それは、宇宙の底にあるおとぎの国…。
荒野に夢、街に暴力があふれる、ボンクラ達の理想郷…。
その荒野を旅する男と女…。
一人は絶望、一人は希望を見つめ荒野の果てに旅を続ける。

 

山なお高い森の中次の町へと旅をする途中のヴァンとウェンディ。
頭上には高い木々が光をさえぎり昼でも薄暗い。
しかも、わずかに見える木々の隙間から見える空もどんよりと暗く
今にも降り出しそうな気配だった。
「…ねえヴァン。次の街までどのくらい?」
空を心配そうに見上げながら自分の前を肩を落としてダラダラと歩いている
ヴァンへ声をかけた。
「……あー、さあなぁ」
振り返りもせずいかにも面倒くさいという感じに答えるヴァン。
「そう…」
空を見るとさっきよりも空が曇ってきて今にも雨が降ってきそうだった。

ポツ…

ウェンディの頬に雨粒がひとつ当たるのをきっかけに大きな雨粒がパタパタと
二人を雨で濡らしていく。
「きゃっ!」
いきなり降り出した雨にびっくりしたウェンディはいつも持ち歩いているトランクから
折りたたみ傘を取り出すとあわてて差す。パッと開いた赤い傘が降り出した雨を遮る。
もう一つトランクから黒い傘を取り出すと前を歩くヴァンに差し出す。
「ヴァン!濡れちゃうよ」
「…ほっとけ」
ヴァンはどんどん酷くなっていく雨の中でも気にせず歩き続けている
振り続けている雨でもうタキシードがしっとりと濡れてきている。
「ほっとけるわけないでしょ!ヴァンもうこんなに濡れてるし!」
ウェンディが黒い傘を開いてヴァンの前に回り傘を突き出す。
その様子に眉根を寄せて面倒くさそうな顔をするヴァンだが、じっと見つめるウェンディの
視線に負け
「ちっ……面倒くせぇ…」
しぶしぶ傘を受け取り歩き出した。


ザァ……ザァ…


昼過ぎから降り出した雨は夕方近くになってもやまず次の街の影さえ見えない
2人は森の街道にうち捨てられていた小屋みつけ雨宿りをしていた。
「ふぅ…よかったねヴァン。雨宿りする場所があって」
トランクから取り出したタオルで髪を拭きながら小屋を見回している。
ヴァンの足なら数歩で奥までいけてしまうほどの小さな何も無い小屋だった。
あるのは古ぼけた暖炉だけ。
「ああ…」
ヴァンは暖炉の前に屈み、火をつけようと炭をつかむがボロボロと炭が粉々に
なってしまった。
「ちっ」
ぷらぷらと手を振り炭を落とすと奥の窓へ向かい外を窺がうが真っ暗な闇と雨が
広がるばかりだった。
「ヴァン?」
「だめだ。暖炉は使えない」
そのまま窓の下にどかりと座り込む。
「そう。」
「もう寝ろ」
そういうとそのままスースーと寝息を立てて寝入ってしまった。
ウェンディはその様子をみてため息をひとつつくとトランクから大き目のタオルケットを
出すと床に広げそこに横になった。

 

「……っくし!」
小さなくしゃみで目を覚ましたヴァンが顔を上げるとタオルケットを肩にかけ
膝を抱え小さく固まっていたウェンディがいた。
「あー…」
ヴァンは声をかけようとするがうまく言葉が出てこない。
ウェンディがヴァンに気づくと
「ごめんなさい。起こしちゃいました?」
そう問う声も心なしか震えていた。
時間もきっと深夜を過ぎているのだろう部屋の中がしんと寒い。
「いや…あ゛ーー…寒いのか?」
「え?うぅん大丈夫!」
ヴァンの足手まといにならないようにと強がりを言うウェンディだが
肩が細かく震えていた。
「っ……………ウェンディ」
「なに?ヴァン」
ヴァンの手がおいでおいでと手を上下に振る。
「?」
とてとてとヴァンの座っている窓の下まで行くといきなり腕をつかまれ
引き寄せられた。
「きゃっ!」
バランスを崩したウェンディはそのままヴァンの胸へ倒れこんだ。
ヴァンは自分のの着ていたタキシードの上着をウェンディにかけた。
「ヴァ、ヴァン?!」
「かけてろ。…あ゛ー面倒だ」
「…ヴァン……ありがとう」
視線を合わせもせずに言うヴァンだったが言葉には優しさがこもっていた。
そっとヴァンの胸に顔を寄せる。シャツ一枚を隔てて感じるヴァンの暖かさと
自分の事を心配してくれたという優しさが胸を暖める。
「おやすみなさい、ヴァン」
ヴァンのシャツをぎゅっと握り締める。
「………おやすみ。ウェンディ」

**********

「おい。起きろ」
ヴァンの声にハッと目を覚ますウェンディ。
見上げるとヴァンの気だるげな顔が見下ろしていた。
小屋の中も明るくなっており雨も止んだみたいだった。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて立ち上がるウェンディその時、肩にかかっていたヴァンの上着が落ちた。
『あ』
二人は同時に上着に手を伸ばすが一瞬だけヴァンの手の方が早かった。
ヴァンが上着をつかむと手早く着込み小屋の外へと歩いていく。
「いくぞ」
そのまま振り向きもせずに歩き出すヴァン
「待ってよ!ヴァン!」
トランクに荷物をしまい慌てて後を追いかけるウェンディ
かなり先に行ってしまったヴァンの後姿を追いかける
「ヴァン!」
「んあ?」
その声に足を止めたヴァンは振り返るとウェンディが下を向いて
もじもじと
「あの、その…き、昨日はありがとうヴァン!」
頬を赤らめヴァンを見上げるウェンディ
「っ!………別に…………行くぞ!」
帽子を深く傾け背を向けるヴァンだったがウェンディはヴァンの
すねた様な照れた様な彼の表情が一瞬だけ見えた
「うん!」
にっこりと笑ったウェンディは先を歩くヴァンの背中を追いかける。
晴れた空の向こう次の街が見えた。

 

終わり。

 

 

初ガンソ話です。
ウェヴァンというよりヴァウェ(ややこしい)風味かな。
ヴァンて面倒ぐさがりなのか時々やる行動がかなり突飛な印象を受ける。
っていうかヴァンの口調がよくわからんー!
おかげでかなり口数の少ない男になってしまった!
とりあえず傘差しのヴァンと小屋で一夜〜っていうのが出来たから満足!
205/08/29

 

 

 

 


 

 

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