虎王先輩の回想1

 俺はバレーが好きだった。バレーさえ出来れば良かった。何も不自由してなかった。全て満たされていた。あいつに余計なことを教えられるまでは‥。

 冬哉が欲しい‥‥。

 俺の目の前で可愛らしく喘がせてみたい。
 羞恥に震える顔を見てみたい。

 だが、冬哉からして欲しいと言わせなければダメだ。気のない奴をムリヤリ組み伏せる趣味はない。嫌がっていても、それでも本人が選択して、「したい」と言わせるところに意義がある。
 そして冬哉が悦んでこそ価値があるのだ。

 こんな自分に気付かせてくれたあいつにはたっぷりと礼をしておいた。
 あいつ‥笹原、通称かま原には。

 事は中学3年に起こったのだった。



 中学の部活だけでは足りなくて、俺は小学校の頃から通っている、スポーツクラブのバレーリーグにも参加していた。俺の通っていたクラブは3階建てのかなり大きな所だった。
 1階はプール、2階はフィットネス&ジム、3階は体操が半面と、残りの半面は多目的コートになっていた。バレーの少年リーグは水曜と日曜に2時間ずつ練習があった。
 中3になってまでやってる奴は少ない。学校でもそうだったがここでも俺の天下だった。まあ、同学年の奴くらいじゃ、俺に逆らえるような強者は居なかったろうがな。

 この春の身体測定で179センチをマークしていた俺は、アタッカーとしてこの辺じゃ敵なしだった。そろそろ大人の部に移ろうと考えていた。そこで一応コーチに聞いてみた。そのコーチが笹原だったのだ。
 笹原はなぜか焦っていた。俺をここに引き止めておきたそうだった。別にその時は何とも思わなかった。だって当然だろう。俺が居た方が強いに決まってる。
 笹原もバレーを愛していた。しかしずっと続けるにはあまりにも身長が足りなさすぎた。俺の目測では167センチってとこだな。だからこんな所でガキ相手にコーチするくらいしかないのだろう。
 年令は確か24。俺と一回り違う。あまりにも優しすぎて、ガキにまで敬語に近い有様で、調子にのるガキどもからは完璧に舐められていた。付いたあだ名が「かま原」だった。そして嘘かほんとか、誰も確かめようがなかったが、男が好きだという噂もあり、そのあだ名が消えることはなかった。

「ねぇ、都築くん。せっかくみんな友達になったんだから、みんなで終わりを迎えませんか?」
 ふんっ、悪いが俺は同等か、もしくはそれ以上じゃないと人間と認めてないんだよ。当然この中にはそんな奴はいない。友達なんて思うような奴はこの世の中にだって非常に数が少ないのだ。
 かま原の言うことは取り敢えず無視をして、俺は大人の部へ移動するための手続きをした。移動してしまえばかま原に会うこともない。大人の部は違う人がコーチなのだ。かま原では務まらないのだろう。

 最後の日、品行方正な俺はコーチにきちんと挨拶をした。それで終わりだったはずなのにかま原は引き止めた。
「あっあの‥都築‥くん。良かったら‥会えませんか?」
 もじもじと赤くなってそんなことを言う態度に、俺はすぐさまピンときた。
「コーチって男が好きなんですか?」
 覚悟を決めて言っただろうに、それともそこまで言って俺が気が付かないとでも思っていたのだろうか。それならば非常に腹立たしいのだが、かま原は狼狽える。鬱陶しいので追い打ちをかけてやる。
「そうじゃなきゃ会いたいなんて言わないですよね?」
 追いつめられて開き直る。
「そっそうです。私は男にしか興味がないんです。君は私の理想だった‥」
 10も年上の、しかも男に告られても何の感動も湧かない。
「悪いけど、俺は男に興味はない」
 かま原は開き直りの強さか、珍しく食い下がる。
「一度っ切りでいい‥ですから。きっ気持ち良くして、‥あげ‥ます」
「女には不自由してない。いくらでも抱いてくれとやってくる。それにあんたがそんなこと言っちゃぁ、犯罪なんじゃないの?」

 俺はまだ未成年だ。それに時折溜まるモノが抜ければいい、その程度にしか射精することにも思い入れがない。出たらスッキリする、ただそれだけだった。スッキリしたいために言い寄る女の相手をすることはあった。しかし快感を追いたいと思ったことがなかった。また追いたくなるほどの快感を味わったことがなかったのだ。
「わっ分かってます。でも合意の上なら‥女の人には負けないくらいに何でもします」
 必死さよりも、へりくだった態度に加虐心が疼く。食指が動いた。
「ふーん、俺が思うようにしていいわけ?」
「いいです。こちらから言い出したことですから」


