冬哉くん | |
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作:貴雄さま 作:uniさま 作:thildaさま 作:巫 深古都さま 作:じん・じゃえるさま 作:玖羅さま 作:なぎささま 作:ayaneさま |
あれは小学5年生の運動会だった。1学年4クラスあるうちの学校では1年から6年までが縦割りで色に分けられ、同じ1組で大きいのから小さいのまで一緒になって戦っていた。 それは運動会も終盤で残すは俺たち5年生の徒競走と、全体のリレーだけになったときのことだ。1組の俺たちは赤色で3組の青色と2点差を競っていた。それは例え負けても1点差じゃないとひっくり返せないと言う状況で、青組と2つ以上の差を付けられたら2位が決定する差し迫った場面でもあった。 「狼帝、頑張ろうね」 そう俺を励ましてくれた冬哉には当たり前だと答える。その当時の俺は優等生であることが誇りであり、運動だって自信があり、虎王の弟だと言うことが自慢の少し嫌みでイヤな奴だった。だが冬哉とは4月からの半年ですっかり仲良くなっていた。俺は初めて友達と言っていい存在が出来てとても嬉しかったし、優しいけどちょっとのことではめげない冬哉が大好きだった。 女子から始まって男子へとうつる。1位の数は青組リード。背の低い順からスタートするので、冬哉の出番は割と早かった。 クラスでも人気者の冬哉への声援は人一倍大きかった。だが、冬哉はそんなに足が速い訳じゃない。それでもみんなの期待に応えようと冬哉は必死で走った。運良く一緒に走った連中も速くなかった。冬哉は1位でコーナーを回った。しかし気張りすぎたためかそこで足がついてこず、冬哉は思い切り転んだ。 中々起きあがることが出来ない冬哉。誰もが駆け寄って起こしてやりたかったに違いない。もちろん俺だって。けれどその中でも目立っていたのは冬哉の両親だったが。冬哉を溺愛している夫婦はそばに寄ろうとして先生に止められていた。 そんな周りの騒動は当の本人には伝わっていない。なんとか膝を立てたのを見たら‥、その膝小僧は血にまみれていた。 痛い。みんなが同様に顔をしかめる。その痛みを想像して。 そしてみんなが応援する。 「冬哉ー! 頑張れー!」 冬哉は泣きそうになっていたが、そのみんなの声援が届いた。 可愛らしい顔をグッと引き締め、痛みを堪え、決意して立ち上がった。 それから足を引きずるようにして走り出した。 冬哉‥。頑張れ。頑張って最後まで走れ。 祈るような思いで冬哉を見つめた。 先生がゴールのテープを再度張ってくれる。冬哉はそのゴールへ倒れるように駆け込んだ。まるで優勝が決まったかのように校庭は湧いたのだった。 その姿を見せつけられた残りの男子は、俺も含めてもの凄く熱くなり徒競走は逆転したのだった。 その勢いが乗り移ったのか、リレーも1位をもぎ取ると、赤組の優勝が決まった。 その場で万歳をするだけでは足らず、みんなが冬哉を囲んで叩いたり抱き締めたりと忙しい。当然だが俺もしっかり冬哉を抱き締めた。もしかしたらその頃からそう言う意味でも俺は冬哉に惹かれていたのかもしれない。その時は単純に冬哉に触れたい、そばにいたい、と言う思いだったが。 きちんと自分の気持ちに向かい合ったのはかなり遅かった。同性しか好きになれないと認めるのは怖かった。本音をさらけ出すのは抵抗があるのだが、俺は虎王への憧れが強すぎて自分を偽っていたことにすら気付いてなかったのだ。 この時の冬哉の写真は俺の手にある。ほかには誰も持ってないだろう泣きそうな冬哉の顔。いつもニコニコしている冬哉にはとても珍しいと思えるが、俺はその前の冬哉を詳しくは知らない。俺にはここからの冬哉が全てで、ここからは誰にも負けないほど冬哉のことを知っている。それは俺にとってこれからを支える糧になっているのだ。 冬哉、お前の全てを知っていたい。冬哉の身に降りかかった全てのことを。そして冬哉の身体の隅々まで‥。 終わり |
虎王先輩 | |
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作:じん・じゃえるさま |
小学4年生でありながら、 「ふ〜ん、お前、俺を楽しませてくれるのか?」 なんて‥、遊んであげる、とうっかり言ってしまった大人に答えてそうな虎王先輩。余りにも先輩らしくて素敵ですv(^^) |