「嘘だろう……?」
ロイは愕然と呟いた。
悩みに悩んだ「自分はホモ」宣言後、いざ告白相手を美味しく頂こうと剥いたところ、信じられない事実が目の前に――。
「君は……女の子だったのか?」
呆然と呟くロイに――ホモ宣言後、即告白を受けて剥かれてしまった――エドワード=エルリックは「はぁ?」と不信の目を向ける。
「俺が女なわけないだろ? 何を見て言いやがる」
「って言っても……」
ロイの目前に晒された肉体は、明らかに女性のものである。
それは――多少……いや、かなり未発達な部分は多々あれども……。
「目、腐ってるんじゃないか? それとも俺が、男にしては未発達なのを馬鹿にしてるのか?」
「いや、そうじゃなくてね……って言うか、何故未発達な部分が小声なんだい?」
「うっせぇ!」
どげし、とロイの腹を蹴るエドワード。
「俺は別に未発達なわけじゃねぇ! ただ、周りがそう言うんだから仕方ないだろ!?」
「そ、そうかい……げほ……」
エドワードは本当に自分が女の自覚がないらしい。というか、自分を男と信じて疑わないらしい。
目の前でぱっくりとひらいた足がそれを証明している。
ロイは思わず見入って、腹の痛みと相まって困ってしまう。
当然パンツまでしっかり脱がせていたものだから、開いた足の間には……。
「げほげほ。えっとだね……君はあくまで自分を男と主張するようだが、君――トイレは男性用を使っているのだろうね?」
「ああ。使ってるぜ? けど、母さんが、俺は小さいから個室を使いなさいって言ってたから、専ら個室」
「ほぉ……では風呂はどうだね?」
「風呂? って何?」
「大衆風呂だとみんなで入るだろう? 君は、男性用を使っているのかね?」
「いいや? 俺、なんだかって肌の病気で、みんなと一緒に入っちゃいけないことになってるから、専ら部屋風呂」
「……成る程」
では、直接的に男女の肉体の違いを理解する機会は、全くなかったということになるのだろうか?
いや、待て。
「君……アルフォンスと一緒にお風呂に入ったことはあるのかい?」
「アルと? いや、ないな」
「何故だい?」
「だから、大衆風呂に入れないのと同じ理由」
「成る程……」
どうやら徹底して男として言いくるめられたらしい。
しかし何故?
「ちょっと待っていたまえ」
ロイは言うと、エドワードを待たせて部屋を出た。
近く電話に寄り、何時も彼らが東部に来た時には常宿とする宿に電話を入れる。
「アルフォンス=エルリックをお願いします」
宿の交換手に頼み、暫く。
「はい? 大佐ですか?」
さすがに良く判っている。
エドワードがロイの元にいるということで、電話を入れるとなるとロイだと思ったところがアルフォンスの聡いところだ。
「君は、鋼のが女性だと知っていたのかね?」
聞けば。
「ええ! 兄さんが姉さん!?」
驚いている。
「本当に知らなかったのかね?」
「はい。でも、そういわれてみれば、兄さんってかなりおかしい育ち方してるんですよね」
「おかしいとは?」
「えっと、肌に異常があるから一緒にお風呂は入れないとか――夏でも長袖ばかり着せられてたし、トイレも個室しか使っちゃいけないことになってるし……」
「成る程……」
「それに……」
「なんだね?」
「ある年齢になったら、出血するけど、病気じゃない、って母さんが……」
「……」
それは、恐らく生理と呼ばれるもののことだろう。
「どうもありがとう……」
ロイは言って、疲れるアルフォンスとの電話を切った。
なんだか良くは判らないが、事実エドワードは女で、しかも自分のことを純粋に男と損じている。そして、アルフォンスもそう思っていた。
となると――真実を知っていそうなのは……。
再び電話を上げたロイは、リゼンブールのピナコ=ロックベルの電話番号を調べて――。
「はぁ。ばれちまったのかい」
との明快な言葉。
「ご存知でしたか。では何故エドワードを男と?」
「それがね……」
沈黙するピナコ。
次に出てきた言葉は、突飛な一言。
「なんつーか、あの夫婦は変わっていてね」
「変わってる?」
「まぁ、なんと言うか。夫婦で賭けをしたんだよ」
「賭け――ですか?」
「そう。最初の子供が男だったら、父親が名前をつける。女だったら母親が名前をつける。それで村を巻き込む大喧嘩までしてね」
「はぁ……」
「んで、生まれたのは見ての通りのエドだったわけなんだが……父親は納得しなくてね。どうも自分が賭けに負けるなんてことは考えてなくてね。で、母親が入院している間に、勝手に娘の性別を男で出して、名前まで勝手に決めていたってわけだ」
「ほう……」
なんだか馬鹿らしいような話だ。
「んでね、そうなると母親の方も意地になって、で、エドは男として育てられたわけだ」
「はぁ……」
つーか、そんな賭けと意地の為に、娘の人生狂わせて良いのか?
