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一年目

※パラレルです。

あれから――。

 考えたくない日常が、そこに転がっている。
 一年前。それまでは、平和だった毎日。
 きっと今は――何もない。

 イーストシティに辿り着いた辺りから、なんだかまずい空気はあった。
 エドワードは何時ものように、駅を降り立った途端に東方司令部に連絡を入れて、何時ものように過保護な大佐からの迎えを待っていた。
「なんか、空気って言うか、雰囲気って言うか、変じゃない?」
 アルフォンスが不安そうに声を上げる。
 確かに。
 何時もだったらこの駅前辺りは人で賑わっているのに、今はまだ昼間だというのに、人っ子一人見えない。
 よくよく観察してみれば、方々の店も閉まっているようだ。
「何かあったかな?」
 そういえば、と思い出せば、連絡を入れた時の、大佐の様子も何か変だった。
 小声で「何故今なんだ……」と呟いていたようにも思う。
 今――?
 流浪の旅人状態でも、方々の情報は各司令部を通じて手に入れられる状態だ。漏らした情報はなかったはずなのに?
「あ、来たよ」
 アルフォンスの声で我に返る。
 遠く一本道の向こうから、砂煙を上げて驀進してくる車が見える。
「す、凄い無謀な運転だね」
「一体誰だろうな?」
 兄弟を迎えに来る当方指令部の面々といったら、大佐直属の部下ばかりだ。
 だが、彼らはいかに焦っていようと、事故を誘発しそうな程の乱暴な運転はしない。反って危ないからだ。
「あれ?」
 アルフォンスが声を上げた。
「大佐――じゃない?」
「ん?」
 エドワードは目を凝らしてフロントガラスの向こうを見る。
「マジか……」
 光に反射するフロントガラスの向こう。微かに見えるのは確かにロイ=マスタング大佐の顔だった。
 にしても、あんなロイの顔は見たことがない。
「何をあんなに慌てているんだろうね?」
 アルフォンスが言った時だった。
 左方から物凄い風が襲いかかってきた。
「何!?」
 慌てて視線を向けた先、黒尽くめの男が兄弟に向かって手を伸ばしていた。
 勿論、友好の為の握手を求めたわけじゃない。
「あの人……」
「錬金術師!?」
 手の平に描かれた練成陣。黒いそれが、禍々しい風を放っている。
「あれが原因なのか?」
 ちらりとロイの車を見ながらエドワードは呟く。
 男はゆっくりと兄弟に近付いてくる。
 ――どうする? やるか?
 エドワードが考えた一瞬後――。
「乗れ!」
 叫んだ声に意識が向く。
「逃がさないよ……」
 低く掠れた声で囁く男から逃れるように、エドワードとアルフォンスは車に乗り込み、同時に車は猛スピードでその場を離れたのであった。

