「VS.」の生馬&鋭侍。仲直り

神さまより

ケンカの後の仲直り
 大学1年の初冬のことだった。12月に入ってからすぐ、俺は家に帰った。もうすぐ冬休みだというのに、わざわざ帰ってきたのは誰のためでもねぇ。自分のためというか、生馬のためというか。なのに生馬は仕事が忙しくて会えたのは夜遅くだった。
 俺の家には両親がいた。しかし生馬の家だって夜遅くに騒いでいたら筒抜けだ。次の日は休みだと言うので、近くのラブホにでも行こうと言ってみた。俺はとにかく生馬とやりたくて肝心な話しが後回しになった。
 生馬の方も同じだったようで、ホテルへ行くという所まではすんなりと話が進んだ。しかしいつもと同じく、どっちがやられるかでもめた。

「バカヤロー。お前、この間散々やっただろうが!」
「散々って程やってねぇ」
「だけど順番から言って今度は俺だろうが」
「だから今日だって交代でやりゃいいだけのことだろう」
「んなこと言ってこの間だって、やらせてやったら調子に乗りやがって。次の日の朝から突っ込みにきたじゃないか」

 そう、半月ほど前に遊園地へ行った後の生馬は妙に可愛かった。余りのしおらしさに調子が狂うかと思ったくらいだ。素直にやらせてくれると言うので、喜んでやらせてもらった。次の日は朝から自分がやるんだと張り切っていた生馬を上手いこと言いくるめ、続きのように抱いた。それを生馬はずっと狡いと言っているのだ。
 だが、夜と朝を合わせたって3回だぜ? 散々と言われるほどやってねぇのにそんな風に言われると腹が立つ。だいたい生馬の方が可愛いんだから、いつも大人しく抱かれてりゃいいんだよ。可愛い方が受けって決まってるじゃないか。と、大学で知り合った同人女も言ってたぞ。
「分かった。とにかく揉めてる時間が勿体ねぇ。最初はおめぇがやる。そんでもってそれで満足すれば次は俺がやる。そんでどうだ?」
「おっオォ。そんならそれでいいぜ」

 俺は男が触れていると思うと鳥肌が立つんだが、これだけ惚れてると思ってる生馬に触られてもそれは変わらねぇ。そこら辺が生馬に、俺が女の方がイイと思ってるように思われてしまって、突っ張りながらも不安にさせてしまってる原因だとは分かっている。だが身体が勝手に反応するので俺にはどうすることもできやしねぇ。
 お互いに女は抱くので、ヤキモチ妬いたりはしねぇんだが、やっぱり離れていると疑わしいことも出てくる。それが今から起こることの原因なんだが‥。

 触られるのはダメでも、やられるとそれなりに気持ちがいい。俺はきっとその素質があるんだろう。前立腺がかなり感じるのだ。アナルセックスなんてやる方は気持ち良くても、やられる方は痛いだけだって言うからな。生馬も慣れたからそこそこ感じるのだが、それは残念ながら俺の比じゃねぇ。
 だから俺がやられる側なら同じ快感を二人で分かち合えるとは思うのだが、抱くと抱かれるとでは意味合いが全然違う。己の下で喘がせたい、と思うのは男なら当然の欲だろう。それが男ってもんだと思うしな。

 取り敢えずお互いに一回ずつやって不満なく寝たと思っていた。しかし、朝起きたら生馬の奴はいなかった。あんのバカ馬。どこ行きやがった! 車もないので途方に暮れる。近くとは言ってもインターのそばなんて、車で来るためにあるわけだからバスだって通ってやしねぇ。クッソー。一体俺が何したって言うんだ。携帯も切ってるのか繋がらねぇし。
 仕方がないので、こっちにキープしてあった年上の女を呼び出した。まさかラブホで置いてきぼりにされたなんて格好悪いこと、言えやしねぇから一戦交えてから帰ることになる。やるだけやって帰るわけにも行かないので、家に辿り着いたら3時だった。

 早速沢田の家に行くと、生馬の車が置いてあった。
 玄関を開けるなり怒鳴った。
「こぉら、バカ馬。出てきやがれ!」
 そこへ窓から様子を窺っていたのか、待っていたかのように生馬が出てきた。
「なんだ、アホ侍。何か用か」
「っんだと。おめぇ、よくも人を置き去りにしてくれたな。どういうつもりだ」
「こういうつもりだ」
 と言ったかどうかで俺は殴り飛ばされていた。もちろんいきなり殴られるなんて思ってもみなかったので防御も出来なかった。

 普段はどんなに腹が立っていてもきちんと空手の試合形式を取る余裕がある。こんなに容赦なく殴られたのは中学以来じゃないだろうか。その態度に怒りが頂点に達し、俺も思いっ切り殴り返していた。
 門から玄関までの間で、一番よく見える場所で殴り合う大男。どれだけ目立つかわかりゃしねぇが、近所の人たちは俺たちのことを小さい頃から知ってるので、空手の形式で寸止めをして無傷であろうと、こうやって真剣に殴り合っていようと、全然気にしてない。営業で回ってきたサラリーマンとか、郵便屋さんくらいだな、驚いてるのは。

 たまたまそこへ大兄が帰ってきた。
「おい、おめえら。今すぐヤメねえとどうなってもしらねえぞ」
 低い声で後退りたくなるほどの迫力を漲らせて、大兄は静かに言った。
 二人とも大兄が真剣に怒ったらどれだけ怖いか知り尽くしているので、怒鳴られた訳じゃないんだが、あっと言う間に大人しくなる。

