――ねえ、大佐。俺はあんたのモノだって分かってますか?―― 今日は久しぶりの休暇だった。俺は大佐の家に当然のような顔をして夕方から入り込んで、新妻よろしく夕飯などをこしらえて、帰宅を待った。大佐だって俺が休みだと知っているから、来ていることなどお見通しだと思っていた。だって合い鍵をくれたのは大佐なのだから。 だが、ドアを開けて俺がいると認識した瞬間、ポーカーフェイスが一瞬崩れた。明らかに舌打ちした、いや、しようとしていた顔だった。 「おかえりッス」 「ああハボック、来ていたのか」 「休暇だって知ってたでしょう」 「そうだな、届けが出ていたな」 「なんです? 俺がいちゃなんか拙かったんスか」 「いや、そんなことはない。ただ少し驚いただけだ」 「俺が他に何処へ行くと言うんです? あんたのせいで彼女にも振られたのに」 「まだ次が見つからんのか。全く甲斐性のない‥」 俺のことなど、つゆとも気に掛けてない態度に何故だか妙にムカツいた。大佐はいつもと全然変わらぬ態度なのに。 「俺には大佐がいるから、他に女なんていらないんです」 そう言うと大佐は大げさにため息をついた。 「お前、女が出来んことの言い訳にしてるだろう」 「大佐は俺に彼女が出来た方がいいんスか?」 「そりゃそうだろう。部下の心配をしない上司などいるものか」 「ほんっと嘘くさい」 今度はこちらがため息をつくハメになる。 いつまでもこんなやりとりをしていても仕方ない。俺は話しを断ち切るために、煙草を手に取ると火を着けようとした。 「おい、何度言ったら分かる。うちは禁煙だ。どうもお前は口で言っても分からんようだな」 大佐は発火布で作ってある手袋をはめる。 「煙草ではなく、お前に火を着けてやろうか」 「いっいえ、煙草の火はライターで着ける方が好きッス」 大佐が俺に向かって指パッチンを仕掛けた丁度その時。けたたましく電話のベルが鳴った。大佐は俺をチラッと見て、その電話に出た。 助かったぁ。ギラリと燃えたあの目つき。マジで焔を錬成するつもりだったろう。火傷しない程度にか、それとも軽い火傷をする程度にか。どちらにしても大佐の焔を食らう気にはならない。 しかし話し始めた大佐を見て、俺は先ほどムカツいた原因を悟った。その相手は大佐が一番仲のいい男。士官学校時代からの親友。俺の知らない大佐を知ってる羨ましい奴。 そうか、電話が掛かってくる予定だったのか。俺に‥知られたくなかったってわけか。 「‥‥ああ、そうだな。そっちで頼む」 「‥‥分かっている。言われるまでもない」 「‥‥大丈夫だ。お前の指図は受けん」 俺に背を向けて、一体何を話しているのか。手持ち無沙汰で先ほど怒られた煙草に火を着けた。燻らせた紫煙の向こうで大佐のトーンが一瞬だけ変わった。 「‥いっいや。一人だとも」 ふーん、やっぱ俺がいちゃ拙いってことか。隠してるわけね。 仲間外れで面白くない気がして、けれど階級から言っても、付き合いの長さから言っても俺は仲間になれなくて当然だとも分かっていて、やりきれない想いが胸の辺りに渦巻く。 ――俺が横恋慕したのだから―― 大佐と電話の相手とは切っても切れぬ仲。逆に俺と大佐はあっさりスッパリ止めてしまえる身体だけの関係。 大佐に自分の存在を認めさせなくてはいけない。 くわえていた煙草を消そうとして、灰皿がないことに気が付く。今までの分は窓の外へ捨てていたのだが、今は窓際まで行きたくなかった。大佐から目を離したくなかったのだ。 片足を上げて靴底の横で揉み消す。それをゴミ箱へ捨てた。 そのまま大佐の後ろへ立って、後ろから抱き締めた。 