梅雨時の一瞬の晴れ間を狙ったように冬哉が遊びに来た。ちょうど母親も狼帝も居なかった。冬哉がうちへ来るのは基本的には狼帝に用があるときだ。だが狼帝が居なくても俺がいれば、顔を出す。そして俺が暇にしていると知れば、大抵は抱いて欲しそうに物欲しげな目をする。まあ、これだけの条件が整うときはとても少ないのだが。
「虎王先輩、珍しいね。平日の明るいうちからいるなんて」
「なんだ、俺がいちゃまずいのか」
「うっ‥ううん。そうじゃないんだけど‥」
「お前こそ期末テストはどうだったんだ？」
「今回は結構頑張った。狼帝と必死で勉強したから」
「狼帝と、か？」
「え‥、狼帝が、かもしんない」
えへへ、と笑うその顔は本当に愛らしく、つい俺は虐めてしまいたくなる。
「で、どうして欲しいんだ？」
して欲しいことは分かっているのだが、冬哉が困ったり照れたりするのを見るのは楽しい。
「テスト勉強も頑張ったし、その間‥‥して‥ない‥し」
「何をしてないんだ？」
「だっだから‥‥。先輩の意地悪」
「何をして欲しいのか、ハッキリ言わないと分からんぞ」
冬哉は顔を真っ赤にして、小さく一言「して」と言った。ここまで言えれば上等だろうか。
窓もカーテンもドアも全開にしたまま、冬哉を裸に剥いた。そしてベッドの上で四つん這いになるよう命じる。レースのカーテン一枚で冬哉は全てをさらけ出す。当然恥ずかしがって嫌がる。しかし嫌がられると俺の加虐心が疼く。それはそのまま性欲に直結する。
暑さと湿気とで、汗がしたたり落ちる。上半身裸の俺と、全裸の冬哉と。外から見れば何をしているのか一目瞭然のような気がするが、昼間は部屋の中の方が暗いので、実は思ったほど見えてないのだ。
「せっ先輩‥、クーラー付けようよ」
「付けるほどじゃない」
「だっだけど‥見えちゃう」
「見せつけてやればいいだろう」
「やっヤダ‥」
「本当に嫌か」
そう言いながら、中から一番いい所を二本の指で連打してやる。
「あっ‥ああんっ」
「そんなに大きな声を出すとそこら中に聞こえるぞ」
指を打ち付ける動作を止めずに、冬哉を脅す。
「誰か帰ってきてもばれるな」
「うっ‥くっ」
冬哉は中を弄ばれながら必死で声を殺す。身体にも力が入って指を銜え込んでいる所がきつく締まる。
「こんなに締め付けて‥。そんなにここが気持ちがいいのか」
「あんっ‥や‥」
「嫌なら止めるか」
あっさりと指を抜いてやる。
「やっ、それもイヤ」
冬哉は腰を振りながら指をねだる。
「それならイくまで嬲って欲しいか？」
「カーテン‥閉めて。窓もドアも閉めて‥。お願い」
「閉めてもいいが、それならもうしてやらんぞ。どっちがいい」
「そっそんな‥」
「このまま止めるか」
「やっヤダ」
「なら開けたままでいいか」
悩んでいるのか、返事がない。合図のように尻を軽くピシャッと叩いた。
「これで終いだな」
「やだっ、開けたままでいい」
究極の選択を迫られて、冬哉は己の欲望に従った。
再度突き上げた尻に指を入れてやると、冬哉は満足げな息を漏らす。しかし、声だけは大きくならないよう堪える。元々冬哉は思いっ切り声を出して喘ぐタイプじゃない。喘ぐ、と言う行為が恥ずかしいと思っているので、いつでも嬲られるときは必死になって抑えている。もしかしたら最初が電車というのも関係しているのかもしれないが。
そう言う羞恥心を忘れない態度が酷く可愛いのである。
俺自身もこの冬哉に多少の目眩を覚える。
「先輩‥、もう‥イかせて」
中だけを弄られ続けて、冬哉が泣き言を言う。少し前を触ってやれば、あっさりとイってしまいそうだ。
しかし、俺はもう少しこのままでいたかった。冬哉の喘ぎを聞いていたかった。
「このままでも気持ちがいいんだろう？」
俺の意地悪な言いぐさにも、冬哉は「うん」と答えるしかない。そして「イかせて」と言う言葉を何度も何度も耳にして、俺も一種の快感に浸っていたのだった。
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