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トレードマーク

エドワードのコートが赤いわけ

「え? 兄さんのコート?」
 エドワードが、その本人証明であるかのように纏う、赤いコートについて、東方司令部ではちょっとした憶測が飛び交っていた。
 背に紋章――フラメルというらしい――を背負い、布が厚く形式が多少違っていたら、どこだかの騎士団のような出で立ちだ。とにかく、目立つ。
「赤いコートなんて、ある意味目立って目立ってしょうがないんじゃないか?」
 ハボックが言うのには、黙っていても目立つ外見をしているのに、それ以上目立ってどうするのだ、というところだったが、アルフォンスは苦笑して首を振った。
「目立つにこしたこと、ないんです」
「それは何故?」
 どうしようもない雑談を――と、最初は呆れて見ているだけだったリザも、仲間に入ってくる。
「ほら、兄さんって、小さいじゃないですか」
 実の弟の爆弾発言に、彼を囲んでいた大人達は揃って、開け放たれたドアの向こう――隣の部屋にいるエドワードを同時に振り向く。
 どうやら隣の部屋の主――ロイとの話しに熱中しているらしいエドワードは、気付いていないらしい。
 過剰反応の地獄耳も今はお休み中らしく、ニコニコ笑っている。
「イーストはそうでもないですけど、セントラルとかになると、人が多いでしょ? 普通に歩いていてもはぐれそうになるし。まさかこの年で手を繋いで歩くわけにもいかないから、目立たないと……」
 ああ、と大人達は同時に頷く。
「要するに、目印だと」
「そういうことです」
 にっこり、アルフォンスは頷く。
「それでなくても、もう数回はぐれてるんですよ。でも、あの赤いコートのおかげで、直ぐに見つけることが出来るんです」
 ということは、コートを赤にしろ、と希望したのは、アルフォンスの方なのかもしれない。
「でも、お前の身長なら、ああまで目立たなくても直ぐに見つけられるんじゃないのか?」
「うーん。最初はだから、黒のコートだったんですよね。でも、兄さんって……人に埋まっちゃって見えなくなっちゃうんですよね……だから」
 てへへ、と笑うアルフォンスには、当然のごとく悪気はない。
 ないが……。
「それって、言いすぎじゃ……」
「そうですか?」
「それに……聞こえたら、暴れるんじゃ……」
 ちらり――もう一度見た隣室に、エドワードの姿はなかった。
 びくり。
 怯えた一堂は、その時恐ろしい事実に気付いた。
 同室の壁。そこに寄りかかって話をする彼らを見る、ロイと――エドワードの姿を。
 苦笑しているロイとは違い、エドワードはうつむいてその表情は見えない。が、肩の辺りがぶるぶると遠目で確認出来る程に震えている。
「え、エドワード?」
 ご機嫌を取るがごとき、呼び慣れない名でエドワードを呼ぶハボック。
 エドワードはハボックの呼びかけにやっと顔を上げると、明かに怒り狂っていると判る引きつった笑みを浮かべた。
「お、俺は……気にしないぞ……うん。大丈夫……」
 言ってる側から声が震えている。
「も、もう、大人、だからな、あーっはっは!」
 既にヤケ状態であるらしい。
「そうだよね。兄さんはもう大人なんだから、小さいなんてことぐらいで怒り狂う程、尻の穴も小さくないよね!」
 最後の爆弾は、無邪気に黒いアルフォンスから投下された。
「だーれーがー、死ぬまで成長期が来ない、ミラクルドチビかぁぁぁぁぁぁ!」
 そして、地雷は景気良く火花を上げた。

