最初に見たのは、自分では想像も出来ないくらいの――大笑いだった。
「よ、スコール」
声をかけられて、スコールは振り向いた。
「ゼル?」
「おうよ。って、何そんなしかめ面してんだ? 何か問題があったか?」
ここバラムガーデンの最高指令。それがスコールの今の肩書きである。
補佐にキスティスとシュウという二人の女性が付き、その下にゼル以下魔女大戦と名づけられた戦いに参加した面子が並ぶ。
階級は皆SeeDで上下の差はなかったが、スコール以下魔女大戦に参加した者、そして学園内カードバトルでスコールに挑んだCC団は特別待遇処置を受け、現在では指令系統に属する部署にいるのだ。
中でもゼルは実働部隊の部隊長となり、戦闘時にはスコールの片腕的な役割をする。
「今のところ際立った問題はないな」
「だろうな。平和なもんだぜ」
実際、魔女の脅威が薄れた大地は平和なものだった。
事後処理にエスタのモンスターの一掃をしたくらいで、SeeDにも滅多な依頼はこなくなっている。
ガーデンの運営費が多少心配ではあったが……。
「で、平和なもんなのに、スコールの顔は平和じゃないのな?」
「いや……個人的な問題だ」
「親父さんとか?」
面白そうにゼルが言うと、スコールはこれ以上ない、という程に嫌そうな顔をした。
「を? 熱烈ラブコールは続いてるってか?」
「熱烈ラブコールなんてもんじゃない。そんな……良いもんじゃない」
「そっかぁ? ガーデンやめてエスタに来いって散々言われてるんだろ? 学園長もスコールの好きにすれば良いって言ってくれてるんだし」
「それは俺に、奴のところに行けってことか?」
「いや、そういうんじゃねーけどさぁ……実際に親がいるなら、それにこしたことはないんだし、これまで一緒にいられなかったんだから、少しは甘えてやっても良いんじゃないのか?」
「冗談はやめてくれ。今更、親なんて……」
ゼルは肩をすくめると、ぽん、とスコールの腰を叩いた。
「じゃ、俺に甘えてみるか?」
「は?」
「だって、スコール、今、すっごく誰かに甘えたい顔してるからさ」
スコールは思わず自分の顔を触る。
「どこがだ?」
「いや……なんつーか、疲れたような、寂しそうな、そんな感じ?」
「気のせいだろ?」
「気のせいなら、よかったんだけどねぇ……」
ゼルは苦笑する。
「で、俺の部屋にする? お前の部屋?」
スコールはじっとゼルを見つめて。
「……俺の部屋にしよう……後が面倒だろ?」
「楽しませてもらうんだし? 別に後始末なんて平気だから、じゃ、俺の部屋にしようか?」
粗野でいて、実は細かな気遣いに溢れてるゼルの言葉に、感謝しつつスコールは頷いた。
汗にまみれ、体内で蠢くゼルの熱を感じながら、どうしてこんなになってしまったんだろう、自分は――とスコールは考える。
昔は人の温もりなんて、必要とも思えなかった。
なのに今は、ふとした瞬間に人肌が恋しくなる。
きっと――父という存在を知ってからだ。
「何考えてるんだ?」
ぐい、と腰を進め、ゼルが尋ねてくる。
返事をしようとあけた口からは、明確な言葉ではなく、喘ぎにまみれた艶声がこぼれるだけ。
「っあ……ゼ……ゼルっ……」
「もっと名前呼んでくれ……イイから」
「ぁふ……ゼルっ……ゼ……っああっ!」
過敏になりすぎた雄を握りこまれ、軽くこすられるだけで、面白いくらいにスコールは乱れる。
気を良くしたゼルは、同時に角度を変えて中をかき混ぜ、スコールを鳴かせる。
普段は取り澄ました美形のスコールは、こんな風になってしまうとどんな人間よりも怪しい魅力を放出してゼルを狂わせる。
いや、ゼルだけじゃないのだろう。アーヴァインもサイファーも、あの雷神ですら、スコールにおぼれかけていると告白している。
何時もなら切れ長の鋭い目が、細められその目尻から輝く雫をこぼす。
雫を吸おうと身を乗り出したゼルの上半身が傾き、挿入の角度を鋭くする。
「ぁっ……」
余程良かったのか、すぼまりがきつく収縮し、ゼルの欲をきつく締め上げた。
「ちょ、スコールっ……」
こらえ切れなかった。
ゼルは望まざるままに熱をスコールの内部に放ち――衝撃でスコールの雄に爪を立てたゼルの行為によって、スコールも熱い飛沫を放出する。
引き連れた声をあげ、どくどくと熱を放ったスコールは、焦点を失った瞳を空ろにさまよわせると、ぐったりとベッドに沈み込んだ。
ゼルもその隣に沈み込む。
「参ったな……」
言わずにはいられなかった。
こんなにあっけなく放ってしまうなんて……。
だるい体に鞭うってティッシュを取りスコールの腹に散った飛沫を拭ってやる。
スコールは焦点を取り戻した瞳をゼルに移し。
「済まない……」
と小さく謝った。
「なんで?」
「……また、相手を……男の体なんて、つまらないだろう?」
ゼルは曖昧に笑うと、スコールの頭を抱き寄せた。
「疲れてるんだろ? 眠れよ……」
「ああ……」
スコールは温もりを求めるようにゼルの胸に擦り寄ると、丸くなって眠りに入っていく。 寝つきは悪い方だと言っていたが、疲れるだけ疲れれば眠れるらしい。
「参ったな……」
ゼルは再び同じ言葉を口に載せる。
他の誰にたがわず、おぼれそうな自分を自覚していた。
「俺、お前のこと、好きなんだぜ?」
頬を撫でながらそんな風に言う。
すると、まだ眠りに落ちきっていなかったのか、茫洋とした目がゼルを見つめ。
「俺は……最初にお前に会った時――笑っていて」
「ん?」
「俺も……楽しくなって……笑った……」
すぅ、と目が閉じる。
ゼルは、呆然とスコールを見つめ――次の瞬間、思いきり頬を染めた。
「それって、告白……?」
これまでスコールからあまり良い評価をもらっていないと思っていたゼルは、頬を紅く染めたまま、スコールの頬にキスを落としたのだった。
本当は、下校のお題だったのですが……。
何故かエッチが入り、なかったことに……。
ああ……何故!?