このシスコンめ。
 慌てて口を塞いだが、時既に遅く。
 驚愕の新事実は、その場の人間全ての耳に届いた。



シスコンとブラコンの邂逅



 その言葉に真っ先に反応したのは、やはりというべきか玉城だった。
 似合わねー、と大声でゼロを指差す。大爆笑。当のゼロはといえば、CCの口に手を当てたまま固まっていた。しまったどうする、一切の素性を隠し通していたのにこんなふざけたことで、いや家族構成くらいどうとでもなるか? イレギュラーに弱すぎる彼は、予想だにしなかった共犯者の失言に半ばパニックに陥っていた。姉でしょうか、妹でしょうか。ディートハルトがなぜか嬉しそうに呟いた。姉も妹も把握しきれないほどいるが、そんな返答、した瞬間に身元がバレる。周囲にどんな対応をしたものか迷った挙句、彼はCCを詰ることにした。貴様、なんて事を。自分で自分の失言に驚いていた彼女は、それを聞いていっそ開き直ることにしたらしい。

「大変だな、ゼロ」
「お前の所為でな」
「そうだな」
「……少しは反省するとか謝るとかするつもりはないのか」
「私はCCだからな」
「それを言えばなんでも罷り通るだなんて思ってるんじゃないだろうな」
「ふん。別に構わんだろう。妹の一人や二人いる人間なんて沢山いる」

 妹さんがいらっしゃるんですか! 歓喜に顔を綻ばせるディートハルト。
 何故こんなよく分からない事態になったのだったか。誰が最初に言い出したのか、戦う理由について述べ合っていたのだ。
 玉城は自分のためと、将来の夢を豪語して。
 藤堂は誇り高き日本のためと、はっきりと。
 扇は親友の遺志を継ぐためにと、少しためらいながら。
 ラクシャータは技術を活用するためと、妖艶に微笑んで。
 ディートハルトはゼロを撮るためと、楽しそうに。
 カレンは兄と日本のためと言いながら、心の中でゼロの力になるため、と呟いた。
 よくぞまあ、ここまでバラバラな人間が共に活動できるものだ。そう思えてしまうほどの統一性のなさ。そういえば彼らは人種性別年齢全てがそれぞれ違っていた。素性を全くといっていい程明らかにしない人間が統括したのだから、それも不思議なことではないのかもしれないが、軋轢がそれほど表面化していないのはもしかして凄いことなのではないだろうか。ゼロが唯一自分で露呈させた、ブリタニア人であるという事実はただその場の勢いで言ってしまっただけのことだと思っていたが、実際はそうではないのかもしれなかった。統率者が異邦人でなければ、どうしてもイレブンの多い騎士団において、ブリタニア人の差別だけはどうしようもなかっただろう。

「CC」
「……悪かった」

 更なる失言に、さすがのCCも謝罪する。基本的に周囲を気にしない我が道を突き進む彼女は、ともすれば会話している人間以外の存在を忘れがちだ。
 団員達が思い思いに会話を楽しむ横で、ゼロは一人PCの画面に向かっていたのだ。情報収集をしながら戦略を打ち立てつつ、横耳でその会話から幹部達の性格・傾向を把握して今後の戦略に活かすという並列思考に玉城の声が挟まった。そういやさー、どうしてゼロは戦うんだよ? 当然黙秘した彼に、玉城は言い募る。それくらい教えてくれたっていいじゃんか。一応カレンは咎めたものの、彼女だって気になっていた。どうしてゼロはゼロとなったのだろうか。調子に乗った玉城がそろそろ鬱陶しくなったゼロが、流石に反応しようとしたところでCCが口を挟んだ。教えてやればいいじゃないか、それくらい。
 それくらい、と彼女は表現したが色々複雑なものがあった。妹のため? 母のため? それとも自分のため? あとついでに日本のため? 名目上は正義のためとなっているが、ここで訊かれているのはそういうことではないだろう。正義のためにゼロとなった、その理由。
 喚きたてる玉城に辟易しながらも、とりあえず当たり障りのない返答をした。徹底しすぎる秘密主義も不信感を煽るだけだろう(すでに遅すぎるような気もしたが)。
 戦う理由。それは、大切な人を、守るため。
 彼らは色めきたった。え、なに。誰、ゼロの大切な人って、誰。特にカレンの頭はぐるぐるぐるぐると回った。大切ってことは恋人かしら恋人かしら恋人かしら恋人かしら恋人恋人恋人恋人。
 そして、ああやっぱり言わない方がよかったか、と少し後悔し始めたゼロに、CCは言ったのだ。このシスコンめ。彼女はゼロが困っている様子を見るのが楽しいらしい。

「妹のために戦う、か。案外ゼロも人間らしいんだな」

 さりげなく失礼な扇。非人間的過ぎるゼロに不信感を抱いていた彼は、すこし安心したらしい。小さく微笑んで、ゼロが妹を可愛がる様子を想像してみる。あれ、想像できない。ゼロがシスコンって、似合わなすぎだ。
 藤堂はふむふむ、と寡黙に頷いているが、一体何を考えているのかは分からない。ゼロの持つ意外な人情に感心でもしているのかもしれない。だって武士だし。
 そんな彼らの反応に、ゼロは不快さを隠そうともしなかった。悪かったなシスコンで(さすがに自覚はあった)。なおも爆笑を続ける玉城に怒りが募る。次の戦闘で一番危険な役割を課してやろう。文句を言われたら、信用しているだとかお前にしか出来ないだとか言い包めればいい。つまり、八つ当たりだった。

「妹………かあ」

 大切な人とやらが恋人とかではなくて心底安心したカレンは、小さく呟いた。妹。カレンも妹だった。過去形になってしまうのは、兄が死んでしまったから。――ゼロも、兄なんだ。
   カレンは兄が大好きだった。占領前、一緒に暮らすことが出来ていた、あの頃はとても幸せだった。喧嘩もした。それでもすぐに仲直りをした。ずっと一緒に居たかった。なのに死んでしまった。

「ゼロ!」
「はい!」

 立ち上がってばしんと手のひらを机に叩き付けたカレンの形相に、ゼロは思わず良い返事をした。なんだなんだ。二人に注目が集まる。
 カレンは兄を亡くして哀しかった。生き急ぐようにレジスタンスに参加し、戦いに身を投じるほどにその出来事は彼女を腹立たせた。
 ゼロは、危険な立場にいる。いつその命を散らすとも分からないような、黒の騎士団のリーダー。もし彼が死んでしまったら? カレンはきっと嘆き悲しむだろう。多分立ち直ることなんて出来ない。しかし、彼には妹がいるという。兄が死んだ妹の哀しみを、彼女はよく知っていた。ゼロが愛しているという妹が、ゼロを愛していないはずがない。というかゼロを嫌う人間とかマジありえねえ。もしもの事態が起こったら、彼の妹はカレン以上に嘆くだろう。そんなこと、許せない。自分と同じような人間をこれ以上増やしてはならない。

「あなたは、絶対に私が守りますから!」
「あ、ああ、よろしく?」

 カレンの突然の決意表明をゼロは戸惑いつつ受け取った。彼は乙女の複雑な思考回路など読み取れない。
 なんとなく理解した元レジスタンスメンバーの生暖かい微笑と、玉城の爆笑から逃げるように彼はその場を立ち去った。



(今日から一週間ピザ抜きだ)(私に死ねと言うのか!)







あーぐだぐだになってしまった。うん、まあCCはこんな失言しないだろうけど、そうしないと話が作れないから(ミモフタモナイ
そしてやっぱり私の小説は玉城が大量に出張る。大好きだから。大好き。玉城大好き。






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