好きでもないのに 2

 将人のもっと乱れた様が見たくて、少し面白味に欠けてきたと感じていたある日、克海のクラスメイトがいいことを話していた。
「‥ケツに入れてやったんだよ。そしたらヒイヒイ言って悦んでたぜ」
 これだ、と思った。
「なんだ、そんな簡単に入るのか」
「何? お前の女も好き者なのか」
「いや、俺が入れてみたいだけだ」
「克海、お前わりとえげつない奴だな」
 そんなことを言われたが、大人のおもちゃを売ってる店を教えてくれた。

 しかしやる気で色々買ってきたのはいいが、男とはしたことがない。きっかけが掴めないでいた。それに慣れてきたとはいえ、まだそれなりに満足していたのだ。

 将人の部屋にはもう泊まり込んでいなかった。なぜなら夜になると将人は素直に克海の部屋へ来るようになったからだ。そしてちょっと悔しそうに「してくれよ」と言う。
 克海はその台詞を聞くと心底痺れた。そしていつもと同じように指で後ろからも煽ってやり、自分も間に1回イき、将人はその前後に2回も抜いてやるのだ。これだけ気持ち良ければ止められないだろう、克海はそう思っていた。実際にどう見ても気持ち良さそうであった。


 しばらくすると2日に1回だったのが3日に1回になり、気がついたら前にやってから1週間が過ぎていた。そのことを将人に言うとテストが近いからだと説明された。
 たしかにあのT校で上位の成績を保っていようと思えばそれぐらい勉強しないといけないのかもしれない。克海はそれを信じ、テストが終わるのを待った。

 しかしテストが終わって1日が過ぎ、2日が過ぎても将人は何も言ってこない。さすがに3日目には追求しに行った。
「お前どういうことだよ。もう3週間近いぜ。そんなに抜かずに平気なわけねぇだろう!」
「何だ、まだ飽きてないのか。いい加減、もういいだろう」
 将人は克海が飽きるのを待っていたのだ。子供が遊んでいるぐらいに思っていたのだ。これは計画的だったのだ。
 将人も気持ちいいものだとばかり思っていた。やらずにいられないほどに、自分を必要としていると。それが今、何でもなかったことにされたのだ。克海など必要ないと。

 そうと分かったとき、克海の何かが壊れた。

「いいか、待ってろよ。すぐに戻ってくる」
 克海はいったん自分の部屋に戻る。将人は何度ついたか分からないため息と共に独り言を吐く。
「一体あいつは何が楽しいんだ」
 すぐに克海は戻ってきた。手に黒いビニール袋を提げて。
「裸になれよ」
 いつもは下しかおろさないのに初めてそんなことを命令する。将人がしぶしぶ脱いでる間に制服のネクタイを捜して取った。真っ裸になると首にネクタイを一巻きする。その残りで両手首を一纏めにした。
 将人の怜悧な顔に恐怖がちらつく。それは克海の加虐心を一気に煽った。

「足開けよ。暴れると首が絞まるぜ」
 将人が恐る恐る足を開く。克海は袋から何かを取りだし将人の後孔に塗りつけた。
「あっ、なっ何?」
 将人からは見えない場所でされたことに余計に不気味さが増したのだろう。こんな不安気な声は聞いたことがない。克海の口からは自然と笑いが漏れる。
「いいから、大人しくしてろ。すっげぇ気持ちいいことしてやるから」
 たっぷりとローションを塗るとまた袋から何かを取り出す。そしてそれを滑りが良くなったところへ突っ込んだ。親指ぐらいのモノは難なく将人の中へ入っていった。克海は自分の指も入れていい位置に押しやる。
「何? 何を入れたんだ」
 立てた膝の間から見える顔は脅えて蒼白になっている。
「行くぞ」
 掛け声と同時に、将人の中から出ている線に付いてるスイッチを入れた。
「あぁっ、なっ何‥だよ‥」
 将人の体はビクンと跳ね、足が自然と閉じる。見ていると脅えてしなだれていたモノがムクムクと大きくなっていった。
「こんなになって、気持ちいいんだろう」
 大きくなったモノを少し扱いてやる。
「‥あっ‥、やっ止め‥」
 十分に怒張させるとまた袋から何か出した。それを弾けそうになってるモノに巻き、締めた。
「‥クッ‥うっ‥‥なん‥だ‥よ?」
「ふふっ、いい格好だな。将人。説明してやろうか?」
 目が頷く。

