出会ったのはリゼンブールで。
初めては、東方司令部、トイレの中だった。
あまり色気のある始まり方ではないと思う。
だけど、余裕がなかった。
「鋼の?」
呼びかけれられて、思考から戻る。
「何?」
そっけない答え方になったかもしれない。
隣で眠っていた、一般的に見れば美形の部類に入るらしい、ロイ=マスタング大佐。
この若さで大佐は早すぎるらしいから、もしかしたら、汚い手でも使ったのかもしれない。
どっちにしろ、エドワードにはあまり関係のない話だ。
「余韻はやはり、楽しませてはもらえないのかね?」
疑問系でくるのが大人のいやらしさだ。
別に、余韻なんて自分で好きに楽しんで良いと思うのに。
「俺は楽しんでるよ」
十分。
いかにまだ後ろに他人のイチモツを食んでいようが、それでも楽しめる余韻はある。
抜け、と言うのは簡単だったが、ここで一言言ってしまえば、せっかく終った激しい運動が、再度始まる可能性が高く、今日はこれから資料館周りをする関係上、できれば体力は温存しておきたかった。
「私は物足りない。鋼のはしている最中の楽しみもあまり与えてくれはしないからな」
「そーかい」
「それで、足りない分を補いたいと思うのだが?」
言われて、エドワードは思わず上官の顔を振り向いてしまった。
「あんた……」
「ん? 何かね?」
「もう、朝だぞ?」
「そういえば、そろそろ外が明るくなってきたな……」
なんてとぼけた会話だろうか。
一晩中楽しまれてしまったはずなのに、足りないと言い張る上官と、朝っぱらからか?
「あんたは……本当にムードがないね」
「おや、その言葉を君から聞くとは思わなかったな」
「誰からなら納得なわけ?」
「そうだね――アルフォンス君なら、まだ……」
「アルには手を出すなよ!」
怒鳴るのに力を込めて、中のものに気付く。
強く締め付けすぎたのか、ロイは顔をゆがめ、エドは頬を赤く染めた。
「まさか、君から煽られるとは思わなかったな」
「煽ってない!」
「さて、ではもう一戦」
「するなぁ!」
懲りないエドは再び力を込めて。
ムクムクと大きくなる中のものに絶句。
そうしている間に、抜け目のない上官にのしかかられて――。
「しないなんて選択肢は、あんたにはないわけか?」
尋ねたエドワードの言葉は、ロイの唇に吸い込まれてしまった。
さんざっぱら鳴かされたエドワードは、朝陽を顔にあびてうんざりしていた。
これで本日の資料館周りは中止だろう。何しろ腰が痛くて立ち上がれない。
「ゆっくり休んでいたまえ」
涼しい顔で衣類を整えている、痛みの元凶に、一度二度蹴りを入れてやりたくなる。
「なぁ、あんた。挨拶は?」
「ん?」
「普通、朝を一緒に迎えたら、おはようの一言くらい言い合うもんだろ?」
不貞腐れたエドワードは、言わなくて良い一言を言い放ち。
「成る程」
頷いたロイは、エドの包まる布団を跳ね上げると、驚き硬直しているエドワードの両足を目一杯開き。
「おはよう」
言った。
「どこに挨拶してるんだよ!」
「おや、気に入らなかったかね? ではもう少し濃い挨拶を――」
ぱっくり。
「あんたぁ!」
が。
「……あ……っ……はぁ…ん……」
文句は直ぐに他の言葉にとって代わる。
ねっとりと、本人曰く濃い挨拶を述べたロイは、唇を拭うと満足そうに出て行った。