バレンタインギフト

 2月14日だとは気が付いていたけど、俺は受験でそれどころじゃなく。狼帝の部屋で最後の追い込みに入っていた。なんとかセンター試験はクリアして、すべり止めの私大は終了。あとは本命の虎王先輩の大学を残すのみ。
 俺とほとんど同じ大学を受けた狼帝は、余裕綽々で、今日は朝から出たり入ったりを繰り返していた。
 一体何をしているのかと言うと、チョコを渡しに女の子がひっきりなしに訪れるのだ。だからうちで勉強しようって言ったのに。
 何故だか狼帝は頑として譲らず。インターホンの音を聞きつつ、勉強することになったのだった。

 試験の予想問題集をやっていた俺に届いた女の子の悲鳴。なっ何? 何が起こったの。
 慌てて窓にへばりついて外を見た。
 そこには虎王先輩を中心に女の子の群れが。先輩、そんなに女の子を引きつれてきてどうするんだろう。だけど先輩だとは分かるんだけど、少し違和感を感じたのも何故だろう。ここから見た限りではいつもの先輩なのに。
 30分は経っただろうか。ようやく階段を上がる足音が聞こえ、先輩が顔を出した。

「冬哉、チョコ食べるか」
 ドンと置かれた大きな紙袋は二つ。目一杯詰まっていて。初めは紙袋に目が行っていたが、足元から上へと見上げた。
「せっ、先輩っ」
 俺は思わず椅子から立ち上がった。

 うっ‥嘘‥。
 先輩‥ムッチャ格好いい。

 普段から先輩は格好いい。それは嫌って言うほど分かってるけど、でもなんてのか、ちょっと見慣れた感じがあって。
 なのに‥なのに今日はいつもの先輩より10倍渋かった。
 前から思っていたけれど、この先輩が本気で飾ったら大変なことになりそうって。それが今日、しっかり証明されてしまった。
「先輩、その格好って‥」
「ああ、変か? 午前中撮影があったからな。帰りの電車を言ってしまったから着替えもせずにそのまま帰ってきたんだ」
「それであんなに女の子を連れて歩いていたの?」
「バレンタインだからって、うるさかったからな。だがさすがに今日は参ったぞ」

 そりゃ、この先輩見たら誰もが間近で眺めたくなるって。

 先輩は大学に入ってからバレーボールの雑誌に載った。その反響が凄かったらしくって、それからちょくちょく載るようになった。でもそしたらお父さんが「男が安売りするな」って言ったらしくって、それで先輩はずっと断り続けていたモデルクラブに入ったんだよね。自分を売るなら高値を、ってことだったらしい。
 もちろんバレーがメインなので、モデルはアルバイト程度なんだけど。それでなくても地元じゃ一番のスターだったのに、ファッション雑誌なんかに登場しちゃったもんだから、余所からも覗きに来る始末で。

「なんだ、そんなにおかしいか」
 自分の外見も姿も全然気にしてない先輩は、どれだけ今の格好が決まっているのか分からないのだろうか。
 ジッと凝視してしまった俺に向かって苦笑する。
「全然、おかしくなんかない。すっごい格好いい。先輩ってほんといい男だよね」

 俺がそう言うと、先輩はいつものニヤリとした笑みを浮かべた。
 うわっ、その姿で不敵に微笑まれたらどんな女の子でもイチコロだと思う。俺だってどうかなりそう。


 そう、先輩が撮影で着たと言う服は、最近流行のワーク系。パンツは擦れて穴が空きかけで、グレーの小汚い感じ。でも幅広のベルトの端が腰から垂れ下がっているのがなんかセクシー。上着もグレーで統一されていて。濃いめのシャツに、薄い色のシャツジャケットを重ね着して、その上にまだ黒の軽い生地のロングコートを羽織っていた。だけどボタンはシャツの下の方が止められているだけで、他はどれも止められておらず、ピッタリしたTシャツからは胸筋がハッキリと分かる。男臭さが充分匂う。