「大佐‥」 受話器に拾われない程度の小声で呼んでみる。けれど大佐は微動だにしない。俺のことなど気にしていないようだ。 「‥人数は?」 『しちに‥だ』 「‥そうか。それなら見知った顔ばかりだな」 『‥たく‥‥‥かも‥れんが‥』 大佐のそばまで来たので、僅かながら相手の声が聞こえる。そうでなくても大きな声で話すので、大佐は耳が痛いのか、ときおり受話器を離して聞いている。 軍の回線を使って平気で娘自慢をする相手なのに職場ではなく、わざわざ家で話すプライベートなこと。しかも俺がいないところで話したかったこと。士官学校の同窓会でもあるのだろうか。7人と聞こえた気がするから、その中でも特別仲のいい者ばかりで集まったりするんだろうか。俺の知らない大佐を知っている連中ばかりだと思うと、やるせなさは心の中で育っていく。 抱き締めるだけでは物足らず、軍服のボタンを外す。それでも変わらない態度にシャツのボタンも外してみた。 やはり毅然とした態度を崩さない大佐は、俺のことなど何とも思ってないのだろうか。少しでも気があるなら、触れられたらそれなりに反応するのが普通だろう。 怒られるのは覚悟の上で右肩を剥いてしまう。しっとりした肌が大佐の匂いと共に露わになった。 その瞬間、やるせなさとか不安とか、そんなものは全てが飛んでいってしまい、ただ‥大佐に触れられる幸せに酔う。今、ここで、大佐を抱き締める事が出来るのは俺なのだから。 「大佐‥」 素肌を目の前にして、味見せずにはいられない。首筋に唇を這わせても、軽く吸い付いても大佐は拒否しない。どれだけ大事に想っているか、それは伝わっているからだろうか。そんな想いを乗せて自然と口からは大佐の呼称が出てしまう。大佐を抱いているときは幾度となく呼んでいるのだろう。だが大佐は一度たりとも返事をしてくれた試しはない。それでも返事の代わりの喘ぎ声を聞くとそれだけで満足してしまう。たまに俺の名前を呼んでくれると、それだけで幸福感で一杯になる。
「‥ああ、分かっている」 『お前さ‥よ、あ‥くなり‥ぎ‥‥じゃ、ないぞ』 「‥そこまでバカじゃない」 剥き出した側の腕を掴み、同じ方向に顔を出した胸の突起に触れるか触れないかくらいの微妙な位置で指先を動かす。触れてなくても指の熱が伝わっているようだ。大佐のそこはぷっくりと膨らんできた。 「‥だが、皆には‥」 『‥‥ってるって。な‥しょ‥なんだろ』 「‥そうしてくれると助かる」 「大佐、触ってないのに触って欲しそうに勃ってきたッスよ」 上から覗き込んで目視でも確認する。耳のそばでそう囁いてやると初めて自分の耳を手で隠した。 感じてるのが分かるとそれで終わりになど出来ない。今までしっかりと触れてはいなかった勃ち上がってきた所を、人差し指で意地悪くクルンと一回転させた。 「ッ‥」 さすがに反射を抑えることは出来なかったのか、一瞬息を止め、大佐は身体を少し震わせた。 『なんだ、‥‥した?』 「‥あ、いや。なんでもない。それじゃこれで切るっっ‥」 『あした』 再度回した指先に言葉が中断される。大佐は相手の返事の途中でガチャンと受話器を下ろした。 「貴様、少しは待てんのか!」 「一秒たりとも待てません」 後ろを振り向きつつ怒鳴った大佐の顎を、腕を掴んでいた方の手で押さえ、その唇へ口付けた。 自分の部下にいいようにされて気に入らないのか、大佐は俺から離れようとして藻掻く。力勝負では同レベルだ。いや、少しは俺の方が強いと思ってはいるが。こんな所で体力を使いたくはない。 