怪しい薬
嘘だ、冗談だ……としか思えなかった。
だって、そんな馬鹿なことがあるなんて、そんなこと。
けれど、実際に事は起こり、紛れもない事実として、ここにある。
「やっぱり、海野先生からもらった、あの薬――なんだよな」
啓太は呟いて、呆然とベッドに座り込んだのだった。
事の始まりは、先日の放課後に海野の詰める生物準備室に向かったこと。
呼び出しの放送がかかり、啓太を名指しで呼んだ海野は、生徒会室で手伝いの最中だった啓太が走ってきたのを笑って迎え。
「疲れたでしょ? はい、これ」
と小瓶を渡してきた。
良くある――薬局や駅の売店などで売っている、滋養強壮とかそういうタイプの茶色の瓶で、開けた時の臭いもそれっぽかったから、疲れてる啓太を心配してくれたのかな? 程度に思い、何の警戒もせずに一気に飲み干したのだった。
海野は最後までニコニコと笑っており、啓太が飲み干した瓶を、何故かビニールに入れて冷蔵庫に入れていた。
一体何なんだろう? とは思ったが、その時は何もなかったので、そのまま過ごしてしまった。
「そういえば、あの時もおかしかったよな」
飲み終えた瓶を冷蔵庫に入れたあと、用件も言わずに「もう帰っても良いよ」と言われた。
普通、用事があるから呼ぶだろうが? と思ったが、相手は海野だし、そういうこともあるかもしれない……と勝手に納得して生徒会室に戻ってしまった。
そして一晩過ごし――。
「どう見ても……女……だよな……」
啓太は鏡の中を見つめ、ぼよん、と主張する胸を見る。
それ程大きくはないが、男の時分に比べると明らかに膨らんでいる胸。そして、なくなってしまった――成長途中のシンボル。
前々から立派とはいえなかった体格だったが、より細くなった前進。しかも……。
「なんか、丸くないか?」
肩のなだらかなラインだとか、前にはなかったものだ。
そして……。
「ぱ、パンツが下がってくる……」
細く絞られた腰。
「なのに、ズボンがお尻にひっかかる……」
丸みを帯びた尻。
当面の問題としては……。
「制服が着れない……」
そして、授業の時間は迫っていたのだった。
2006/07/08
女体化10のお題