 後日――。
 一人だけ無事にエドワードの攻撃を避けたアルフォンスに、軍部一堂から、目立つ服でなくても、人込みにてはぐれたエドワードを、簡単に見つけられる方法が提案された。
「え? 人込みでチビって言うんですか?」
 驚いたようなアルフォンスに。
「絶対に見つかるぞ!」
 そこかしこに包帯を巻いているハボックが言い募る。
「あははは、そうかもしれませんね。でも、きっと被害が出ますよ。そしたら僕、ちゃんと東方司令部の人からこうしろ、って言われましたって言います」
「そ、それは……」
 せめてもの復讐に、自分達の目の届かないところでエドワードを暴れさせてやろうと思った当方司令部一堂。が、見事な返り討ちにあってあえなく撃沈。
「勘弁してください……」
 消沈した一堂に言われ、アルフォンスは晴やかに笑う。
「就職難ですもんね。再就職は大変ですよぉ!」
 結局のところ、兄弟には叶わないのだ。誰も……。

おまけ

「因みに、アルが尻の穴が小さいだの言った後のこと、覚えているか?」
ある時ハボックに言われ、アルフォンスは小首を傾げた。
「ええ。覚えてますけど……それが何か?」
「いや、お前それ、絶対覚えてない。つーか、聞こえてなかったのか?」
「何がですか?」
「大佐だよ、大佐!」
ぐるーりと円陣を囲んだ部下一同(勿論、ホークアイも含む)は、こそこそ(一応)小声で、懲りない雑談の最中。
「エドがその後直ぐに暴れたから、殆どの人間は聞いてなかったかもなぁ……」
感慨深げにハボック。
アルフォンスは意味ありげなその言葉に、さらに首を捻り。
「一体何を言ったんですか?」
「あのな……」
更に顔を寄せ合った部下一同+アルフォンス。
「あの後大佐な……」
ぽつりと呟いたのだ。
――いや、鋼の尻の穴は、随分と小さいと思うが……。
シーン。
「それってさ……大佐、少なくともエドの尻の穴を見ている――もしくは、使っている……ということにならないか?」
爆弾発言であった。
ブルブルと震えだしたホークアイとアルフォンス。
やがてそれは、ガタガタと音を立てる程のものになり。
状況に怯えだした部下達が、椅子を引いて自分の机に戻ると同時に。
「大佐ぁ!」
アルフォンスの絶叫。
二人は執務室に飛び込み、一言。
「そんな卑猥なことを、エドワード君にさせたのですか!」
「兄さんのお尻を見た。もしくは使ったっていうのは、本当ですか!」
後はもう、何も口に出来ない程の阿鼻叫喚。
「ま、待て、命だけは……」
情けなく部下と部下の弟に命乞いをする上官(大佐)と、思うがまま銃をぶちかますホークアイに、激しい練成の光。
恐らく照らたエドワードも加わっているだろう。
そんな部下の想像は、ゆったりと執務室から出てきたエドワードに裏切られた。
「た、大将?」
てっきりと怒っていると思われたエドワードの表情は普通で。
呼びかけに答える表情は、微笑みですらあった。
「ん?」
「あ、あの、あれ……」
部下達が同時に指さした執務室を振り向いて、エドワード。
「ああ。あれね。ま、好きにやらせて良いんじゃないの? 二人とも鬱憤がかなり溜まっているようだし」
「いや、そうじゃなく……」
鬱憤とかそういう問題じゃないような気がするのだが……。
しかし、エドワードのこの落ち着きよう。
「大将……もしかして……」
「ん?」
「本当に尻の穴……使われてるのか?」
果敢にも尋ねたハボック。
エドワードはじっとハボックを見ると、肩を竦めた。
「知ってるのかと思ってた」
「は?」
「結構前からだから。みんな知ってるかと思ってた。知ってるから、俺が大佐を尋ねてる時、邪魔しないんじゃないの?」
「え?」
それは……もしかして……執務室で……。
「俺、結構声とか出ちゃう方だからさ。恥ずかしいなぁ、とか思ってたんだ。でも、誰も何も言わないからさ。親切だなーって。でも、知らなかったんだ」
この言葉を聞くや、部下一同も立ち上がった。
「突撃ー!」
ハボックの声を合図に、執務室に飛び込んでいく部下一同。
はてさて、部下+アルフォンスの連合軍に、ロイはどうやって対処するのか。
エドワードは笑って、勝手にキッチンを使い、人数分のお茶の支度を始めるのだった。

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