注:死んだ人間が普通に生きてます>< っていうか色々謎状況






晴れた空の下で



 こっちよ、とユーフェミアがスザクの手を取り駆け出した。広大な大地。オーストラリア。マオが買ったという家は大きく、全員が難なく収まった。
 ああ。息を思い切り吸い込む。気持ちがいい。
 青空は広く彼女達を包み込んでいる。租界の様に高層ビルが立ち並んでいないため、視界を邪魔するものはなにもない。
 しゃがみ込むユーフェミアとスザクの姿を遠目に見ながらCCは笑った。

「いいのか?」
「なんのことだ?」

 ティーカップを片手に、コーネリアが嘯く。もう中身なんて入っていないのに。明らかに最愛の妹のことを気にしていながら、彼女は必死に耐えていた。ユーフェミアの幸せを、姉の我がままで妨げてはならない。多分そう自分に言い聞かせでもしているのだろう。カップを机に置き、ティースプーンで底を突付く。だからもう、中身なんて入っていないのに。

「ちょっと、羨ましいです」

 CCが話しかけたもう一人であるナナリーの微笑みは、すこし寂しそうだった。眩しそうにスザクを見る彼女は、未だに彼を恋慕しているのだろうか。――そう、ナナリーは“見て”いた。その両目は開き、きちんと現実を見据えている。
 咲世子がコーネリアのカップに紅茶を注ぐ。平和だな。思わず呟いてCCは席を立った。
 平和だった。テロも侵略も戦争も何もかもなかったかのように、彼女達は平穏に暮らしている。軍人、テロリスト、学生。そんな壁はここには存在しない。毎日女性が交代でご飯を作り(セシルと男性陣に作らせてはいけないことはすぐに分かった。ルルーシュのご飯は美味しかったのにと、こっそりCCは嘆いた)、男性が他の家事を手伝う。後は、自由だ。買い物に出かけたり、チェスをやったり、機械弄りをしたり、時には喧嘩をしたり。各自が得意分野を活かして生活する。平穏だった。
 その中で一番何もしていないと思われる彼女は、ユーフェミアとスザクに近づく。無粋? 知ったことか。寧ろ彼女は、無粋と分かっていて敢えてやる。

「スザク!」
「ごめん、ごめんって」

 何だろう。スザクの手元を見ると、ぐちゃぐちゃになった、多分花だったもの。もしかして花冠でも作るつもりだったのだろうか。しかし、それにしては。

「不器用だな」
「CCさん! 聞いてください、スザクったら」
「聞かなくても分かる。この男にちまちましたことをさせては駄目だろう」

 寧ろそういうことは、ルルーシュの方が得意だったはずだ。悉く彼らは正反対だった。面白いとさえ思えるほどに。
 項垂れるスザクから花冠(多分)を奪い取る。ああ、これはもう。茎という茎がばっきばきに折れ曲がり、花びらは取れている。最悪だ。

「こういうのはもっと、丈夫な花でやったほうがいいんじゃないのか?」
「でも、似合わないかな、って思って」
「似合う?」
「うん。ルルーシュに、あげようかなってさ」

 なるほど。確かに彼は、白詰め草というイメージではない。無垢というよりは、もっと小さな花が連なる美しさが似合う。そう言ったらきっとルルーシュは怒るのだろうが。
 いや、そもそも花冠を貰うという行為に怒りそうだ。怒って、説教して、それから。多分そっぽを向いて受け取るに違いない。容易にできた想像に、CCは思わず笑ってしまった。

「どうしたんだい? CC」
「いや……喜ぶだろうと思ってな」
「そうかな!」

 彼女の言葉に喜ぶ二人を置いて、CCはキッチンへと歩いた。小腹がすいた。






 ぺたぺたと床を踏みしめていると、いい香りが漂ってきた。小麦粉とバター。覗き込むと、そこにはクッキーを皿に盛る女性たち。

「あら、CC」
「どうしたの?」

 なんの影もなく笑う彼女たちに、CCは正直に言った。腹が減った。じゃあ、と皿を差し出されたがCCは首を振る。ピザ食べたい。
 途端、シャーリーがむっと眉を寄せた。

「駄目よ、そんなのばっかじゃ栄養偏るんだから!」
「私は構わない」
「シーちゃん以外の皆は構うの」
「ルルーシュは構わなかったが?」

 思わず出してしまった彼の名前に、シャーリーは低く呟いた。まったく、あいつったら。彼女にとって、女性にそんな食生活を余儀なくさせることは万死に値するらしい。
 仕方がない。自分で注文するか。電話に向かいかけたCCに、再び皿が差し出された。

