「ってことで、ちょっと買い物出てきまーす!」
どんなにふざけていても、やっぱり戦いは真剣だ。
ということで、足りなくなったアイテム補充に女性陣。
「わり、俺はちょっと出てくる。旧友から連絡が入った・・・」
ということで、パオフゥのヤサで待ち合わせ。
ヤサ――隠れ家?
どっちでも良いや。
残されたのは二人。達哉と克哉。
二人は互いを見合わせると、照れたように頬を染めた。
「ふ、二人だな・・・」
あんだけ鬼畜っぷりを発揮していた兄、すっかり純情路線に切り替えた模様。それもこれも達哉が・・・。
「そ・・・そうだね・・・」
達哉も既に乙女。
あれだけ抵抗していたのに、今ではすっかり乙女な可愛さぶり撒いてる。
それもこれも克哉が・・・。
「と、とりあえず、お茶でも入れるか・・・」
「うん。俺、コーヒーが良い」
「判った」
既に勝手知ったる他人のヤサ。
克哉は熟知しているキッチンにてお湯を沸かすと、これは自分で差し入れたコーヒーメーカーでコーヒーをいれる。
「良い匂いだね・・・」
達哉が近付いてきて、キッチンに二人きり。「あ、ああ・・・」
「豆、なに?」
「ジャーマンブレンドだ」
克哉が答えると、達哉はくすりと笑った。
「らしいね」
「まぁ・・・」
ジャーマンブレンドは、なかなかに淡白なお味がよろしい、酸味と苦味の弱い豆である。
「苦いの、まだ、苦手?」
「甘党だからな」
「酒も駄目だっけ?」
「まぁ、適当にはな・・・」
「弱いし?」
「泣き上戸だし?」
言い合って、二人で笑う。
「もうちょっとだ」
「うん。待ってる」
達哉は唇を突き出す。
ちょん、とキスを送る克哉。まだちょっと照れくさいらしい。
「照れちゃ駄目だよ、兄さん・・・」
「・・・達哉こそ、照れるな・・・」
「俺、まだ18だから」
「18で未経験とは思わなかったけどな・・・」
「純情路線なんですー」
達哉はおどけて言うと、背を向けた。
「そうそう」
もう一度振り向いて。
「時間があるようなら、しない?」
誘うように唇を弓なりにそらす。
蠱惑の笑み。
「いいな・・・でも、そんなに時間があるか?」
「聞かれるくらいなら、別に・・・」
見られるよりはかなりマシだと思う。
ニュアンスは伝わったようだ。
「虫除けには良いかもな」
「兄さんのね」
「お前の、だよ」
達哉はくるりと背を向ける。
どちらにしろ狙ってる相手がいるのは知ってる。
舞耶とうららは、兄でも弟でもどっちでも良い様子。ただ、この二人の場合、兄だと即結婚に持ち込まれるから注意が必要。
警戒心は人一倍な達哉だった。
問題はパオフゥ。
どちらでも良い割りに、どちらにも攻め思考な男だから、やっぱり兄には注意が必要。
せっかく恋人になったのに、他の男に抱かれてるところなんて、見たくないしされたくもない。
かなり独占欲が強い達哉だった。
こうして誰かとお付き合いしてみると、自分の意外性に気付く。
こんなに俗物だったはずはないのに。
すっかり兄に頼りきって、罪やら罰やらが時々思考の向こうに消えてしまう。
幸せボケして使命も忘れないように。
一応気持ちは引き締めてる。
奥のソファでコーヒーつきの兄を待つ。
良い匂いは既にヤサ中に溢れてる。
「濃い目?」
カップを持って現れた克哉に聞くと。
「当然、薄めだ」
「やっぱり」
兄は甘党で、弟は辛党。お酒もばっちり。ただ、タバコだけはどうしても駄目だった。
「兄さんは?」
「苦いのは駄目だ」
「甘くしてあげるよ?」
達哉はにっこりと笑みの出血大サービスをしながら、克哉の口にコーヒーを含ませる。
「苦いじゃないか・・・」
「これから甘くするんだよ・・・」
隣あったソファに腰掛けた克哉の上に乗りあがると、唇を合わせる。
舌を絡ませて、角度を変えて。
「どう?」
離れた時には息が上がってる。
克哉は嬉しそうに笑うと。
「確かに甘いな・・・」
答えた。
「でしょ? もう一口?」
「いや・・・今度はミルクが飲みたい」
そっと触れるのは達哉の中心。
若い体は快楽に素直。既にちょっと硬くなってる達哉に指で悪戯をしかけると、淡く吐息を吐いて腰が引けた。
「逃げちゃ駄目だろ?」
「・・・ちょっと不意打ちだったから」
「じゃ、ミルクを一杯」
「そういう言い方・・・親父くさくない?」
「親父ですから」
おどけて笑った克哉は、そっと達哉のズボンのジッパーを下ろす。
隙間から潜り込ませた手を下着の下まで侵入させる。
直に触れると達哉がピクリと反応した。
「そんな中途半端じゃ・・・」
「脱ぐか?」
「うん・・・」
