「幸せになれよ」
唐突にゼルに言われ、スコールは困惑する。
「何が?」
「娘を嫁に出す気持ちって、きっとこういうのだよな」
スコールは思い切り眉をひそめる。ゼルが何を言いたいのか、まるでつかめないからだ。
「ゼル。何か会話に関連が見られないみたいなんだが……?」
「そうか?」
ゼルにとっては、会話は順当なものらしい。
ますます困惑したスコールは、一番疑問に思った部分を聞いてみることにした。
「嫁って誰だ?」
「スコールだろ?」
「…………悪いが、俺は女になった覚えはない」
「女だろ? 立場的には」
「………………どういう意味だ?」
と尋ね返しつつ、意味なんて判りすぎる程に判ってる。
ある意味で言うなら、スコールは立場的に女だ。
そう――ラグナとの関係においてのみ。
だが、それはゼルの知らないことであって、おおっぴらにしても良い事実じゃない。
要するに、ゼルが知っていて良いことじゃないのだ。
なのに。
「え? セックスしてないのか?」
「!?」
「恋人だって言うから、絶対にもうしてると思ったのによ……」
スコールの頭は一瞬にして真っ白になる。
「な、なっ」
「じゃ、娘を嫁に出す気持ちもちょっと早いってことか……」
呟くゼルに、スコールは掴みかかる。
「何故知っている!」
「は?」
「何故俺とラグナのことを知っている!」
そう怒鳴ったことで、ある意味ではゼルの認識を全肯定したということに、スコールは後になってから気づいたのであった。
「そっか。そおまで噂は広まったか」
エスタ大統領官邸にて、通信を繋げるラグナの姿がった。
相手はグランスールのスコールの相談役――ウォード。
文字打ちで送られた内容は「ラグナの言う通り、スコールとラグナの新たな関係をグランスール内で噂として流した」というもの。
背後からその通信の様子を眺めていたキロスは溜息を吐き――。
そろそろ向こうから文句の通信があるだろうことを見越して予備の通信機の前に。
同時にスコールから通信が入り――。
珍しくも泣きそうな顔で通信を入れてきたスコールの、キロスを見て放った一言目が。
「暗殺しても良いか?」
というものだった。