「クッキーならいらな……なんだ、これは」
「クッキーよ?」

 何でクッキーが青いんだろうか。食欲が激減する。にっこりと笑うセシルの混入した物質の説明を聞きながらその背後に目をやると、泡を吹いて倒れたリヴァルの姿。一体どんな味だったんだ。ミレイさえも引きつっている。
 CCは死なない身体を持っているが、毒を食べたら苦しい。苦しいのは出来れば避けたい。
 全力で逃げ出した。






 慣れた番号を押し、受話器を戻すと奥から悲鳴が聞こえてきた。なんだろうか。ピザが届くまでの暇つぶしにと足を運ぶ。
 果たしてそこには人を食った笑みを浮かべるロイドとラクシャータ、がくがくと震えるジェレミアがいた。ニーナがおどおどとジェレミアから距離を取っている。
 そして部屋の中央には、オレンジ色の……オレンジ? 最近研究者組が揃って篭っているとは思っていたが、お前ら何してんだ。

「あ、CC〜。見てよ見てよぉ、ほら、オレンジ型のナイトメア〜」
「凄いでしょーぉ? これ、間抜けな格好してるけど実はぁ」

 聞いてもないのに語りだす彼らに背を向ける。最新鋭の技術を駆使して制作するものじゃないだろう、これは。なんという無駄な。しかも馬鹿みたいににリアルだ。
 呆れにものも言えないCCに、オレンジ型ナイトメアを激写していたディートハルトが叫んだ(こんなの撮って楽しいのか?)

「CC、今からゼロの所へ行きますか?」
「……さあ? 気が向いたら行くだろうが」
「でしたら、伝えておいてください。すぐに現像しますから楽しみにしていてください、と」

 なるほど、ルルーシュのためだったか。しかし彼はオレンジのナイトメアなど見て喜ぶだろうか。
 だったら今すぐ見せに行けばいいと喚くロイドと、まだ不安定だろうがボケと嘲笑うラクシャータ。いくらたっても反りのあわないままらしい彼らに泣きそうになるニーナの声を無視して、今度こそCCは立ち去った。
 そろそろピザが届く。






 立ち上る匂い。これぞCCの待ち望んだ――おい。

「お、CC。これ美味いな」
「……………なにを、している」

 地の底から這うような声を出して、CCは玉城に詰め寄った。チーズの焼けるにおい。咀嚼する音。玉城が勝手にピザを食べていた。八割のピザが無くなっていた。
 もう一切れ、と手を伸ばす彼の手を踏みつける。死ね、死ね。しかも玄関で食べるとか、何やってんだこいつは。死ね。殺す。
 扇が申し訳なさげに苦笑していた。ごめんな、止めたんだけど。嘘付け、と彼女は思った。ヴィレッタに腕を組まれた彼の鼻の下は伸びきっている。絶対こいつ女以外は目に入っていない。
 最愛のピザを奪われた怒りのままにカレンを見ると、両手をばちんと合わされた。お前もか。

「ご、ごめん。ほら、運動したらお腹すいちゃって」
「いーだろー? ピザぐらい」

 踏まれた手をさすりながら笑う玉城。今度は顔面を蹴りつけてやる。
 黒の騎士団や軍に所属していたメンバーは、毎日のように何かしらのスポーツに興じている。元々訓練を受けた者たちだ。身体能力はすさまじく、いつだって全力。そりゃ疲れもするだろうが、だからといってCCのピザを食べていい理由にはならない。
 恨みがましく四聖剣や皇族の騎士達を見遣る。ものすごい勢いで目を逸らされた。お前らもか、お前らもか!
 何度暴行を受けようとへこたれない玉城が立ち直り、こっそりサイドメニューにまで手を伸ばした。ふざけるな。一球入魂、足先に気合を込めて玉城の股間にシュート。悪を討ち取った達成感に浸りつつ、CCはそれを救出した。