「まず、ローションを塗った。今お前を気持ち良くさせてる物を入れるためにな。それでそのいい物とは、ピンクローターだ。ここで調節できる」
 そう言って一度スイッチを切る。将人がホッとしたのを見て、意地悪くまた入れる。そしてそのスイッチも中に入れてしまった。
「それからペニスに付けたのはコックニッパーだ。これでお前は俺に頼まない限り絶対イけない」
 苦しげな表情の将人の顔からメガネを取ってやる。
「壊れるといけないからな」
 机に置くとそのまま出ていこうとした。
「まっ待て‥」
「ああ、言い忘れた。イかせて欲しけりゃ俺に泣いて頼めよ。俺は隣の部屋にいるから」
 もうすでに泣きそうになってる将人を置いて克海は自分の部屋に戻った。


 30分は経っただろうか。時折聞こえる苦しげな声は、はっきりと克海を呼んでいた。
 それでももう10分待った。
「かっ‥克‥海、頼む‥。来‥てくれ」
 ついに将人にお願いされたのだ。克海は大声で笑いたいのを抑え、将人の部屋へ行った。
 出て行くときには蒼白だった将人の顔は上気してうっすらと紅かった。汗ばんで髪の毛が額に張り付いている。克海が観察していると将人は大きく震えだした。
「あぁっ‥あっ‥‥あああっ」
 まるで達したときのように痙攣し、しかし一度も休む間がない。ずっと震えっぱなしなのだ。出口が無いせいなんだろう。腰を浮かせ何度も天を突く。出るところを求めていた激流は出て行かなくてもしばらくすると退いていったようだ。

 将人はぐったりと体を弛緩さす。まだ残りがあるかのように時々小さく震えがくる。
「もっ‥もう‥イヤだ‥」
「イヤじゃない。イイだろう。そんなに絶頂感が味わえるなんて、中々無いぜ」
 切なげな顔で睨んでくる。しかしそんな顔は克海を満足させるだけだった。
「‥早く‥取っ‥てくれ‥」
「ふーん、どっちか一つだけなら取ってやろう。どっちにする?」
「締‥めてる‥方‥だ」
 分かったと呟くと克海は穴から出てる短い線を引っ張った。
 ずっと送られていた刺激が無くなって、動きづめだった腰が落ちた。それはそれでいいのだが、将人は何よりも先に締めてる物を取って解放して欲しかったに違いない。克海はあくまで虐めるつもりだった。
「早‥く、‥こっち‥も」
「どっちか一つって言っただろう。もうダメだな」
「お前‥、酷いじゃ‥ないか。こんなこと‥まで‥して」
「それは俺を悦ばしたら取ってやる」
「どう‥いうこ‥とだ?」
「こういうことだ」

 克海は視覚からでもう十分に勃ち上がってる自分のモノを取り出すと、さっきのローションを塗る。将人の顔が克海のやりたいことが分かって恐怖に歪む。
「いいか、コックニッパーが取って欲しければ俺に頼まなくちゃいけない。取る条件は俺が悦ぶことだ。これを見たら分かるだろ。それにぴったりくることを言ったら取ってやるよ」
 賢い将人にはすぐ分かったようだった。
「そっそんなこと‥言えるか。入れたきゃ‥入れれば‥いいじゃないか。どうせ俺は‥逆らえないんだから」
 ローターが無くなって幾分話しやすくなったのか、開き直ったことを言う。
「ふーん、じゃお前は朝までそのままでいろよ」
「なっ‥何でだよ。どうせ‥突っ込みたい‥だけなんだろう。‥やりゃいいじゃ‥ないか。イくばっかりになってる‥じゃないか」
「こんなのは自分で慰めたって構わない。俺はやりたいんじゃなくて聞きたいんだ。さあ、どういえばいいか分かってるんだろう。言えよ。頼めよ」
 克海は将人を追い込んでいく。こんな堰き止められた状態で朝までいるのは辛いだろう。刺激の元が無くなったから落ち着いてはくるだろうけど、追い込まれている分はどうなるんだろうか。

「取って‥」
「だから取るにはどうするんだ」
「それを‥突っ込む‥んだろう」
「取るには入れるしかないわけだ。じゃあなんて言うんだ?」
 こんな屈辱的なことを言わされるなんて今まで生きてきて考えたこともなかっただろう。将人は悔しそうに口を噛むと黙ってしまった。