狡いのは自覚しながら、大佐の剥き出しになった所を今度は摘んだ。 「くっ‥、ふ‥ん」 力を入れていたところへ来た刺激に防御が追い付かなかったのか、かなりダイレクトに響いたようで、鼻から抜けるような息を吐くと、抵抗していた力が抜けて大人しくなった。 そのままそこを親指と人差し指で力を入れつつ転がしてやる。 貪る唇と、犯す舌と、嬲る指と、自分の全てが大佐を喘がしているこの状態に興奮し、そして満足する。 「うっ‥」 大佐は強く摘まれるとその度に新鮮に、感度良く反応してくれた。 「そろそろいいッスか?」 いったん口を離して尋ねてみる。 「‥待てと言っても聞かんだろうが」 「そうッスね」 お前な、上司の言うことをたまには聞けよ、などとブツブツ言いながらも、大佐の諦めた態度がいつも俺に全てを許してくれる合図となる。あれだけの相手がいるくせに、何故、俺にも抱かれてくれるのか。不思議でならないが、俺は待ても出来ない犬だから。頂けるものは頂いちまうのが犬らしいだろう。 そばにあるソファーに押し倒す。足元にあったクッションが邪魔で蹴飛ばすと、細長い形のそれは見事ゴミ箱にはまり込んだ。それを横目で見ながら半脱げだった上半身を裸に剥いた。自分も同じ姿になると大佐に覆い被さるように抱き締めて、キスをする。 軽く添える程度ではあるが、大佐の手も俺の背中に回り、その手には発火布の手袋がはめられているままだと伝わる。手袋を着けたままで裸に剥くのもエロい気がして下半身の熱が上昇する。 唇を合わせていたが、充分に味わうと首筋に沿って下へと移動させていった。 胸の飾りに吸い付いている間に、下半身も裸に剥く。そこは既に満タンに満たされていて心の底で歓喜の声を上げる。自分の行為によって興奮していると言うことが堪らなく嬉しいのだ。 足の間に顔を埋め、元気なモノを銜える。舌は敏感な先端を抉り、歯はカリの合わせ目を甘噛みし、喉は奥から吸い上げる。 「うっ‥、ぁくっ‥」 その全ての行為に大佐は反射を繰り返す。握り締めた手にも脈動が伝わって、どれほど感じているのかがよく分かる。 熱が冷めないよう、口を離さないままで自分のポケットを探る。そこから潤滑剤を入れた小瓶を取り出すと、下の口に塗り付け、人差し指を侵入させた。 中の一番いい所と、前を同時に攻められて大佐は我慢出来ないのか、俺の髪を掴んで苦しそうに喘ぐ。 「ああっ‥う‥、っっ!」 それでもしつこく指を増やして嬲り続ける。 「んんっ‥まっ待て‥んっ」 上り詰める寸前で口を離し、指を抜いた。 「もう入れてもいいッスか?」 「それを‥聞く‥必要‥が、ある‥のか」 「確かに‥ないッスね」 ここで待てと言われても待てるはずがない。 俺は大佐の犬ですから。やっぱり待ても出来ない犬なので、犬は犬らしく、野生の本能赴くままに行動します。 一息ついたのか、大佐はグッタリと身を沈めた。そこへ両足を抱え上げ、遠慮もなしに己のモノを埋め込んでいく。 「くっ‥」 指で慣らしたとはいえ、大佐は苦しそうだ。 それでも大佐からそこで止めろとか、入れるのは嫌だとか、阻止する台詞は聞いたことがない。ということはそれなりに気持ちがいいのだろうと判断してしまう。 根元まで納めると自分が耐えられなくなって、盛りのついた野犬のように腰を振る。 俺は大して頭も良くないし、取り柄と言えばこの丈夫な身体くらいで。大佐が身体を求めるなら、満足してくれるまで頑張らなくてはならない。 何度も何度も果てることを知らない機械のように大佐に打ち付ける。それは力一杯で最奥を穿ったり、緩やかに感じる所を擦り上げたり、機械のようだと言っても人間にしか出来ない芸当で。 