「タっちゃん……もう少し腰、上げて……」
耳もとに囁かれて、達哉は栄吉の首に腕を回すと、必死に腰を上げた。 無理な体勢だ。足がつりそうになるのを何とかこらえながらなので、どうしても良いようにはならない。
それでも、内部で暴れまわる肉と快感は良すぎて、キスで唇をふさがれていなければあられもない声を上げてしまっているだろう。
「ちゃんと、入ってる?」
聞かれるのに、がくがくと頷く。
「も……もっと奥…………」
今の状態でもかなり感じるが、貪欲な体がもっと先を求めている。なのに体勢が体勢なので、望むところにまで届かない。
「ごめん、これ以上無理……」
中間までをなんとか行き来し、即物的ではあるが、達哉のものに指を絡めて解放を促してやる。
焦点の合わない涙に滲んだ瞳が遠くを見つめながら眇められて、声はかろうじてこらえたものの「あ」と口を形作り、達哉は放った。
同時に、栄吉も――。
床にぽたりと落ちるものをぼんやりと眺め、放心している達哉を、栄吉は甲斐甲斐しく世話する。
した後では何もするのが嫌な達哉は、事後は全て栄吉のなすがままだ。
大きな人形遊びでもしているかのようである。
それでも、この人形は見ているだけでもかなりイイ。
削げたように細い腰も、そこから続く細く白い足も。
更に行為後の顔はそれだけで特上品のおかずになる。
薄赤く染まった頬に、涙に潤んだ熱っぽい瞳。
半開きの薄い唇からは、まだちょっと熱をはらんだ吐息が吐き出されている。
汚れた下肢を拭った後、制服のズボンを直して、栄吉は先に立ち上がる。
「どっち?」
「……栄吉ん家」
「夕食寿司だと思うけど?」
「良い家だな……」
達哉は笑うと、栄吉の首に腕を回す。
おぶっていけということらしい。
「タっちゃん、ガキみたいだ」
笑っておぶると、達哉は囁くように笑った。
「栄吉が俺をガキにしてるんだろ?」
「違いねぇ」
背負うだけで、背中に温もりが届くだけで、ドキドキする。
何度体を交わらせても、このドキドキは止まらない。
「俺達、永遠に初恋でいような」
思わず言った栄吉の言葉に、達哉は呆れたような吐息を吐いて。
「俺は早く熟年夫婦みたいになりたいよ……」
そう答えた。