「今度はまたどうした。珍しいじゃねえか。マジで殴り合うってのは」
「どうもこうもしねぇ。このバカ馬が俺を置いてかえっちまったんだよ。それまで今回はわりに仲良くしてたのに。どういうつもりなのか俺が聞きてぇ」
「どういうつもりって、お前こそどういうつもりなんだよ」
「俺がって、どういうことだ。昨日はどっちも一回ずつやってケンカにはならねぇだろが」
「んなこと関係ない」
「じゃなんだよ」
「腕」
「腕?」
「それでわからんならもういい」
 怒ってると言うより拗ねた顔の生馬。年より若く見えて可愛くっていけねぇ。この顔を見たら怒りがスッと引いていった。

「待てよ、ちゃんと考えるから。だからもう少しヒントくれ」
「お前、そのケツのポケットに何が入ってるか知ってるだろ」
 言われてポケットを探ると一枚の写真が出てきた。女がベッタリと俺にくっついている写真だが、こんなのいつもカバンにだって入ってるし、部屋にだってたくさん転がっている。
「わざわざ女みたいにポケットの中探ったんかよ」
「んなことするわけないだろ。お前が脱いだときに落ちたんだよ。朝それを拾っただけだ」
「そんでこれがどうした。別にいつものこったろ」
「ああ、別に女のことをどうこう言うつもりはない。だがその女になんかやっただろ」
 ジッと写真を見たが、俺がやったもんなんて写ってない。
「なんもやってねぇが‥」
 だが、なんか引っ掛かってなおそれを見つめた。しかし喉に骨が引っ掛かったようにちっとも取れねぇ。
「そいつ‥この間生馬が一生懸命選んでた、ブレスレットしてないか?」
 これ以上話すつもりはない生馬ではなく、そばで話しを聞いていた大兄が写真の女の腕を指さす。

 ああ、これか。確かに生馬にもらったブレスレットをしていたが、こういう男の子がするシルバーのアクセも格好いいわね、とか言われて貸してやった所を写真に撮られただけで、そんな大事なもんを誰かにやるわけがないだろう。
「バカだな。おめぇは。だからバカ馬って言われんだよ」
「なっ何がバカなんだよ。腹が立って当然だろう。おまけに今付けてないのがなによりの証拠だ」
「おめぇじゃねぇから、こんなチャラチャラしたもんをずっと付けてはいられねぇんだよ。だがちゃんと持ってるぞ」
 落とすといけないと思って財布にしまってあったのを取り出してみせる。そしてそれを腕に通した。

 そう、今回帰ってきたのはこれが送られてきたからだった。どうやらボーナスで買ってくれたらしいのだが、それを渡すのが照れくさくて悔しかったんだろう。店からの宅急便で下宿のアパートへ届いたのだ。
 顔を見てきちんと礼が言いたかったのに。

「たまたまその女に貸してる所を撮られただけだ。だが貸すって言ってもその場で試しに嵌めてみただけで、一日中貸したとかそんなんじゃねぇから。おめぇからもらった大事なもんだから、財布に入れてたんだよ。したらたまたま財布覗いて、つけてないなら貸して、って言われて、嫌だって言ったら、へぇ彼女に頭が上がらないんだ? とか馬鹿にされたから、カチンと来て嵌めさせてやっただけだ。分かったか」
 一気に捲し立てると生馬は勘違いが分かったようで、バッと顔が赤くなる。
「そうか、なら仲直りだな。取り敢えずその顔、なんとかしろ」
 大兄はそう言って二人共を引きずるように家の中へ連れ込んだ。小さく切った湿布とか、ガーゼとか絆創膏とか貼られて、仰々しい顔が出来上がる。
「おい、いい記念だろ。写真撮ってやるから二人で並べ」
 今度はまた外へ連れ出されて生馬と並ばされる。
「ほら、もっと近寄れ。生馬、お前自分が写真に収まってりゃ、文句ないだろうが」
 ハッパを掛けられて生馬が一歩歩み寄った。俺の方をチラッと見たが、目が合うとお互い長年の癖が抜けず、そっぽを向き合う。
 いや、こんなことじゃいけねぇ。せっかく生馬がプレゼントをくれたのに。
 俺はそっと手を探って握った。生馬がまた俺の方を見る。驚いた顔をして。
 それから二人してニヤッと笑い、いい顔しろよ、と言った大兄の言葉通り、シャンとして前を向いた。そりゃもう満足げに。

 まだ人の手を借りないと仲直りもすんなりいかない俺たちだが、それでもかなり仲良くなってきたな、と思う俺だった。



「VS.」の生馬と鋭侍を頂きました〜!
ケンカの後の仲直りという感じで、手を繋いでる所がすっごい可愛いです〜。
きゃ〜、二人ともムッチャ格好いい〜!
と言うことで、ついつい短編を書いてしまいました。短編と言ってもいつもの
更新分の長さになっちゃいました〜。長くてご免なさ〜い。(^^;;;
神さんの絵柄はアメリカンスタイルと言うか、とても洋ものな感じでおしゃれです。
そんですっごいセンスいい〜!!
今回、図々しくもうちのキャラを描いて欲しいとお願いした所、こんな素敵なイラストを下さいました。!
本当にありがとうございますvv
オエビにもたくさん投稿して下さってますので、そちらもご覧になって下さいねv

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