突かれる度に大佐は悶え、喘ぎ、全身に力を入れてそれを受け止める。その顔がまた堪らなく色っぽい。 「大‥佐、あんた、色っぽすぎ‥る」 「ああっ、も‥もうっ、いい‥だろ‥うっ‥」 「Yes Sir」 こちらが保ちそうにない‥と必死になっていたら、大佐の方から降参してきた。 ラストスパートを掛けつつ、大佐の前も扱いてやる。 「うっ‥ああっ、うんんっ‥」 大佐が果てるのをキッチリ確認してから、俺も大佐の中で弾けたのだった。 「‥よかったッスか?」 先ほどの電話が頭から抜けず、今まで聞きたくても聞けなかったことを、ついつい口に乗せてしまった。 「‥普通‥、そんな‥こと、聞く‥か?」 大佐は乱れた息を整えながら、上体を起こすと俺を睨み付けた。 「けど、俺にはこの身体しかないッスから、大佐を満足させることが出来なかったら用がないッスよね? さっきの電話の相手に勝てると思うほどは自惚れてませんが」 「お前、自分の言ってることを理解しているのか」 「俺は頭は良くないッスけど、自分の言ったことは分かってます」 「‥もしかしなくても私と‥ヒューズがそう言う関係だと思ってるのか」 「そうッス」 「貴様は馬鹿か!」 大佐は激高し、勢いよく立ち上がった。余りの気迫に、その前に座り込む形になっていた俺は弾き飛ばされるように後ろへ倒れた。それはソファーに受け止められず、床へ落下し、背中を強打した。 「うっ、いてぇ‥」 俺が呻き声を上げたのと隣でゴミ箱がひっくり返り、ボッとくぐもったような音が聞こえたのは同時だった。 「ハボック、水持ってこい!!」 まっ、まさか。本当に俺を焼こうとしたのか。ゴミ箱から炎が揺らめく。背中が痛いのを忘れ、俺はキッチンへ走り、バケツに水を汲んでその場にまいた。 ゴミ箱の上で錬成反応の光を出していた大佐にも当然かかったが、なんとか消火は成功した。大佐は燃え広がらないよう酸素の濃度を下げていたのだろう。 「貴様、ここへ煙草を捨てただろう」 「えっ、俺ッスか?」 「そうだ。ゴミ箱の中で燻っていたんだ。クッションでフタをされていたが、お前に当たって転げた拍子にそれが抜けて空気に触れ、その途端、燃え上がったわけだ」 「大佐が俺に向けて焔を錬成したんじゃないんスね?」 「お前な、私を一体なんだと思ってるんだ」 「焔の錬金術師。俺の上司。地位は大佐」 「その私が何故お前に向かって焔を錬成する必要がある?」 「さっき怒ってたッスから」 言ってからしまったと思った。大佐の頭からすっかり抜け落ちていた怒りが、沸々と甦ってきた。 「そうだ、お前が余りにくだらんことを言うから。確かに焼き殺されても文句は言えんな」 また指パッチン仕掛けるが、手袋は濡れていた。 「残念っしたね。それじゃ火花が出ません」 大佐はふるふると怒りに身を任すと、ギッと俺を睨み付ける。そして首に手を掛け屈ませる。 「お前は馬鹿だ」 それだけ再度断定すると唇を押し付けてきた。 キスされるとつい抱き締めてしまうが、それがなんの意味をなすのか俺には全く分からない。 深くて短いキスを終えると、分かったか、と尋ねてきた。 「すんません、全然分かりません」 「ほんっとに、お前は馬鹿だな。何故、この私があんなに苦しい思いをしてお前を受け入れているのか、少しは考えろ。無い知恵絞れ。他の男に同じ事をしている訳がないだろうが」 無い知恵絞れと言われても、無いものからは何も出ない。だが、他の男にしていないと言うことは、中佐とは肉体関係が無いと言うことなのか。それとも‥。 