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告白

 時間があまりにも足りないというのに、実力が足りないのよ、と言われては仕方なく――もぐった防空壕で、達哉は困惑していた。
 おかしい、確かに実力をつける為にこの防空壕に入ったはずだったのに、なのに、何故こんなことになっているんだ?
 達哉の目の前では、今――ジャンケンが展開されている。
 一体何の為に?
 それは、達哉に告白する順番を決める為に、である。
「おい、周防。お前は兄貴なんだから、遠慮するだろ? 近親相姦はまずいだろうよ?」
「冗談だろう? ここで引いて、みすみす他の誰かの手に落ちるくらいなら、僕が汚して一生囲うさ」
「囲うってよ・・・お前、大胆だなぁ・・・」
 つーか、汚すって何? 囲うって・・・。
「ほんじゃ、行くぞ。じゃーんけーん・・・」
「ちょっと待ったぁ!」
 うららが止める。
「一応確認しておきたいんだけどぉ」
「おう?」
「達哉君には、一応全員が告白出来るって条件よね? これは順番を決める為だけのものよね?」
「そうだな・・・そういうことになるか」
「でももしよ? 最後まで告白しないうちに、誰かにOK出ちゃったら、後の人はどうなるの?」
 大人達は真剣に考え込んでいる。
 つーか、時間ないんだけど!
 達哉は怒鳴りたいのだが、大人達の切羽詰ったというような異様な迫力の前で、言葉にすることが出来なかった。
「一応は最後まで告白を聞いてもらえるようにしておけば良いんじゃないか?」
 克哉の案に、誰もが頷く。
「それなら文句はないわね」
「そうね。二人以上選ぶことも出来るし!」
「やーだ、マーヤ、それって3○とか?」
「うららったら・・・そんなはっきり言ったら恥ずかしいじゃない!」
 ぱちーん、舞耶がうららの腕を叩く。
 すっごく良い音がした。
 つーか、3○って何?
 達哉は既に混乱が混乱を呼び、遠い世界に行きかけている。
「反対に、みんな断わられたら、どうするんだ?」
「そりゃもう・・・みんなで同時に襲い掛かればノープロブレムって感じ?」
 うららは恐ろしいことを言っている。
「成る程・・・5○・・・なかなか楽しそうだな・・・」
 克哉は喉の奥で笑いながら達哉をちらりと見やる。
 ぞぞぞぞ、達哉の背筋を悪寒が走りぬけた。
 ひ、一人選ばないと俺は身の破滅だ。
 混乱してても、抑えているところは抑えてる。
「にしてもだな、お前達には達哉にぶち込むものがないだろうが。どうするんだ?」
「やぁだ、パオったら、はっきり言っちゃってぇ。ねぇ、マーヤぁ」
「ねぇ、うららぁ」
 女性二人はニヤリと笑う。
「知ってる、パオ? 女同士ってついてないでしょ? あんのよ、ちゃんと挿入する為の玩具。それ使えば問題ないって!」
「便利よねぇ。女でも男の気分を味わえるんだから。ま、感じないのがちょっとねぇ・・・」
「ぐりぐり当たって良いって言ってたわよぉ」
「そーなのぉ!」
 達哉は更に大混乱。
 俺、男だよな? なんで史上最強の女役にされてるんだ、女性にまで!
 だ、誰か助けてー!
 達哉は既に蒼白になっている。
「ほんじゃま、ジャンケンするか」
「おーけー!」
「じゃーんけーん、ぽい!」



「はい、全員告白終了! では、せーの!」
『お願いしまーす!』
 一斉に手が、達哉に向かって差し出される。
「ほ、本当に選ぶの?」
 おそるおそる尋ねる達哉。
「今更何言ってるんだ。どうせ、彼女もいないんだろ? 良いじゃねーか、ここにいる間適当に楽しめばよ」
「ねぇ」
「そーよね!」
「そうだぞ、達哉」
「うー・・・だけど、どうして俺、男なのに・・・」
 言外に、女性相手の場合のみ、男役やりたい、と告げる。
「駄目よぉ。子供できちゃうもの。それとも達哉君、結婚してくれるの?」
「そ、それは・・・」
 別に達哉は困らない。困らないが、きっとこちら側の達哉が困るだろうと思うと、容易に返事が出来かねる達哉だった。
「なんだ、達哉。迷ってるのか?」
 克哉が尋ねる。
 そう――迷ってる。確かに迷ってる。
「そりゃそーだよなぁ。こんだけ上物が四人も抱かせてくれって言ってるわけだからなぁ・・・」
 いや、そこに悩んでいるわけじゃないから!
 とは思ったが、どうしても口には出来ない達哉。
 その内、焦れた大人達から不穏な言葉が飛び出した。
「ならさ、日替わりで良いんじゃない?」
 綺麗で清純そうな顔して言ったのは、舞耶だったりする。
「ひ、日替わり!」
 驚く達哉を蚊帳の外に置き、大人達は再び顔を寄せ合う。
「成る程、日替わりか・・・問題はないな」
「あるじゃねーか。前日の残りが中に残ってたらどうするんだよ。毎日終ってから風呂に入れる保障はないんだぞ?」
「だよねぇ。ダンジョンにいると、どうしても日常生活は二の次になるし」
「する場所も選べない場合が多いか・・・」
「他人の精液でぐちゃぐちゃするなんて、ゴメンだからな」「なら、間に私達を挟めば良いじゃない? ほら、私達の方ははりぼてなわけだから、中になにがあろうが問題ないし」
 なんてことを、話してるんだ!
 特に克哉。
 あんたは俺の兄貴だろー!
 怒鳴りたいのに、言えない。
 今ここで逆らったら、速攻5○が慣行されそうな気配が漂っている。
「ふむ。じゃ、順番としては、まず僕、天野君、パオフゥ、芹沢君。間隔は最低でも半日開けて。これで良いかな?」
「意義なーし!」
 話し合いは終ったらしい。
 達哉に克哉が近寄り。
「最初は僕ということになった。楽しみだな、達哉」
 にっこり。
 ああ、笑顔が恐い。
 こんな兄に誰がした!
 というより、何でこんなことで悩まないとならないんだー!
 達哉の絶叫は誰にも聞こえない。

 普遍的無意識の空間で、ニャルラトホテプは呟いた。
「間に俺も入れて欲しいな・・・」
 それに呼応するように、フィレモンも。
「私も・・・」
 呟いた。

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