ウェストから手を入れると、尻を撫でながら布を下げていく。
空に晒された肌は白くて、扇情的。
言われるまでもなくソファの肘掛に頭を乗せるように横たわった達哉は、背もたれに片足を上げて克哉に開いて見せた。
「綺麗だよ、達哉・・・」
「嘘つき・・・」
「嘘じゃない・・・」
克哉は目前に晒された股間の、半立ちになったものを握ると、口に含んだ。
ねっとりと舌を絡ませると、達哉が鳴く。
「良い声だ」
なかなかに男心をくすぐってくれる。
口の中に手を入れるように、先端を爪で引っかきながら竿を舐め、輪を描くようにして包むと、ニ、三度上下させる。
「ん・・・んん・・・」
耐え切れない吐息をこぼしながら、既に潤んでいる瞳が泳いでいた。
「達哉・・・」
含みながら名前を呼ぶと、焦点の合ってない目が克哉を見る。
「愛しているよ・・・」
戯れのように囁く声に、達哉は頷いた。
開きっぱなしで竿を舐める口から、唾液が滴って落ちる。
達哉の股を濡らしながら後ろに流れていく唾液が、窪みに溜まっていくのを眺めて、克哉はするりと指を滑らせた。
どこもかしこも敏感になってる達哉は、それだけで切ない声を上げる。
「に・・・さん・・・」
普段からは想像も出来ないその声に、克哉の肉体も高揚してくる。
「達哉・・・良いかい?」
窪みを撫でる手が、内部に押し入ろうと入り口を撫でる。
刺激がダイレクトに伝わった達哉は、切れ切れに声を上げながら、頭を振り――。
指が入り口を撫でる度に、収縮するそこは、物理的よりも精神的に既に潤んでいた。
「達哉のここ、まだ綺麗だよ・・・」
何度かしたが、形の崩れがない。
するり。
唾液の助けを借りて中に忍び込んだ指は、しっとりと潤んだ肉に包まれ、触感的な刺激はないのに、克哉の心臓をドキドキと高鳴らせた。 兄弟なのに・・・感じる。
指だけでは足りない。
思うのは、克哉の方だ。
内部にしのばせる指を二本に増やし、指を広げることで内部を晒す。
竿を含んでいた口を寄せて、舌を肉の間に押し込んだ。
「あ・・・あぁ・・・や・・・」
柔らかく滑る間隔が、達哉を狂わせる。
指で押し開いた内部へ、舌の出し入れを繰り返すと、肉はそれを待ち望んだかのように収縮を繰り返す。
「達哉・・・感じてる・・・?」
「あ・・ぅ・・・に、さん・・・」
途切れた吐息交じりの声が、達哉の快感を確実に伝える。
もっと強い刺激がほしい。
そう思ったのは達哉の方だ。
快楽に震える体を起こすと、両足を持って広げる。
克哉の視線に全てを晒し――。
「入れて・・・兄さん・・」
潤んだ声で囁いた。
「良いのかい?
まだ十分に広がってはいない。
言外にそう告げた克哉に、しかし達哉は頷いた。
「大丈夫・・・」
ソファに両足を開いたまま乗せ、克哉の視線に全てを晒したまま、達哉は前鏡になり、自らの孔を指で開いて見せた。
「達哉・・・」
もうたまらなかった。
克哉は晒されたそこに、己の高ぶったものをあてると、一気に貫く。
「は・・・・あぁ!」
痛みか衝撃にか、高い声を上げてのけぞる達哉。
その背を支えて、克哉は緩く腰を揺らした。
「ん・・・・あ・・・あぁ・・・」
達哉は入れてからが感じやすい。
どこもかしこも性感帯になったように、爪弾けば声をあげ喜ぶ。
「達哉・・・」
両の乳首を指でこねれば、連動するように後ろも締まる。
何度も何度も繰り返して。
「う、ごいて・・・兄さん・・・」
緩い刺激ではもう満足出来ない。
引き絞るように告げた達哉の望みをかなえて、克哉は抽挿を開始する。
ゆるく深くゆっくりとしたストロークで。
「あ・・・ん、は・・・ぁ・・・に・・兄さん・・」
克哉の与えるリズムに合わせるよに、達哉は声を上げてよがる。
「達哉・・・」
掠れた囁きを返しながら、克哉は目で、耳で感じてる。
「達哉・・・もっと、声を聞かせて・・・」
「に・・・さんっ・・・もっと・・・深く・・・・・・」
整った相貌が欲にまみれて歪むのを見てすら、綺麗だと――克哉は腰の動きを早くしながら思った。
思って――。
「たつ・・や・・・っ・・・」
終焉は、唐突に訪れた。
「やったのか・・・」
ソファを見て呆然としたパオフゥ。
「すまん・・・」
ガビガビになったソファ。
「・・・せめて床でしてくれれば・・・」
これには達哉も済まないと思う。
「俺が・・・弁償する・・・」
思わず言った達哉に、きらり、とパオフゥの瞳が輝く。
「なら、俺と一度どうだ? 満足させてやるぞ?」
「それは嫌!」
きっぱり答えた達哉は、克哉に抱きついた。