 克海はそれに焦れて自分の指を入れた。
 さっきまでずっと振動が送られていたためか、中はかなり熱かった。将人のいいところを指でさする。
「ほら、言えよ」
「うっ‥」
「イきたいんだろう。言えよ」
「あっ‥ん‥」
「ほら、お願いしないといつまでもこのままだぞ」
 ずっと黙っていた将人は絶えられなくなったのかとうとう降参した。
「入れてっ!」
「そうか、そんなに欲しいのか。すぐに入れてやるからな」
 将人の壊れてしまったプライドのことなど構わずに、掻き回していた指を引き抜くと、変わりに猛っているモノを当てた。
「いっいやだ‥」
 やはりそれは恐いのか。将人は逃げ腰だ。
「イヤじゃないだろう。なんて言うんだった」
 克海は根気よく言い聞かせる。
「いっ入れて‥」
「そうだ。お前は入れて欲しいんだ。分かったか」
 そして当てていたモノを押し込んだ。少しの抵抗だけで、ローションの滑りを借りてツルンとカリまで入っていった。
「ほら、もっと奥に進んで俺が悦ばないと取ってやらないぞ」
 もうプライドが壊れてしまった将人に覇気はない。
「もっと‥入れて」
 また克海はニンマリとすると奥まで進める。
「そうだ、いい子だ」
 涙を溜めてる目尻を拭ってやる。
「これからイきたければ自分から入れてとお強請りするんだ。分かったな」
 克海はくどいぐらいにそれだけを将人の頭にたたき込む。
 そして自分の欲望を吐き出すために動き出した。

 初めはゆっくりと、だんだん早く。ほどほどの動きに将人が付いてこれるようになると、今度は将人のいいところを突く。
「‥あっ、‥取って。あっ‥早くっ‥」
 そのうち将人はまた激しく痙攣しだした。克海を呑み込んでる口も痛いぐらいに締まる。
「ああっ‥あああ‥ぅわぁぁ‥」
 激しい震えは収まらない。無茶苦茶に締め付けたまま腰を動かす。克海は少しヤバそうな気がして将人の腰を無理に押さえつけ、締めていた物を取ってやった。

「ぁぁぁぁあああっっっ‥」

 絶叫に近いような声を上げて将人は果てた。何度も何度も白濁したモノを吐き出した。もう考える力も残ってないようだ。
 しかしぐったりした体にまだ克海は自分を打ち付ける。将人のモノもまだ萎えていかない。よっぽど溜まっていたのだろう。克海がイくときにもう一度達したのだった。

 ネクタイだけとって放心状態の将人をそのままにして部屋のドアを開けた。
「いいか。これから毎日こうだからな。毎日絶頂を味合わせてやる。早くイきたいときは可愛くお強請りするんだな」
 そう捨て台詞を残して出た。


 将人は毎日「入れて」と言わされた。それを言わないと苦しいままで放って置かれるのだ。それが入れてもらうとイけるんだと覚え込まされ、挿入されることが気持ちいいことだとなってしまった。
 もう克海が何も言わなくてもすぐに入れてと強請ってくる。メガネを外すと快楽モードに切り替わる。克海は好きなだけ将人を抱いた。将人も啓先輩のことは忘れてしまったようだ。この快楽を覚えてしまっては駄目だろう。
 飽きることなくセックスに耽る。


「ああっ、お前たまには残しとけよな」
「もっと早く起きりゃいいだろう」
「そんなこと言うなら起こしてくれればいいだろう」
「もう、子供じゃないんだから」
 また将人は最後のトマトをちらつかせる。
「ふふん、お兄さまって呼んだら食わせてやるよ」
「へん、そのお兄さまは弟にしてもらうのが大好きなんだよな」
「なっ何を‥言うんだ」
 将人が赤くなって怯んだすきにトマトにかぶりつく。
「いただきっ!」
「あっ、お前」
 克海は将人の耳に口を寄せる。
「将人もいただき‥」
「バッバカ野郎。行って来ます」
「おおー、行ってらっしゃい。今日も待ってるわ〜」
 克海がおどけてそんなことを言うと、わざわざ引き返してきて頭をはたかれた。
 それでも何だか楽しい克海だった。

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