セカンド・バージン







「キレイな耳やな」







ふいに落とされた言葉に目を上げると、すぐ近くで視線がぶつかった。
無機質な広い部屋の中で、気づいたらすぐ隣りにこの部屋の主が座っていた。
近づいてきたのも気づかなかった。
このオトコ、忍足侑士は時々猫っぽい。
足音もなく近づいてきては、いつもあたしを驚かせる。
「そ?」
あたしはわざとどうでもいいように答えて、膝の上に広げていた雑誌に顔を戻した。
彼の部屋にはテニス関連の雑誌ばかりなので、
あたしはこの部屋に来るたびにファッション雑誌を持参している。
すると。
さりげなく耳元に伸びてきた彼の手が、もっとよく見えるようにとあたしの髪を掻き揚げる。
「ボリュームといい、カーブの形といい絶品や。ピアスしたらよう似合うんと違う?」
忍足の方もそんなあたしの様子を気にするでもなく、慣れた感じで言葉を続けた。


「何それ」
「何って、彼女の耳を誉めとるんやないか。ええ耳や、って」
耳って。
誉め方、なんか間違ってる。
「侑士って耳フェチだったんだ」
意外だね、っていうと、特有の片眉だけ上げた表情をみせる。
「耳フェチなんかやないで。・・フェチってならどちらかというと脚フェチや」
なあ?、といいながら制服のスカートから伸びたあたしのふくらはぎをなでた。
・・油断も隙もない。
「他のオンナの耳になんか反応せんで?おまえだからや」
「・・そりゃどーも」
氷帝テニス部のレギュラーとして名をはせている彼はオンナたらしとしても名高かった。
忍足侑士と付き合うようになってから、半年。
侑士の部活のせいで会う時間が少ないのが難点ってだけで、
それなりにうまくいっていると思う。
一緒にいて抱き合ったりもするけれど、
束縛しない、お互いが何をしててもあまり気にしないような関係。
現に今も同じ部屋で別々のことをしてたし。





「なあ」
「んー?」
の耳にピアスホール開けたいねんけど」
「え?」
その瞬間腕を引かれて、バランスをくずしたあたしは彼の胸へ。
膝の上の雑誌はフローリングの床に落ちた。







「おまえのまっさらな処女耳に、一番最初にこの俺がアナ開けたるゆーとるんや」






不覚。
耳元に、彼特有のエロ声で囁かれた。
腰に響くその声を、耳元で直に聞く危険性は前からわかっていたのに。
あたしには、彼のこの声は毒すぎる。
いや、あたしじゃなくても。
「あるイミ、直接の肉体交渉よりもやらしいと思わへん?」
「な、なに・・がっ」
彼の胸へ倒れこんだあたしに、彼の指がいたずらをしかけてきた。
うなじをくすぐられ、首筋に感じるのは彼の唇。
「みんなからよう見えるトコに、俺のモンだっていう印を刻めんねんで?」
低音で話されるその言葉は、首から振動が伝わってきて、あたしの身を震わせる。
その様子を感じて、満足そうに笑う侑士。
いつも散々カラダにキスマークを残すだけじゃあきたらないの?


「ピアッサーが一番楽やけど、わざわざ買うのめんどうやし。アイスピックあったけなぁ」
とぼけたような口調とはうらはらに大胆さを増す彼の長い指は、
あたしのシャツのすそからもぐりこんできた。
わき腹を軽くなでて、その上へ。
右利きの侑士とつきあうようになってから、
左胸だけカップがきつくなってきたのは気のせいではない。
「アッチがうまいオトコは手先も器用やってゆうし。
 あんま痛くせえへんようにうまく開けたるで?」
「・・・ばか」
高まらせる指と焦らすような口ぶりに耐え兼ねて、あたしはキスで彼の口をふさいだ。