 それから髪の毛。先輩はバレーに全てを掛けているから、割と短めでいつでも洗える長さだった。おまけに染めたりパーマを当てたりなんてしたことがない。もちろんワックスやジェルなんて付けているのも見たことがない。だけど元の髪の色は少し茶色っぽい。それだけで充分目立っていた。なのに今日は、もう一段明るい色に染まっていて、なおかつメッシュが入っている。少しずつ束になって軽く立ち上がったヘアスタイルは、最近よく見かける感じだった。
 おまけに耳には銀のピアス。ピアスと言っても穴を空けるものじゃなくパチンと嵌めるタイプ。耳たぶの真ん中に1センチほどの銀がしっかり見える。

 そして、顔。ここが一番の問題だった。
 今まで先輩はこざっぱりした格好しかしたことがない。そこら辺が社長令息って感じだった。狼帝はまだそこに輪を掛けて、きっちりした格好が好きだけれど。
 それが、その先輩が、無精ヒゲを生やしていたのだ!
 下手をすれば、汚らしいとも取れる服装で、おまけに無精ヒゲ。普通の男なら思わず避けて通ってしまうかもしれない、そんな格好なのに、この先輩に掛かるととんでもなく渋い。男前。
 二十歳の先輩は二十五歳くらいに見え、凄く大人っぽく見えた。

「先輩‥ヒゲなんて生やしたんだ」
「今回はこんな服だったからな。伸ばしてきてくれと注文があった」
 おとつい見たときも少し生えていた。だけどたまにはヒゲも剃り忘れることがあると思って気にしてなかった。昨日は朝から出て行ってしまって泊まりがけの撮影だったから、丸々2日見ていなかった訳で。だけどたった2日でこんなに印象が変わるなんて。

「ヒゲを生やしたのって初めてだよね?」
「ああ、剃るものだと思っていたからな。似合わないか」
「ううん、先輩はヒゲが生えていてもいなくても似合ってるし、格好いいよ」
「それなら当分生やしたままでいるとするか」

 ええっ‥そっそれはちょっと。これ以上女の子が寄ってきたらどうするの? 先輩が遠くへ行ってしまいそうでなんかイヤ。
「嫌だ、やっぱり剃って」
「やっぱり変か?」
「うっ‥そっそうじゃないけど、だって‥あの‥」
 先輩の恋人みたいに、ヤキモチ妬いてるなんて言えない。それにそんなの女の子みたいだし。女の子ならヤキモチも可愛いのかもしれないけど。
「ヒゲ‥当たったら、痛そう」
 ごまかすために咄嗟にそんなことを言ってしまった。

「ふ〜ん、どういうときに当たるのか聞いておきたいな」
「えっと‥あの‥その‥」
「冬哉は当たるようなことがしたいのか?」
 でっでも、この先輩とだって一度くらいはしてみたい。飾った先輩を乱すことが出来たら、とてつもなく興奮しそうだった。

「うっうん‥。して」
「それじゃあ、バレンタインだし、チョコの代わりに冬哉自身をプレゼントしてもらおうか」
「なっなんで男なのにバレンタインのプレゼントをしなきゃならないの? 俺がもらいたいのに」
「雰囲気出るだろ」
 勝手に決めつけると、先輩はもらったチョコからリボンを外す。

 俺を裸に剥くと、そのリボンで両手を後ろ手に縛った。右足首にもリボンを付ける。
 先輩‥楽しそう。もしかしたら狼帝の誕生日にもリボンを付けられたんだけど、それが先輩の何かにヒットしちゃったんだろうか。

「先輩‥、なんか明るいうちから恥ずかしい」
 おまけに外にはまだまだ女の子が沢山いるのだ。
「冬哉は恥ずかしい方が萌えるから丁度いいだろう」
「そっそんな‥こと‥ないもん」
 先輩は俺をベッドへ腰掛けさせると、足を持ち上げた。リボンの付いた足首に軽く唇を這わす。
「いいプレゼントだな」
 そう言ってニヤリとする。

 ニヤリとされてゾクリとした。
 これから始まることを想像して一気に俺のモノは勃ち上がった。
 手は後ろで縛られているから、隠せない。恥ずかしくて閉じた足を割り開き、先輩は硬くなったモノを握る。