「やっぱ肛門に突っ込むわけ?」
 俺はかま原の部屋へ来ていた。ついてきたはいいが男相手では気がすすまない。虐めるだけ虐めてやって、置いて帰ろう、そんな気でいた。
「‥そうです」
 これは後から知ったのだが、思い合っていればそこまでしない関係の方が多いらしい。しかしこの時のかま原は説明できる身分ではなく、そう答えるしかなかったのだろう。
「俺に入れて欲しいの? それとも入れたいの?」
「いっ一緒にイけれればそれでいいのですが、君の好きなように」
「俺は突っ込まれるなんてまっぴらごめんだ」
「じゃあ、入れますか?」
「そんなとこに入れるのもな‥」

 ハッキリ言ってやる気がなかった俺は気のない返事しかでない。しかし俺はかま原がホッとしたのを見逃さなかった。そうなると話は別だ。
「やっぱり入れたい」
「そっそうですか」
 その時かま原の後ろの経験は限りなく0に近かったのだ。まあ、経験が有ろうと無かろうと俺には関係なかったんだが。
「で、そんなとこいきなり突っ込めばいいの?」
「いっいえ、あの、少し広げないと入れる方も入れられるほうも辛いと思います」
「広げるってどうやって」
「指を入れて解して‥」
「ふーん、それ自分でやれよ」
「えっ‥‥‥、わっ分かりました」

 10も年上の大人が、中学生の俺の言葉でじわじわと追いつめられていく様は、見ていて酷く昂揚する。
 かま原は俺にシャワーを勧め、その後自分も浴びに行こうとした。
「じゃあ、ちょっと準備してきますので、少し待ってて貰えますか?」
 時間のかかりそうなことを示唆する。
 虐げることしかここでの楽しみを見つけられない俺は、一番嫌がりそうなことを選ぶ。
「シャワーだけ浴びてきたら、ここで準備して。俺の目の前で」
「えっ」
 かま原は止まってしまった。
「何でも言うこと聞くんだろ。俺の」
「ええ」
 決意は固いのか、了解する。


 風呂から出てくると、引き出しからチューブを取り出した。
「何それ?」
「潤滑剤です。こういうのを使わないと女の人と違って分泌物がないですから、引きつれて切れて血が出たりします」
「そんなのまで持ってるなんてコーチってかなり好き者なんだ」
「ちっ違います。これは勝手に置いてった物で」
 相手が焦るほど俺は楽しい。
「男を銜え込んで悦んでるような人だったんだ」
「そうではありません。私は君だから何でもしようと思っているだけです」
 きっぱりと言う事は言う。かま原なんてあだ名が付いているが、なよなよしてるわけではなさそうだ。

「なんでもいいよ。早く初めて」
 Tシャツにジャージで居たかま原、そう笹原は下を脱いだ。ベッドの上で座り込むと両足をそろそろと開く。指に潤滑剤を付けると肛門に塗り込めた。
「もっと足開かないと見えない」
 笹原は真っ赤になり必死になって足を開く。それだけで笹原の前は硬く勃ち上がっている。男のモノなんて見たって何も嬉しくないが、この耐えてる姿を見るのは何とも楽しい。普段はおっとりと優しいだけの整った顔が、羞恥と熱とで卑猥に歪む。
「次、進んで」
 笹原は開けるだけ開き、全てをさらけ出した後ろに少しずつ指を埋めていった。
「わりと簡単に入るんだ」
 初めて見たので素直に感想が出た。
「指‥1本くらいなら」
「それで?」
 その指を大きく動かし始める。絡みつく口を押し広げるように。ぎこちなかった動きが滑らかになってくると2本に増やした。今度は抜き差しを始める。抜いてくるときは幅を持たせて。口端が捲れて中が見えそうになる。
「けっこう伸びるんだ。ねえ、開いて見せてよ」
「そっそんな‥こと」

 笹原は初めて抵抗らしき物を見せた。抗われると俺の征服欲が燃える。男に対して性欲はないが、反抗されると押さえたくなる。俺は支配欲が強いのだ。しかしこう思った時点で、俺はかなりこいつのことを気に入っていたのだろう。何でもかんでも押さえつけたいわけではない。俺の滅多に残らない荒い篩(ふる)いに残ったものだけに持つ感情だ。
「出来ないの?」
 しかし言うことを聞かない奴には興味がなくなる。矛盾してるようだが、したくないこと、恥ずかしいこともやろうとして葛藤するところが好きなのだ。征服欲を満たすために無理を言う。その無理に自発的に従われたときにこそ、欲は満たされる。ムリヤリ押さえつけるなんて、バカでも力さえあれば出来る、頭の悪そうなことをこの俺が楽しめるわけがない。

 しかし中3のこの時にそんな理屈が分かっていたわけではない。俺は自分の興味を引くかどうかだけで判断していたのだ。

 返事のない笹原を見て俺は立ち上がった。
 それを見て笹原は焦る。そして引き止める。
「でっ出来ます」
 2本の指を入れていた右手に加え、左手の指も差し込む。そして歯を食いしばり指を震わせながら下の口を広げた。
「もっと広げて」
 震える指で思い切り伸ばす。かなりの力を入れてるようなのに、口は息づくように伸縮する。綺麗な肉の色が見えた。好きな者が見たら相当に淫猥な姿であろう。

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