      ×
      ×
      ×





情事のあと、起き上がるのもだるいあたしはまだ彼のベッドの中にいた。
男の一人暮らしにしてはマメに洗濯されているシーツに毎度のことながら感心しつつ、
枕に顔をうずめていた。
隣りに侑士の姿はない。
大方シャワーでもあびてるんだろうと、もう一眠りしようとうとうとしてたところに。
「おはようさん」
いつものように足音のしない歩き方で近づいてきた彼が手にしていたのは、
ボルビックのペットボトル。水は外国産の天然水に限る、とはいつもの彼の弁である。
ありがと、といいながら片手でペットボトルを受け取り、半身を起こしてのどを潤した。
ベットの端に腰掛けた侑士の、綺麗な筋肉のついた背中が近い。
下にジーンズを履いただけの裸の背中は、髪から落ちた水滴がぬらしていた。
やぱりシャワーあびてたのか・・・なんてどうでもいいことを考えながら、
水滴の行方をたどっていくと妙なものが目にとまった。
「それって・・・」
あたしの視線の行方を見て、ああ、と傍らにおいてあったトレイに目を向けた。
「おまえが寝てる間に用意しとったんや。善は急げゆうやろ?」
・・・さっきのってマジだったんだ・・・。
あたしを驚かせたのは、トレイにのったアイスピックと氷のセット。
まさかこんな朝っぱからからウイスキーでも飲むわけではあるまい。
「ほんとに開けるの?」
「当たりまえやん」
当然のことのようにケロっといいながら、ちょお待ってて、と言って、
部屋の入り口に無造作に置いてあった学生カバンの中から小さな箱をだした。
「開けてみ」
と言われて放られた箱の中をあけると。
中身は一対のルビーのピアス。
の白い肌に映えると思うてな。買うといたんや」
彼の周到さにあきれつつも箱から出したピアスは、
小ぶりでシンプルに石をあしらったものだったが、
石の輝きとプラチナポストにその高価さが窺がえた。
「・・ありがとう」
素直にお礼を言って受け取ったはいいけれど、少し複雑。
こんな高価なモノ贈られてしまったら、ピアスホールを開けないわけにはいかない。
「やっぱイヤか?」
手の上でピアスを転がすあたしに、侑士がお伺いをたてる。
侑士は強引なようだけど、ホントにあたしの嫌がることはしない。
別に、穴をあけたら運命が変わるとか信じてるわけじゃないから構わないけど。
だけど。
「今まで以上に幸せにしなかったら、許さないからね」
「・・了解」
言って、侑士はあたしの一番好きな顔でにやっと笑った。







「・・・っ」
「すぐ済むさかい。ちーっと我慢してや」
氷で冷やした耳でも痛いものは痛い。
真剣な「仕事人」の侑士の顔を間近に見つつ、ちくっとした痛みを甘受していた。
きっちり貫通したホールからアイスピックを引き抜き、代わりにさっきのルビーをうめこんだ。
「ほな、両方できたで」
消毒を済ませ、氷を片付けながら鏡を渡された。
両耳とも少し赤くなっているものの、キレイに開けられたピアスホール。
ピアッサーを使ってないにもかかわらず、曲がらずにまっすぐに刺さっていた。
「やっぱ器用だね」
「テクニシャンやから」
「・・ばーか」
軽口を叩きつつも、侑士がくれたピアスが自分の耳で光っているのは素直に嬉しい。
渡された鏡をずっと眺めていると、鏡越しに肩口の流血の跡を発見した。
下着の上に、侑士のパジャマのシャツを上だけ羽織った格好で、
タオルなどは何も当ててなかった。
耳から垂れた血は、両肩に落ち、ところどころシーツにも点々と跡を残していた。
「うわ〜」
「・・どないした?」
思わず挙げた声に、道具の片付けを終えキッチンから戻ってきた侑士が反応した。
視線で促すと、肩とシーツとを見て、目を細めた。
「結構流血しとったんやなぁ。痛かったか?」
「・・うん、ちょっとね」
そりゃあ、人体に穴あけるわけだし。
すると何を思ったか、にやりと笑う侑士。
「喪失の痛みってやつか。俺はの二個めの処女を頂いたっちゅーわけやな」
満足げにうんうんと頷いて、ルビーの光る耳を見つめた。
「・・・ヘンタイ」
「お褒めに預かり、光栄至極v」
恭しくそう言って、ちゅっと音をたてて侑士はあたしの耳にキスをした。











頂いてしまいましたよ、オッシー。
たまきさん、一番の肝とおっしゃってた真ん中がないよ?(汗)
なんていうか、そこがなくても艶っぽい文章でいいですわ〜。
オッシーのエロ声が麻酔って感じですか(死)
大人向けはこうじゃないと!
このまま、たまきさんに裏をお任せしたいです!
今回はありがとうね〜。
そして、また、くださいね・・・?(笑)









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