「あ」
「何だ?」
「プリン。もしかしてルルーシュ?」

 顔と性格に似合わず、プリンはルルーシュの好物だった。
 なんとなくメニューを眺めていたら目についたから頼んだわけであって、別に奴にやろうと思っていたわけじゃない。断じて。
 だがほとんどのピザを食べつくされてしまい、食欲は失せていた。人の食べかけなんていらない。だからまあ、欲しがるならルルーシュにやってもいいだろう。
 ぞんざいにプリンを掴んで、CCはルルーシュの元へと歩き始めた。悶絶する玉城は無視。






 廊下を通っていると、頭に手を当ててなにやらブツブツと呟いているクロヴィスを見かけた。ちょっと危ない人みたいだ。
 素通りしようとしたら、がっしりと肩を掴まれた。

「なんだ。お前、今日はチェスをやるんじゃなかったのか?」
「休憩中!」

 朝食の時、約束を取り付けているのをCCは見ていた。どうせまた負けるのに。そしてこの様子だと、やはり負けそうなのだろう。休憩と称して勝つ方法を必死で探しているらしい。どうせ無理だろうに。
 しかしどうして彼女が捕まらなければならないのか。鬱陶しげにすると、クロヴィスが叫んだ。助けてくれ。
 まあ、確かにCCはルルーシュというチェスの名手と共に暮らしてはいたが、打ち合ったわけではない。無理だと告げると、この世の終りのような顔をして彼は項垂れた。今日もまた負ける。一体何敗目なのだろう。
 別に彼女はクロヴィスが項垂れようが落ち込もうが馬鹿だろうが阿呆だろうがどうでもいい。
 ルルーシュとも打ちたかったな、と呟く声に気付かなかった振りをして、CCは廊下の先にある中庭を見据えた。






 スザクとユーフェミアは今日も幸せそうだ。コーネリアは相変わらず。ナナリーはまだ寂しそうだったぞ。
 生徒会の奴らは楽しげにクッキーを作ってた。すぐここにも届けられるだろう。美味そうだったぞ、楽しみにしてろ――ああ、青いクッキーには気をつけろ。一人死んだ。
 そうそう。オレンジ型のナイトメアとやらを馬鹿どもが作っていた。すぐにディートハルトが現像して持ってくるらしい。無駄にリアルで気持ち悪いぞ、あれは。
 騎士団の連中と、軍人は仲良く遊んでいたな。考えられないだろう? まあ、全く性格は変わってないけどな、特に玉城。カレンはまだ、時々落ち込んでいるようだな。
 クロヴィスとシュナイゼルは毎日チェスを打っているようだ。結果は言わなくても分かるだろう? お前とも打ちたかったとか言ってたな。






 手に持ったプリンを墓石の前に置いて、CCは今日の出来事をつらつらと述べた。特に意味はない。感傷かもしれないし、未練なのかもしれない。しかし、CCは特に意味のない行為だと思っていた。
 それでも尚、彼女は語る。幸せな毎日。彼が作り出した、平和。
 銘には三つの名前が刻まれている。
“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”
“ルルーシュ・ランペルージ”
“ゼロ”
 どれも彼の軌跡で、彼自身の名前だ。
 ああ。息を思い切り吸い込む。気持ちがいい。
 青空は広く彼女達を包み込んでいる。租界の様に高層ビルが立ち並んでいないため、視界を邪魔するものはなにもない。
 きっと、あの空には彼がいるのだろう。流れる雲を遠目に見ながら、CCは小さく笑った。



(誰も忘れてないよ、お前のこと)







そんな最後。これぞオールキャラっというものを書きたかった。ちょっと足りてませんが。多すぎだっつの><
ミスリードできたでしょうか。オチ(ルル死亡済)に気付かせないって難しい。
というか色々設定意味不明。オーストラリアはいい所なのでもう一度行きたいなあ。

20070728






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