「あ、中尉!」
エドワードは喜色満面で、遠く視界に入ったホークアイに走り寄っていく。
「あら、久しぶりね」
振り向いたホークアイは、常からは想像も出来ない程柔らかな笑みでエドワードを迎える。
「うん。もう二ヶ月にもなるもんな……」
本当はもっと早くに戻って、ホークアイに会いたかった――とエドワードの正直な瞳が物語っている。
その横で、この二人を不穏な目で見ている男が一人。
存在をすっかり忘れられている――というか、無視されている、ロイ=マスタング東方司令部司令である。
「鋼の……君……」
「今日は私服なんだね、中尉! すっごく似合うよ」
濃紺のベージュの縦ラインの入ったスーツ。
体にぴったりのそれは、パンツルックであったが、ホークアイのストイックな雰囲気に良く似合う。
「あら、ありがとう!」
「中尉は美人だから、何でも似合うんだろうな。今度、違う私服も見たい!」
子供らしく甘えっぷり満載のエドワードの声に、ホークアイは笑顔満面に頷く。
「エドワード君さえよければ、ウェディングドレスを着ても良いのよ」
「本当!」
さり気に結婚式まで決まりそうな勢いである。
「ちょっと待ちたまえ!」
ついにロイは怒声を上げた。
同時に振り向くエドワードとホークアイ。会話を邪魔されたためであろうか、二人共酷く冷気のこもった瞳でロイを凝視している。
「き、君達ね……私を置いて何の話を……」
正直、二人のそんな瞳は、怖かった。
声が震えそうになるのを何とかこらえ、ロイは己の存在を無視した二人に愚痴をぶちまける。
が――。
「あら、いらっしゃったんですか? 気が利きませんね?」
「なぁ! 楽しく会話してるのに、邪魔すんな、つーの!」
言外に、さっさとどっかに消えてくれ、と言われ、ロイは思い切りへこむ。
「君達……」
そんなロイにも、小さな救いが……。
ぽん、と叩かれた肩に置かれた手を追って行くと、そこには鎧姿のアルフォンスの顔が。
「本当にごめんなさい。でも、僕も兄さんの幸せを奪うのは許しません」
救い――などとはなかった。
「おう、丁度良かった、アル。そいつ、どっかに連れてってくれない? 俺、中尉とデートしてくるから!」
「うん! 判ったよ!」
「じゃ、よろしくね、アルフォンス君」
にこやかに立ち去っていくエドワードとホークアイ。その姿は、二人とも似たような金髪であった為か、仲の良い姉弟か、年の離れた恋人同士のようにも見えた。
ロイはアルフォンスの鎧の胸に顔を埋めて呻く。
「鋼のは、私のことが好きだったんじゃないのか!」
「何を今更……兄さんと付き合っておきながら、中尉と思い切り浮気していたのは、どこの誰ですか!」
「そ、それは……」
「兄さんはそれで人間不信になっちゃって、やっと普通に戻りかけてるんですから! 邪魔しないでください!」
「……はい……」
そこを責められたら、ロイには何も言えない。
子供だ子供だと思っていたから、浮気の一つや二つはばれないだろう、と思っていたロイ。外でかちあうのを恐れて、司令部内で密かに浮気していたのに、まさか見られるなんて思いもしなかったのはロイがうかつだったからだ。
その後、中尉に実はエドワードと付き合っていたということがばれ、思い切り半殺しにされたのは、まだ記憶に新しい。
「アルフォンス君……鋼のは、何時か私の下に戻ってきてくれるだろうか?」
「それは、無理でしょうね。兄さん、最近本気で中尉が好きらしいですから」
それが正しい恋愛の方向。
ロイは、がっくりと項垂れ、情けない声でエドワードに呼びかけるしかないのであった。
おまけ
正しい恋愛?
それは、いかような???
「さ、エドワード君。両足を開いて、してみせて?」
にっこり笑うホークアイに、エドワードは頬を染めて言う通りに。
剥ぎ取られた下半身はむき出して、期待に震えた下肢のものは、既に硬く立ち上がっている。
先端から先走りの雫を零したそれは、酷く淫猥に見えて、しかしホークアイは満足気に頷いた。
「良いわ、エドワード君。さ、触って」
「うん……」
エドワードは大またを開いてホークアイの視線の前、己のものを握り、上下させる。
どんどん硬く膨らむそれを見ながら、ホークアイの方はエドワードの股間に顔を近づけ、指一本でエドワードの根元から後ろへと指を滑らせた。
したたる先走りで濡れたそこ。
でもまだちょっと足りない。
「ローションを使っても良いかしら?」
「……うん……」
荒い呼吸の下、エドワードは変な声が出ないように気を使いながら頷く。
ホークアイは、用意しておいたローションを己の右手に落とすと、それを五本の指全部に塗りつけた。
再び滑らせたエドワードの後ろ。断続的に襲ってくる快感の為だろう、ヒクヒクと収縮を繰り返すその入り口に、指を当てる。
爪の先で入り口を引っかき、エドワードを泣かせると、するりと指先を潜らせる。
「ぁ……あッ」
高い声を上げたエドワードの、己を慰める手が止まる。
ホークアイは薄い微笑を浮かべたまま、エドワードのその昂ぶったものを口に含み、同時に後ろに納めた指で、エドワードの官能を高めていくのだった。