 ? 亮ちゃん? 目が・・・何か企んでるみたいなんですけど? ・・・って!! 「!! ん・・・っ!」 何? 今、亮ちゃんの唇がオレの唇に・・・って、これって、これって・・・! 「ふむ。やっぱりPちゃんのここも甘いわぁ」 亮ちゃんの指がオレの唇にそっと触れる。 やっぱり今のって。 「・・・キス、した、の?」 したん・・・だよね? 「したのって・・・普通感触でわかるやろ感触で」 「だってっ」 だってさぁ。 「初めてだったんだもん・・・」 亮ちゃんの顔見ていられなくって俯く。 見ると唇に目がいっちゃいそうなんだもん! 「初めてって・・・ホンマ? Pちゃんやったら女のコと経験あるんやないかと・・・」 「ないよっ! 悪かったねっ!」 「悪かないよ。うわーめっちゃ嬉しい。そーかー、Pちゃんのファーストキスは俺のもんかー」 「もぉ・・・。ファーストキスはもっとロマンチックにしたいなって思ってたのにぃ・・・」 折角の記念がぁ・・・。 そりゃ相手が亮ちゃんなのは嬉しいんだけど、もちょっと、もちょっとムードがあったっていいのにさ(悲) うるうる〜。 「ゴメンゴメン。なら、二回目しよか? ムードたっぷりの甘〜いヤツ♪」 笑いながら言われても。 「オレの納得できるキスじゃなかったら許さないよ?」 「嫌っちゅーぐらい納得させたるわ。・・・やけど、とりあえずコレ食べてからにしたほうが良さそうやな」 「うわっ」 アイス、溶けかけてるし〜(悲) これってやっぱりオレたちの“熱さ”のせい? なぁんてね。 これを食べ切ったら、次はもっと甘ぁい亮ちゃんのキスが待ってるんだ。 ふふっ、楽しみ☆ 大好きだよ、亮ちゃんvv
「ところで赤西のヤツはPちゃんのコト好きなんか?」 「違うよ。アイツが好きなの多分亀梨じゃないかな。なんとなく、見てると分かる」 「そか。ほんならええわ。安心した♪」
END
今回のテーマは“どピンク”でした(バカ)。とにかく可愛いものを目指してみたんですが、あはは・・・ちょっと甘すぎた、かも? メインの二人だけでは済まず、あちらこちらに幾つものカップリングの影が見えるのが私らしいと言うか。だって好きなんだもん。それはさておきこの二人って難しいよ〜。まず攻受をどうするかで凄く悩んだ。結果二人で“ちゃん”付けで呼ばせる程甘いものに(苦笑)。ちなみにこれは私が初めてWordで作ったある意味記念すべき作品(笑)←しかも学校で(笑)。言い忘れましたがタイトルの訳は『平和な日常』です。 |