に、と笑った顔が、胡散臭いとか意地悪そうだ、とか。
言いたいことは沢山あったのだけど、触れられるともう駄目で。
エドワードはふにゃりと傾いだ体を抱き上げられて、最近申請したら許可された――とにこやかに言われた、司令専用仮眠室に連れ込まれてしまう。
軍の備品にしては酷く柔らかいスプリングのベッドに下ろされて、唇を合わせられたら、脳裏が霞んだ。
「するの?」
キスの合間に尋ると。
「駄目かい?」
駄目なんて言わせない声が尋ねてきて、エドワードは頬を紅く染めた。
それでも口に出して「駄目じゃない」とは流石に言えなくて、変わりにロイの首に腕を絡めて引き寄せると、耳元で吐息が笑う。
「可愛いよ、エディ」
囁かれてふるりと震えた小さな体は、次の瞬間には荒々しい熱に飲み込まれていた。
事後というのは、とても恥ずかしい。とエドワードは思う。
まだ熱を残した体だとか、熱を飲み込んで乱れた記憶だとか、そこかしこに残るだるさとか。
全てが最中を示していて、それを全てロイに見られていたのか、と思うと、いたたまれなくなる。
そういう姿もかわいいよ、と言われてはいるのだが、本当に可愛いだけなのだろうか?
カエルのように足を広げて熱を飲み込む瞬間だとか、どちらかというと、なんだかみっともないような気がするのだけど。
「何を考えているのかな?」
ふってきた声に意識を戻されて、エドワードは困ったように笑う。
「えっと……恥ずかしいな、って」
「何がだね?」
「……してるときのこととか……」
一方的に乱れて声を上げるのはエドワードの方。
ロイは欲望なんて感じさせない目で、じっとエドワードを見ている。
「ちっともはずかしくないだろう? 何が恥ずかしいのだね?」
「えっと……だって、俺ばっかり……」
「おやおや」
呆れたような吐息。
また子供っぽいと笑われるのだろうか、と怯えたエドワードに、ロイはそれを判っているかのように首を振る。
「違うよ、エドワード。している最中に乱れているのは君だけじゃないし、そういうことで悩んでいるらしい君は、子供なんかじゃない」
「でも……」
「君よりもね、私の方が、随分と乱れているのだよ」
「え? でも……」
そうは見えない。
言いたげなエドワードに、ロイは更に困ったように嘆息する。
「もっと自覚を持ちなさい。どんどん綺麗になる君に、焦っているのは私の方だ。まだ行為に負担がかかると判っているのに、君を見ると求めずにはいられない。私の方がこそ、君に乱されているのだよ」
頬を滑る手に、くしゃりと顔を歪めながら、エドワードは首を傾げる。
「俺、綺麗になってる?」
「ああ。勿論だとも」
「俺のこと、もっと好きになった?」
「会う度にね」
断言と等しい答えに、エドワードは嬉しそうに笑うと、ロイに擦り寄った。
「俺も好き!」
いかにも子供っぽいその仕草に、しかし素肌の胸の感触がそれを裏切って、ロイは苦笑する。
まだまだ小さいが弾力のある小振りな胸は、エドワードが動く度にロイの肌をくすぐる。
年の割りには成長の遅い胸だ――とは思うのだが、そろそろ付けさせた方が良いかもしれない。
それでなくても……。
「エディ」
「ん? 何?」
ロイの腕の中で見上げてくるエドワードは、非常に愛らしい。
本人は自覚なしで、共に旅をしているアルフォンスなどはハラハラしているらしいが、その愛らしさはロイの前でだけ晒されるものではなくなりつつある。
「明日、下着を買いに行こう」
「へ?」
「君もそろそろつけた方が良いよ。ブラジャー」
「え、ええ?」
むにゅり、と胸を揉むと、にやりと笑うロイ。
エドワードは慌ててロイから離れ、胸を隠すと。
「ロイのエッチ!」
叫んだ。
「今更だよ、エディ」
「今更って……」
「だってもう、私達はこんなこともしているのだから……」
ロイは言うと、するり――と胸から滑らせた手を足の狭間に埋めた。
ロイを飲み込む為に自ら潤いを吐き出したそこは、抵抗なくロイの指を飲み込んでいく。
「やっ!」
逃げようとした腰を押さえ、引き寄せると、軽く二・三度指を出し入れし、ついでとばかりに胸の頂を口に含むと、途端に甘い吐息がエドワードの口から零れ落ちた。
「行こうね、エディ」
念押しに対して、返ってきたのは切なげな喘ぎだけだった。
不思議だ――とロイは思う。
欲目なしに見れば、恐らくエドワードの肉体になど、己が感じるはずがない、と思う。
なのにこの、貧相と言っても過言ではない体に、酷い欲望を感じる。
まだ幼い体を、思うがままに蹂躙し、一晩中でも抱き続けたい。
もっと泣かせ、二度と旅立つことなど出来ないように。
過ぎた快感に泣くエドワードは、必死にロイに追いすがりせわしなく呼吸を繰り返す。
細い体でロイを喜ばせようと頑張る様が、とても愛しくて。
「エディ……」
呼ぶ名前の間に、何度も突き上げる。
腰を押さえつけ、揺さぶる、という表現そのままにエドワードを嬲るロイ。
小さくてもその存在を主張するむき出しの胸が、ロイの動きにつられるように、フルフルと揺れていた。
翌朝。衝撃がエドワードを襲っていた。
「た、立てない……」
腰に力が入らず、ベッドから降りようにも、起き上がることも出来なかった。
救いを求めるようにロイの胸に縋り、まだ心地よい眠りの中にいるのを、必死に呼びかけ、起こす。
「どうしたんだい?」
寝起きのだるさを全く感じさせず、はっきりした声でロイが答えるのに。
「立てなくなっちゃった……」
不安そうに言うエドワード。
ロイはいまだ一糸まとわぬまま隣にいるエドワードを抱き寄せ。
「では、立てるようになるまで、こうしていよう」
腕の中に囲った。
互いの温もりに包まれ、まどろむのは休日の一時。
しかし――。
そのまま再び眠りの中に吸い込まれたロイとエドワードは、先日の約束をすっかり忘れており、結局エドワードの初ブラジャー体験は、次に繰り越されてしまうのであった。