一人きりの宿の部屋。
明かりを落とした部屋の隅、窓際に設置されたベッドと、その壁との境界の隙間に隠れて、エドはしきりに手を動かしていた。
両足の狭間、その最も暗いところで、白い手がうごめいている。
「ん……ぅは…」
荒い呼吸の中、漏れ出でるのは高く引き攣れた喘ぎ。
もう片方の手は、更に奥まった暗がりで、怪しい動きを繰り返す。
「ん……んぅ……」
普段のエドからは考えられないような、妖艶な声。
ふと、何の戯れたか、曇っていた空が晴れ、月の明かりを運ぶ。
部屋の隅といえども、窓に近いその場所で、光源を得たばかりに、闇に隠れていたものが露になる。
まだ幼いエドの砲身。そしてその上を乱らに這いまわる白い小さな手。
十五というのには、一般的から見ても小柄なエドは、全身がこじんまりと小さい。
だからその手も、子供ように小さく頼りないものだ。
それが、まだ大人になりきれぬ自身の欲望を扱いているのだ。
なんて淫らな光景だろうか?
射精感の高まったエドは、体をずらして半ば寝転ぶ。
足をベッドの上に上げ、もう一方の手がしきりに出入りする陰りを現わし、挿入角度を変える。
後少し。
思った時だった。
「兄さん?」
唐突に部屋のドアが開いて、アルが顔を覗かせる。
エドは小さい悲鳴を上げて、ベッドの下にもぐりこんだ。
隠れても、独特の匂いは残る。
幸いかどうか、アルには嗅覚が殆どないのが、救いといっては救いだった。
「兄さん?」
部屋の中に姿の見えないエドを探して、アルが方々を歩き回る。
出来るなら、このまま出ていってもらいたいと願いながら、エドは必死に息を殺す。
しかし。
「見つけた。そんなところに隠れてどうしたの?」
アルが、ベッドのシーツをめくり上げて、下を覗きこんでいた。
当然、返事なんて出来はしない。
見つかった恐怖と驚きに、硬直するエドを不審に思い、アルがベッドを回りこんで、先ほどまでエドが座りこんでいたベッドと壁との隙間にやってくる。
「ああ、成る程……」
したりげに呟いたアルは、ベッドの下に見えていたエドの足を引き寄せ――。
「してたんだね? 兄さん」
囁いてきた。
「……ごめん」
「何をあやまることあるのかな?」
声からすると、きっとアルは笑っているのだろう。
誰よりも心優しいアルだからこそ、の対応だろう。
「俺……」
肉体がないアルは、思春期といえど一人ですることも出来ない体だ。
そしてそれは、ただ一人の――というわけではないが、エドも罪の刻印を刻まれた出来事の結果であった。
「兄さんは優しいね」
アルは言う。
「俺は……」
「気にしなくても良いから。でもそうだな……僕に済まないと思うなら、させてくれる?」
「え?」
「どうせ見ちゃったし、兄さんが乱れるところとか見たいし?」
エドは呆然とアルを見つめる。
これまで一人ですることは何度かあったが、誰かにしてもらったりとか、直接的な交わりというのは、持ったことがない。
後ろに指を入れてほぐすのも、無理矢理見せられた本で学んだ知識で、前立腺を刺激し、短時間でイく為に得た行為だった。
驚き硬直するエドに、その了承を得ずして、アルはエドの両足を引きずってベッドの下から連れ出すと、ベッドの上に、まだ小さい体を横たえた。
「アル?」
まだ今1歩理解できていないかのように呆然とするエドに、表情のない鎧の顔を見せて
こういう状況でははじめて触れる兄の両足を抱え上げた。
「アル……俺……」
「手で……しかして上げられないけど、良いよね?」
言葉と共に、鎧の指が幼い欲望に触れる。
射精寸前まで高まっていた体だ。砲身はねっとりと濡れ、アルの鎧の指に細い雫をチラした。
「ア……ル…………」
一瞬だけ忘れていた快感が、再び身の内を焦がす。
エドは他人の手――それも、鎧の指に、細かく体を震わせた。
優しい愛撫とはいかなかった。
力加減がわからないのか、アルの手は随分と強くエドの砲身を握り締め、先端を指の先端部でなぞる。
「ん……んんっ……」
エドは口を己の腕で塞いで、声を耐えようとするが、自分でするのとは違うリズムで攻められ、耐えきれぬ声を上げる。
「良いよ兄さん、我慢しなくても」
穏やかなアルの声も、どことなく色をつけて掠れ始める。
押さえなくても自ら足を開き、アルの愛撫を全身で受けとめるエドを愛しく思い、アルは卑猥に濡れた後ろの蕾に指を伸ばす。
入り口を軽くマッサージした後、鎧の指を忍びこませた。
「はぁっ! ああっ!」
異物感に驚いたアルが、大声を上げる。
随分と普段のエドとは違う声に、アルは吐息を零し、呟いた。
「良いよ、兄さん……綺麗だよ……」
うっとりと呟いたアルの、前後の刺激に流される。
「あっあっ、あああーっ!」
呼吸が一瞬停止する。
焦点の合わない眼が、中空をさまよって、エドの砲身から白濁が放たれる。
アルの鎧の半身に勢い良く白濁を飛ばし、エドは――気を失ったのであった。