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秘書:生きにくい此処

関係を隠すのは、酷く難しい。
それが、あの男との間のことならば……。
王者然と周囲に人を侍らせるのが当然なあの男の傍で、だから己をさらけ出すのは酷く面倒なのだ。
だけど、それを、当のあの男は、理解もしていない……。



デリバリーサービス受付に、週に一度必ず入る電話がある。
配達から戻ったクラウドに、それを告げるのはティファの役目。
「丁度一週間だね」
笑ったティファの表情は、どこか憂いを帯びている。
「……来たのか」
「うん……」
「そうか……」
伝言を受け取るべき、部屋に向かってコルクボードに張られたメモの中を探す。
――ルーファウス=神羅。
既に見慣れたその依頼を見つけて、クラウドはそのメモをはがしてポケットにしまった。

嫌ならば、やめてしまえば良い。
依頼なんて全てこなせるわけじゃないのだから、メモも捨ててしまい、電話一本で断れば良いのだ。
だけど、出来ない。
体の奥に染み付いた記憶が、それをさせてくれない。
記憶にはない昔、あの男と素肌で触れ合ったことがあるらしい。
その肌に刻まれた記憶の断片が、会わない、という選択肢を許してくれない。
「行くんだよね?」
いつの間にか背後に立っていたティファに、多少の驚きを感じつつも頷く。
「仕事だからな……」
言い訳に似たその言葉に、言い返す言葉はないのか。ティファはゆるく笑って立ち去っていった。
仕事――などであるはずがない。
あの男から仕事のようなものを請けたのは、最初に呼び出されたあの時だけ。
再会するきっかけになった、三体の意識体とあいまみえた、あの時。
それ以後は、仕事などでは顔を合わせていない。
週に一度の呼び出し。
向かって顔を見れば、思い出すと己を憎み殺せそうな、淫蕩な時間を過ごすだけ。
それが仕事だというのなら、クラウドは身売りでもしていることになるのだろう。
否。金は受け取っていない。
となれば、あれは紛うことない互いの気持ちに交換になるのだ。
――ありえない!
意識があの男を、好きではない、と言い募る。
逆に、無意識があの男の全てを求める。
意識と無意識の間で、己のアイデンティティが崩れて溶けそうになる。

ダン!

クラウドは拳で壁を打った。
音に驚いたのか、面倒を見ている子供二人が部屋に走りこんでくる。
「大丈夫?」
マントを引かれ心配そうな子供達の顔。
「……ああ。なんでもない」
答える声は震え、出来れば直ぐこの場から逃げ出したい気持ちに駆られる。なのにそれすら出来なくて……。
「大丈夫だから、部屋に戻っていてくれ」
仕事があるんだ。
誤魔化すように告げたクラウドに、子供達は了承を伝え戻っていく。
苦く唇を噛んだクラウドは、そのままティファの制止も聞かずにバイクに飛び乗った。



「それで、ここに来たのか?」
面白そうに男は笑った。
クラウドをソファに誘い、その真正面に腰掛けて。
以前は布で隠していた顔を晒し、以前からは比べ物にならない柔らかい瞳でクラウドを見つめた。
「単純だな」
からかうような声音が、しかし優しくクラウドを包み込む。
「そんなに追い詰められるなら、ここに来なければ良い。反応されなければ、私にはどうにも出来ないのだから」
優雅な仕草で入れたお茶を差し出されるが、クラウドは受け取らない。
諦めたような吐息と共にローテーブルに置かれたお茶からは、上等らしい上品な匂いが立ち上ってきていた。
「……呼ばなければ良い」
「どうして?」
「それなら、俺は反応しなくても良い」
「呼ばれても反応しなければ良いだろう?」
実に単純なことなのだ。
クラウドは原因を咎める。
ルーファウスは反応を咎める。
単純な構図は、心の向きが加わるだけでその単純さを失ってしまう。
「おいでクラウド」
ルーファウスは呼ぶ。囁くような声で。
クラウドは痛みを抑えるような表情でルーファウスを見つめ。
「呼ぶな……」
祈るように答える。
けれど……。
「無理な相談だ。何せ私は、クラウドが好きなのだから……」
恋を示され戸惑わない人間はあまりいない。
クラウドは自分の気持ちは知っていた。知らなかったのは、自分に向けられる感情の全てだ。
驚きの色を浮かべるクラウドの瞳に微笑みかけて、ルーファウスは一歩を踏み出せるように右手を差し出す。
「おいで、クラウド」
もう一度。
クラウドは、全身が甘くしびれたように溶けそうな感覚に陥った。
ゆるりと上がる右手が、ルーファウスの伸ばされた右手に重なる。
「好きだよ、クラウド」
麻薬のように脳裏をしびれさせる声に、自身の自我すら溶かされて、クラウドは引き寄せられた右手に逆らうことなく、ルーファウスの胸に顔を埋めていた。



自ら男の腰を挟み、腰を振っている。
内に収められた男の熱は、正気の全てを取り去り狂気の世界へクラウドを誘った。
響く水音。
耳を塞ぎたくなるような、己の甘い吐息。
くちゃり……。
響く度に、あ、と開かれたクラウドの唇から、己のものとは思えない高い声が上がる。
どこもかしこもが過敏になった肌のところどころに朱の印を刻まれ、固くしこった蕾をつままれる。
「ぁ、あぁ……」
溶ける。溶けてしまう、何もかも。
ルーファウスの強い力で内に突き込まれる度に背がしなり、引き出される度に空疎感を感じて引き止めたい衝動が襲った。
限界まで広げられた襞は熱に絡みつき、淫らな程にルーファウスの欲望を高めていく。
「良いよ、クラウド……」
囁きが注ぎ込まれると背筋を怖気が駆け上がり、ぶるりと、戦士にしては細い体が震えた。
「も……や、だぁ……」
甘い声が空間に響く。
微笑んだルーファウスも、欲情にまみれた顔でクラウドの媚態を眺め――。
「そろそろいこうか……」
言って、戯れに揺らめかしていた腰を、明確な意図を持ってグラインドさせる。
「ふぁ、ぁ、ぁぁッ……あーーーーーっ」
数度の後、切なげな声を上げて達したクラウド。
その際のきつい締め付けに、ルーファウスも内に放ち……。

「愛しているよ……」
低い囁きに、捉われた自分を、クラウドは哀れに思った。



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