「は? 切り裂きジャック!?」
 東方司令部にて、エドワードは男のことを聞いた。
「それって、なんだか、大衆文学だかなんだかにあった、あれ?」
「似て非なるものだな。あれは事実で、大衆文学は創作だ」
「けど、創作にしたって、基がないと書けないかもしれないだろ? 実は前に似たような事件があったりとかしたんじゃない?」
 エドワードの鋭いツッコミに、もうスピードの運転で疲れたロイは肩を竦める。
「全く鋭いな、鋼の」
「じゃ?」
「あるにはある。だが、似て非なるものだ」
「どういう事件なんだよ?」
 興味をそそられたか、勢い込んで尋ねるエドワードに、仕方ないな、と苦笑しつつもロイは資料を手繰る。
「……昔……と言ってももう半世紀以上も前のことらしい。この東の果て――境界ギリギリの場所に、一つの小さな村があったそうだ。そこで、連続殺人事件がおきた」
「連続殺人?」
「そう。被害者は主に女性や子供。年齢問わずの大虐殺で、当時の警察機構はこの犯人が巧妙に手がかりを残すもので、捜査は混乱し、なかなか犯人の特定に至らなかったそうだ」
「じゃ……結局犯人は見つからなかった?」
「いや――犯人は見つかった。だが、事件発生から一年後で、尚且つ死んでいた」
「ちょっと待て。何時死んだ?」
「そうだな……そう思うのが当然だろう」
 ロイは頷き、資料を繰る。
「犯人の遺体が見つかったのは、最後の事件が起きてから半年後。何故犯人と断定されたのか、は、側に遺書があり、それに犯行の全てが詳細に記されていたからだ。勿論、警察機構が知りえて情報公開していなかった、犯人以外は知らない情報も、そこにはあった」
「なんだ。じゃ、普通の事件じゃん」
「ところが、この事件の奇妙な点は、遺体が白骨化していたことだ」
「は?」
「遺体は白骨化し、当時は白骨から人体を特定することが出来なかった為、結局誰が犯人だ、という断定は出来なかった」
 ロイは資料を閉じると机に放り投げる。
「なかなか楽しい事件だろう?」
「楽しいって言うか……」
 不気味というか。
「白骨化って、半年で出来るものか?」
「そう、それが問題だ。勿論、方法がないわけではないが――時代を考えると、その方法は限られてくる」
「……錬金術……って可能性もあるよな?」
「そう。その可能性を考えたが……あの地域は今でこそ何もないが、当時はのどかな農村で、とてもじゃないが錬金術を学ぼうという特殊な人種はいなかったとされている」
 解決したように見えて、その実、疑問だけが残る事件だった。
「んで、その事件が切り裂きジャックの創作の元になったと……」
「そうと断定は出来ないが、それに似た事件ではあったな」
「で、今?」
「そう。全く奴のおかげでまともに外も歩けない」
「だから大佐が迎えに来たんだ?」
 この東方司令部内部には、大佐しか戦闘系の錬金術を使える人間がいない。
「そういうことだ。感謝してくれよ、鋼の」
 真面目くさって言うロイに、エドワードは笑う。
「感謝してるよ、大佐」
 笑って、椅子に腰掛けたロイの元に近付き、伸び上がって口付ける。
「これ、お礼」
 にんまりと笑うエドワードに、ロイは苦笑する。
「随分と安いお礼だな」
「じゃ、どうする? メシでもおごろうか?」
「いや、ナマモノが好きだからな。ここで食するのもまた一興」
 ロイの手が、エドワードの背中を滑って腰に。
「するの? ここで?」
 驚くエドワードに、ロイは頷く。
「鍵はかけてある」
「準備良いね……」
 呆れたエドの服の合わせを解きながら、楽しそうにロイは笑った。

 東方という分岐司令室とはいえ、部下を数人持つ大佐ともなると、その持てる机も立派なもので、エドワードが一人乗ってそれでも余るその机に上体だけを伏せて、エドワードは背後から貫かれていた。
 足が中空に浮かぶ程に、つながり1本で体を支えられている。
 固定されていないから、突き上げられると汗に濡れた上半身が、机の上を前後に泳ぐ。
 最初は声を堪えていられたエドワードも、奥をきつく抉られるともう駄目で、なんとか縫いとめていた意識が快感にぶっ飛び、今は艶声の垂れ流し状態。
 隣の部屋に聞こえるのではないか、と危惧していたのは、意識が途切れる瞬間までで、深く抉られる度にその意識のかけらすら霧散した。
「鋼の……」
 低く押し殺した声が、背中から降ってくる。
 腰を支えていた両手が、前に回り両胸の突起を摘み上げると、エドワードは切なく声を上げた。
「た……さ…………もっ……ぁあ…っ……」
 揺さぶられるリズムのままに、呼吸が乱れ声が途切れる。
 胸の突起を嬲られるごとに奥がしまり、ロイの砲身を締め上げる。
 久し振りの情交に、エドワードは夢中になった。
 同時にロイも。
 内壁の上面を、先端で抉るように突き上げると、切ない声がロイの名前を呼び始める。
 いくら言っても、正気では名前を呼ばないエドワードの、乱れた時の特徴だ。
 飾りを嬲っていた手を腰に戻し、一方をエドワードの両足の狭間に伸ばす。
 幼い欲望から滴り落ちる雫を救い取りながら、揉みしだくように擦って――。
「ぁ……あぁっ……だ、駄目……っ。いくっ……!」
 直接的な刺激に、エドワードは屈服した。
 同時に、きつくロイのものを締め上げ。
「ん……っ」
 低い呻きを上げ、エドワードの中に――。

 久し振りだった。一ヶ月程間の開いた情交で、エドワードの体は疲れきっていた。それでなくと長時間電車に揺られた後だ。
「大丈夫か? 鋼の」
「まぁ……」
 答えるエドワードの声は、平気とは言えない程に擦れている。
 これでアルフォンスの前に戻ったら、声が嗄れている理由を説明しなくてはならない。
「今日は私の家に来ると良い」
「で、またすんの?」
「出来れば」
 くそ真面目に頷いたロイが、らしくなくて面白く、エドワードは声を上げて笑う。
「じゃ、そうしようかな? アルのことは任せた。仕事、終るまで、ちょっと寝るから」
「待ちたまえ。そのままで寝るのは、目の毒だ」
 言われて服を差し出されて、エドワードはもう一度笑った。

続きはまた今度。
ちょっと長めのオリジナル傾向過多な話。

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