「もっ、もしかしたら、大佐がタチッスか‥?」 言い終わったかどうかで、ガツンと殴られた。 「目が覚めたか」 んなこと言ってもそう簡単には信じられなくて。 「はっ、はい。あの、中佐とはマジでなんにもないと?」 「当たり前だろう。あいつには奥さんも子供もいるんだぞ。おまけにどう思ったら男に対してそんな事が出来るのか。私は女性が好きだぞ。それはお前も同じだろうが」 「俺もそうですが、でも大佐だけは特別です」 口にして述べてから初めて気が付いた。ああ、そうか。大佐も同じだと言ってくれてるんだ。 「大佐」 裸に手袋だけという姿で、仁王立ちしている大佐を抱き締めると、身体が冷たかった。 「濡れてますね」 「水も滴るいい男って言うだろ」 「そうッスね。でも水に濡れると無能になりますから」 無能と言われて大佐の身体が震えたのが分かった。俺には弱点もあった方が取っつきやすいのに。 だが、ついいらぬことまで言ってしまうのが、俺の悪いところだ。 「大佐、水は作れないんスか。空気の中には水素と酸素があるんだから水だって錬成し放題なんじゃ。今だって水を出してくれたらすぐに火は消えたのに」 「何を言うのか。そもそもお前が煙草など吸わなければ火は出なかったんだぞ。反省してるのか」 「だって大佐の部屋には灰皿がないッスから」 「禁煙だと言ってあるだろう」 「ですが、俺のことを少しでも思ってくれるなら、灰皿だって置いてくれてもいいじゃないッスか」 「少しくらい吸わずにおれんのか」 「おれません」 「それじゃ今後立ち入り禁止だ」 「そっ‥そんな」 「私と煙草のどちらか選ぶがいい」 「大佐を選ぶに決まってるじゃないッスか。けど俺から煙草を取ったらなんにも残りませんよ」 「お前の身体はヤニで出来てるのか」 「きっとそうッス。補給しないと無くなります」 「まったく‥」 裸で睨み合いを続けていたが、大佐が苦笑して終わりを告げる。 「大佐、俺の粘り勝ちッスね。明日も銜え煙草で付いていきます」 右手を挙げて敬礼する。 「明日?」 「そうッス、明日ッス」 大佐は明らかに狼狽えた表情を見せた。 「中尉に背中を任せるなら、俺は大佐の前に立って盾になります」 「‥気が付いたのか」 大佐はため息をつくと、ソファーに腰掛けた。 「明日はダメだ。そう言うと思ったから皆には内緒にしてもらったんだ。ヒューズ曰く、デタラメ人間の万国ビックリショーだからな。一般人は参加出来ない」 「知ってます。南部で起こってる暴動でしょ。国家錬金術師クラスの奴らが集まってる。俺がもっと賢かったら、すぐに気が付いたんでしょうが、最後に明日と言ったのを聞いてようやくその事件と結びつきました。壊滅作戦が決行される日だと。南部のことなのですぐには思いつきませんでしたよ」 「それなら分かるだろう。銃しか扱えない一般人は来ても仕方ないんだ。前にもあった錬金術師対戦で集められた7人で今回も行く」 顔見知りの7人とはそういうことだったのか。中佐は見たくもないかもしれない、と言っていたのか。イシュヴァール殲滅作戦でも見た顔ぶれだったのかもしれない。大佐には思い出したくないことだろう。 「死ぬまでは大佐の盾になれます。死んだら俺を踏み越えて行って下さい」 「連れてはいけない」 「俺は大佐の犬ですから。飼い主がいなけりゃ死ぬしかないッス」 「覚悟があるのか」 「当然」 「そのかわり一つだけ約束しろ」 返事の代わりに大佐の目を見つめる。 「私より先に死ぬことは許さん」 「そんな約束したらあんたの盾になれません。なのでその約束は出来ません。