056.鎖 |
お前が、悪いんだよ。 俺以外のヤツに話しかけたりするから。 俺以外のヤツに笑顔を向けたりするから。 だから、俺はこうするしかないんだよ。 ―――ジャラ…ッ。 お前が、俺以外の誰とも会わないように。 お前が、俺以外の誰とも笑いあわないように。 俺以外の誰も、お前の笑顔を見ることがないように。 俺以外の誰も、お前の声を聞くことがないように。 「…ゆ、ぃち…」 あぁ、ちょっと痛かったかな? その切なげに俺を呼ぶ声、大好きだよ。 でもゴメンね。外してあげることはできないんだ。 ねぇ、竜也…。 これからお前はずっと、俺と二人だけの世界で生きていくんだよ。 この鎖は、そのためだけに必要だったんだ。 だって、永遠にお前を俺だけのものにするために、繋ぎ止めておかなくちゃならないんだから。 でもよかったよ。 竜也、鎖とか好きだったもんな。 俺はお前を繋ぎ止めることができて。 お前は大好きな鎖で繋がれて。 ほら、嬉しいでしょ? ね、お互い満足でしょ? もちろん、この部屋には誰も入れさせやしないからね。 俺が出かけるときも、ちゃんと鍵をかけていくから心配しないで。 ―――ジャラ…。 小さな身体が身動きをする度に鳴る、この独特の金属音。 竜也の四肢と首に繋がっている鎖が奏でる音は、お前が俺だけのものである証拠。 …俺にとって、最高のハーモニー…。 * 初めてつけられたときはひんやりと冷たかった鎖も、オレの体温が移って冷たさを感じなくなった。 動かないことが分かっていながら無理に腕を動かしてみる。 ―――ジャラ…。 あぁ…。 この音、スキ。 ゾクゾクする。 オレが雄一のものである証拠。 これ以上動かすことができない身体も。 この拘束感がタマラナイ…! 「竜也…これでお前は、永遠に俺だけのものだよ…」 拘束され、そう囁かれたときに全身に駆けめぐった感覚は紛れもなく“悦び”。 あの凄まじいほどの快感を雄一に伝えたいのに、どのように伝えればいいのかわからない。 ねぇ、雄一…。 オレが他の人と喋ったりするの、雄一は気に入らないんだよね? でもね。 雄一以外の人と話しても、オレにとっては花に話しかけるのと同じこと。 言葉を返すことのない花に、笑いかけるのと同じこと。 だから、雄一以外の人と会えなくなっても、笑いあうことができなくなっても、全然平気。 むしろオレの全てを雄一にだけ晒すことができて嬉しいんだ。 もう俺の目は、雄一の姿しか映さない。 声も、雄一のためだけに紡ぐ。 ウレシくて。 シアワセで。 ヨロコビで。 カイカン。 もっとキツク縛ってくれたっていいのに。 鎖で傷つき血を流しても、その痛みさえオレには快感なんだ。 雄一がしたことだから。 雄一がすることなら全部、この身体全てで受け止めたいよ…。 ―――ジャラ……ジャラ…ッ。 あぁ…愉しい。 この音…動かない身体…。 …最高に…幸せ…。
狂っている中丸と更に狂っている上田。を書いてみたかったのです…。 |