「んんっ‥」
 それだけで身体が震える。いつもと違う先輩が俺を煽る。反対の手でゼリーを塗り付けて、その指は下の口に侵入してきた。すぐにいい所を見つけ出される。

「あ‥んっ‥」
 息が詰まる。そこが良くて身体が丸まる。そこを押しながら、蟻の戸渡りも押されると、前立腺を揉まれているような感じになって、堪らない。一緒にモノも扱かれて、ムチャクチャ気持ち良くなってきた。

「ああっ‥先輩、‥ダメ」
 思わず倒れようとして、先輩に肩を掴んで止められる。
「まだだ。冬哉がもう一息興奮してから」
 それから俺を立ち上がらせ、先輩がベッドへ腰掛ける。そこへ跨らせられた。先輩に背中を向けて後ろから抱き締められる。だけど俺は素っ裸にリボンだけのはしたない姿だけど、先輩はコートを脱いだだけで、何も変わっていない。

 ヤダ‥すんごい恥ずかしい。
 後ろから抱き締める手は胸と中心を煽る。肩に唇が這って、ヒゲが擦れる。ああ、感触が違って男を感じる。
 あん、中も一緒に弄って欲しい。

 しばらく俺の外側だけ弄っていた先輩は、両足に腕を通し、俺を抱きかかえた。
 股間を晒す姿になって、恥ずかしさが増す。だけど先輩はもっと酷いことをする。
 俺を抱いたまま、先輩は立ち上がったのだ。そしてなんと窓に近づく。

「せっ先輩!」
「ほら、大人しくしてないと声が聞こえるかもしれないぞ」
 カーテンも引いてない窓からは、先輩の顔が見えて下から歓声が上がる。
 イヤッ、俺まで見えちゃう。
「ヤダッ‥先輩、お願い。下がって」
 ギリギリまで見せると、ようやく俺はベッドへと降ろされた。

「そろそろ入れるか?」
「うん‥先輩のが欲しい」
 見られるかもしれない、と思うと俺の身体は何故か酷く反応する。凄く恥ずかしいのに。一体どうしてなんだろう。
 先輩は俺の両足を肩に掛けると、そこへ突っ込んだ。
 大きなモノの圧迫感だけが俺を支配する。だけどゆっくりと侵入するそれは、カリの部分が前立腺を撫でて、快感へと変わる。
 うっすら目を開ければ、そこにはいつもと違うより男っぽい先輩が。凄く新鮮でゾクゾクする。

「ああっ、先輩。動‥いて、突い‥て、俺をイか‥せて」
 外からはざわめきが時折伝わって。俺はその中でヤられているように感じる。
 あうっ、その度に俺は緊張が走り、先輩を締め付ける。
 先輩はスパートを掛け始めると、俺のモノも一緒に扱いてくれた。
 そうして2人、ほぼ同時刻に果てたのだった。

 でも、帰ってきた狼帝にも先輩はプレゼントだから、と言って俺を差し出して、結局4回もやられてしまったのだった。

 今年もチョコは0。だけど先輩のチョコは腐るほどあって。
 中を開ければカードには違う男の名前が書いてあったりした。きっと先輩を見て、渡さずにはいられなかったんだろう。
 俺ももう当分見たくない、ってくらいチョコを食べたよ。

 狼帝はやるだけやったらまた出て行っちゃうし。何だか玄関へ出ていたのとは違うみたい。一体何しに、どこへ行ったんだろう。
 先輩はニヤニヤするだけで、教えてくれないし。
 だるい腰を抱えて、でも何だか身体はスッキリして、俺は勉強を再開したのだった。
終わり


 バレンタインのリクエストは冬哉くん自身をプレゼント、との声が一番大きくてちょっと迷いました。男が男へ、ってのはチョコでも結構難しいのに、自分をあげると言うのは、かなりラブラブでもやらなさそうで。(^^;;;
 どうしようかなぁ、と思ったんですが、結局先輩の格好良さを宣伝する話しになってしまいました。(^_^;) ご免なさ〜い。でもいつもより、少しワイルドな先輩を感じて頂けたら嬉しいです。そして先輩のファンが増えてくれたらもっと嬉しいです。(^^)
 皆さまも素敵なバレンタインをお過ごし下さいねv
 
2004年2月14日。龍詠

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