でも俺はついていきます」 俺の覚悟も決意もしっかり伝わったのか、大佐は先ほどまでの気迫を和らげた。 「ふむ、そうか。なら約束を変えよう。私と一緒に行動する間は煙草を吸ってはならん」 「どっ、どうしても選ばせたいんッスね」 「そうだな。想いの深さを見せて欲しいものだ」 大佐は意地の悪い笑みを浮かべると、楽しそうに俺の肩を叩いた。 チクショ、そんなもので俺の想いなど計れるものか。とは思っていても吸わずにいれる自信はなくて。 ハッと、名案が浮かんだ。 「口寂しくなったら、大佐が慰めてくれますか。キスしてくれてもいいですし、大佐のモノを銜えさせてくれてもいいですから。大佐も気持ちいいし、一石二鳥ってことで」 「バッ馬鹿者、遊びに行くんじゃないんだぞ。戦いに行くんだぞ」 珍しく赤面してる大佐が可愛くて。 「ふーん、なら遊びに行ったときはいいんスね」 今度はこちらがニヤッと笑うと頭を叩かれた。 「よし分かった。お前には絶対煙草を吸わさんからな」 う〜ん、この勝負、どっちが勝てるのだろうか。 「それじゃ、今現在既に口寂しいですから、キスしてもいいッスか。それとも‥」 「まっ、待て。後1時間ほどでここを出ないと間に合わない」 喚く大佐を無視して、股間に顔を寄せた。舐められている感触を想像したのか、触ってもいないのにそこは勃ち上がってくる。 「わっ、分かった。降参する。煙草でもなんでも吸うがいい」 「なんでも?」 「なんでもいいから。すぐに支度しなければ夜行に乗り遅れる」 「1時間もあるッス」 「こ、こら‥待てって。ハボック!」 「俺は待ての出来ない犬ッスから。飼い主の躾が悪いんです」 だって、せっかく大佐も俺のことを想ってくれていると分かったのに、抱かずになんていられない。 その後の文句をすぐに言えなくなった大佐は、代わりに脳髄に響く声を聴かせてくれたのだった。 電車? 駆け込みセーフだったさ。 そしてその作戦は成功に終わったのだった。 終わり
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シュリさんのこのイラストを初めて拝見したときの衝撃と言ったら!! もう、マジで雷に打たれたような気分でしたよ! ハボロイ、ちょっとはいいなぁって思ってはいたのですが(ヘタレ攻め&年下攻め大好きなので)、 自分で話しを書きたいとまでは思っておらず。 鋼で一番の萌えカプはロイアイでしたので、こんなページまで作ってしまうとは自分でも驚きです。 でもそれはシュリさんのこのイラストから始まりました。本当に素敵なイラストで、キリリとした大佐が堪りません。毅然としている人を快楽によって落とす! こんなに燃えさかるコトってあるでしょうか。(笑) 余りにも素敵だったので、書かずにはおれない気分に陥って、その話しをしたら、欲しいと言って下さって。社交辞令だったかもしれないのに(と言ったら怒られましたが/汗)、図々しくもこの話しを送りつけました。したら、ご自身のサイトにまでアップして下さって、本当に目眩がしそうです。(だってね、シュリさんとこの頂き物ってもの凄くレベル高いんですよ!(汗) 私如きが名を連ねるなんて畏れ多いッス!!) でもでも本当に有り難うございました!! おまけにイラストまでお強請りしてしまってすいません。これまた快諾して下さって嬉しいですvv マジでニマニマしながら飾らせて頂きました。枠が邪魔よ! と思われる方はシュリさんのサイトへ行かれて下さいねv ほんとに素敵なイラストばかりで涎ダラダラッスよvv |