プレイボーイ |
赤西仁は、ジュニアの中で知らない者がいないほどの遊び人である。
携帯のメモリーにはおびただしい数の女の番号。 今日は誰だと聞かれれば次から次へと変わる女の名前。 赤西ほどのルックスなら一般人であっても周りが放っておかないだろうが、芸能人としてそれなりに顔が売れてきている今、何もしなくとも向こうから寄ってくる。 遊び慣れた女や水商売の女から、高校生、純粋培養のお嬢様まで、多種多様な女が。 この状況を良いと思ったことはないが、悪いとも思わない。 ただ、女の勘違いからくる嫉妬や独占欲は勘弁して欲しいだけ。 「仁は私だけのもの」とでも言おうものならその場で即サヨウナラ。 男を自分だけのものにしたいのなら他あたれ、俺はお前を独占したいなどと思ったこともない、と辛辣な言葉を吐き捨てて携帯のメモリーごとお別れ。 そのかわり、面倒くさいことにさえならなければ、それなりに“イイ関係”を続ける。 関係をやめたいという女は笑顔で見送る。 来る物拒まず、去る者追わず。 それが、赤西の性格だった。
「お疲れ〜」 雑誌撮影終了後の楽屋。 開放感に満ちあふれたメンバー達がこれからの予定を聞き合っているのを尻目に、赤西はさっさと帰る準備をする。 「赤西もう帰んの?」 「これから中丸と聖と飯食いに行こうって話になってんだけど」 どうやら亀梨・中丸・田中の三人で食事に行くらしい。 「そうなんだ、悪い。今日先約があってさぁ」 「また女だろ?」 「へへ、バレた?」 「もうバレるバレないの次元じゃないでしょ」 相変わらずな赤西にいつものことじゃん、とからかいに入るメンバー達。 「今日は誰?」 「F女大のミクちゃん。本物のお嬢よ、彼女」 「さっすが赤西様」 「うっわ、田口にまで言われるとちょっとムカツク」 「なんでだよ!」 「お前はいかねーの?」 いつもなら食事直行メンバーに入っている田口なのに、と不思議に思って訊いてみると、田口は少し困った顔をして。 「明日提出の課題があって」 「ほほーぅ、学生さんは辛いねぇ」 「まぁ、みんなは俺の分まで楽しんできてよ」 「じゃ、遠慮なく♪行こうぜカメ、中丸」 「…ははっ、じゃな田口。頑張って」 「お疲れ〜」 「ちょっと待って、途中まで一緒に行ったっていいでしょ」 なんだかんだ言いつつ赤西より先に楽屋を去っていく仲間達。 食事組と田口が賑やかに出て行った後の楽屋は、静かで同じ部屋とは思えないな、と赤西は思った。 そんな中、楽屋の空気が変わったのをものともせずマイペースに鏡を見ている人物に目がとまる。 その人物は赤西の視線に気付いているのかいないのか、ひたすら鏡で髪型のチェックをしている。 そんなに頑張ったって大して変わりはしないだろう、といつもなら軽いツッコミを入れているのだが、この時の赤西にはそんな気も起きずひたすらその人物…上田竜也の行動から目を離せずにいた。 そのうち、自分のことが終わった上田は赤西をちらりと見て。 「お先」 と、たった一言だけ残して楽屋を後にした。 (…上田……) 相変わらず付き合いが悪いヤツだな、と赤西は思う。 雑誌などでも迷うことなく暴露しているが、上田のことは可愛いと思っている。 皆と一緒にからかうし、楽しい。 だが、それだけだった。 上田のプライベートは全く知らない。 それは赤西だけではなく、ほとんどのジュニアがそうだろう。 一度だけ疑問に思って、上田と付き合いの長い中丸に訊いてみたこともあるが、苦笑いでかわされてしまった。 それ以上は追求できず、そもそもそこまで知りたかったわけでもないので、そのままになっているが。 メンバーにさえ本当の姿を見せない、分厚い壁を作ってしまっている上田に、もう少し自分をさらけ出してくれてもいいのに、とは思う。 思うのだがどうすれば心開いてくれるのかなど赤西に分かるはずもなく、突如静寂の中鳴り響いた着信音にそれ以上考えるのをやめた。 『仁?』 「ミク?こっち今終わったんだ。これから行くよ」 電話の相手はこれから会う予定の『今日の女』。 そうだ、これから自分はこの可愛らしいお嬢様と会うのだ。 上田のことなんて考えるだけ無駄無駄。 赤西はこの短時間に自らの頭を支配した上田を無理矢理振り払って、いつものように遊びに行くことにした。 その帰りに、思いもよらぬ所であの人物の姿を捉えることになるとは露知らず。
始めちゃいました。赤西さんこんなんですみません。この段階ではミステリアスな上田さん。続きもがんばりまっす。 |
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