思ったロイは一般人だった。
「しかし、エドの性別に気付いたってことは、あんた……」
「あ! あー、これにて失礼!」
ロイは慌てて電話を切る。
詮索されたらまずいじゃないか。男の子だってわかって、恋に落ちて、更にエッチを慣行しようとしていたなんて。
とにかくエドワードが一応女だという証明は出来た。あとは、本人に自覚させるだけ。
それが一番難しいような気もするが――何しろ欲望は全開で満々。しかも、男の子だと思っていた相手が、女の子。
ホモになっちゃったよ……と悩んでいた日々の愚かしいこと。
ホモだと、絆に心配があったりした。何しろ、男でもはらませて側におきたいくらいに、あの生意気な少年――いや、少女が大好きだったので。
これで実際にはらませることも出来るじゃないか。
と喜び勇んで部屋に戻ると、エドワードはべっどの上で大股を開いて呆然としていた。
「大丈夫か? 鋼の?」
「あ? ああ。大丈夫。で? 俺がちゃんと男だってわかったか?」
首を捻るエドワードは、こうしてみると凶悪に可愛いことに気付く。
前から可愛い奴だといじめ倒していた――というか、互いにイジメあっていた仲――なのだが、女の子だと判ると、余計に可愛く見えるのは何故?
ロイはエドワードの隣に腰掛けると。
「やっぱり君は、女の子だったよ」
と告げた。
「はぁ? まだ言ってんの?」
「なら、君は私を男だと思うかい?」
エドワードは唐突の意味の判らない質問に、うん、と答えた。
「では、私の体と自分の体を、見比べて見なさい」
ロイはそう言って、服を脱いだ。
一枚一枚落とされていく先、案外と鍛えられた肉体が露になって、エドワードはそれに見惚れた。
が――。
「あれ? 何で胸が膨らんでないの?」
エドワードは首を捻る。
ロイの胸は、当然のようにぺったんこ。
なのに自分の胸は――。
ぷにぷに――と柔肉を指1本で押すエドワードを見て、ロイは生唾を飲み込んだ。
更に脱ぎ続けて――。
「あ!」
エドワードが再び声を上げる。
「大変だ! 股間が腫れてる!」
慌てて股間の腫れてるものを掴むエドワード。
「う……」
実際には腫れているのではなく、男にあるべきものが、勃起しているだけなのだが、エドワードにそれが判るはずもない。
が。
「は、早く病院行った方が良いって!」
言いながら、ぐいぐいと握り締める、その手の感触が気持ちよくて――。
「余計に腫れてきた! しかも、体液が!!!」
血と等しいとでも思っているのだろう。
エドワードは先端からにじみ出た液が何かを知らない。知らないで先端を指先で押さえて、しかも根元をきつく握る。
当然、エドワードにしたら、止血の要領で当然の行いをしているだけだ。
だが、されるロイにしたら、それは紛れもない刺激で。
「エドワード!」
我慢の限界を迎えたロイは、必死に己のイチモツを握り締めるエドワードを、ベッドに押し倒した。
「これは腫れてるわけじゃない」
「え! そうなの!? でも体液が出てきてるよ!」
「それはね、君のここに入るとき、君が痛くないように――」
ロイはエドワードの両足の狭間、その秘園の形をなぞり、閉じた割れ目をこじ開けると、中に指1本を滑り込ませた。
「えっ、なに!?」
ビクリと体を震わせて、初めての衝撃に耐えるエドワード。
寄った眉と、薄く開いた唇に、とんでもない色香を感じるのは、きっと気のせいではないはずだ。
ロイはそんな恋人の小さな変化に喜ぶと、まだ乾いて動きを阻むそこに、唇を寄せた。
まだ一度も花開いたことのない、花蕾を舌で転がし、唾液の潤いに助けを借りて未開の地への侵入を果たす。
エドワードの方といえば、初めて感じる何かに翻弄されつつあり、訳が判らないままに吐息を乱していた。
脳髄が痺れるような感覚。それは、ロイの舌が動く度にせりあがってエドワードを惑わせる。
なんだろう、これは……。
ゆっくりと体の中を出入りする細いもの。
それに……。
「や……っ、ああ……」
自然に声が零れてしまう。
「可愛いね」
薄い胸を波立たせ、ただ必死に覚えのない快感を追うエドワード。
そんな姿に、良い年をした大人が溺れてる事実。
ロイは唾液と愛液でしとどに濡れたエドワードの狭間に満足げな笑みをこぼし、体勢を入れ替えるべく起き上がった。
腰掛けた足の上にエドワードの細い体を抱き上げる。
「何?」
前戯だけで疲れてしまったエドワードは、ぐったりとされるがままで。
「男女の体は、ぴったりとはまるように出来ている。それは判るね?」
「……良く、わからない……」
エドワードは、無意識のうちに母からの教えを守り、これまで人体の不思議について考えたことはなかった。
人体練成には、男女の体の差なんてものは関係なかったから、人体を構成する成分、その構成式のみに知識を深めていた。
「なら、君の身をもって知ると良いよ」
ロイ入って、エドワードの体を落としていく。
「え?」
狭間に当たる熱いものに、エドワードは怯える。
「な、なに?」
「腫れてたものだよ」
「え? あ、あぁっ!」
ズドン、と、してもいない音がしたような気がした。
それだけ衝撃が激しかったのだ。
「ほら、ぴったりと合わさっただろう?」
体内に埋まっていく熱い肉に、エドワードは翻弄されつつ、頷いたのだった。
「それで、自分が女性だってことは納得出来たのかい?」
シーツの海の上、小さな恋人を抱きしめつつ、ロイは訪ねる。
背中を向けて眠りの中におちかけていたエドワードの意識が、その声に多少浮上する。
くるりと振り向いたエドワードは、ロイに向かい、その頬を染めると、コクン、と頷く。
そのまま、自分とは違う、力強い胸に擦り寄って――。
「大好き……」
小さく可愛く呟いた恋人を胸に、満たされた眠りの中に入っていくのだった。