DVD5巻のピクドラをものっそいネタバレしています。








 どういう、ことだ……?
 ジェレミアはそのオレンジ色の瞳を大きく開いた。







 この日を幾度となく夢見ていた。クロヴィスを殺したテロリスト。彼の名誉を汚し、地の底まで貶めた憎き敵。この手で殺してやらねば気がすまぬと、毎日ゼロのことを考え続けた。
 そして今、やっとゼロを手中に収めた。ジェレミアの執念には、彼の緻密な計画も紅のKMFも歯に立たなかったのだ。
 ああ、ああ。
 KMFから投げ出された彼は、なんと貧弱なことか。片手でへし折れてしまえそうな腕、すらりとした足、細すぎる腰。全てがジェレミアのものだった。生かすも殺すも彼次第。無論、殺す気だった。
 拳銃を構えた時、ふと気まぐれに思いついた。顔。頑なに隠すそれは、一体どのようなものだろう。
 見たい。顔を。顔が。苦渋に歪む顔が、屈辱に耐える顔が、絶望に染まる顔が。
 口の端を醜悪なまでに持ち上げ、ジェレミアは仮面に手を添えた。ゼロは気を失っているらしく、抵抗もなくそれは地面に落ちる。
 まず見えたのは、黒い髪。
 次に見えたのは、白い肌。
 そして最後に見えたのは。

「なっ……!」

 見覚えのある面影は記憶に容易に結びついた。
 何度悔恨したことだろう。何度涙を流しただろう。彼らをみすみす死なせてしまった過去は、ジェレミアにとって忌まわしい記憶だった。
 それが、どうして。
 小さかった。けれど賢かった、母の死により日本に送られた悲劇の皇子。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。彼の初めて使えた皇族の一人だ。
 どうして生きている?
 どうしてゼロなのだ?
 他人の空似ではと思いたかったが、直感がそれを否定していた。ブリタニアに刃を向ける、皇族に敵意を抱く、イレブンにいる、男。成人はしていないだろう彼の年頃は、ルルーシュがそのまま成長していた場合と合致する。
 ああ、なんという。
 動揺に動けずにいると、ゼロが小さく呻いた。うっすらと開いた目と合う。

「お前、は」

 すぐに現状を理解したのだろう。慌てて距離を取ろうとしたが、すぐにまた地に伏せてしまった。戦闘で負った傷は浅くない。
 殺すべきか。
 助け起こすべきか。
 憎いテロリストへの感情と、皇族への忠誠心がせめぎ合う。
 ゼロは一瞬だけ左目に手を沿え、直後に何かをあきらめたかのように目を細めた。使用済み。そう呟いた言葉の意味は分からなかったが、彼には何の手段も残されていないらしいことは薄々感ぜられた。

「どうする、私を売るか? それとも」

 自嘲染みた笑みに、思わずあの頃のルルーシュの笑顔が重なった。
 どうして。どうして。
 しかし、考えるまでもないことだった。もしも彼があのまま生きていたなら、幸せにただ生を満喫するなど出来るはずもない。

「ルルーシュ、様」

 思わず口をついて出た言葉に、彼は眉を顰めた。何故、その名前を。
 昔からそうだった。冷静沈着なようでいて、実は彼は感情が分かりやすい。やはり、彼はルルーシュなのだ!

「以前は、お守りできなくて申し訳ございませんでした。しかし今度こそはお任せください!」

 大きくなられた。マリアンヌ様にそっくりだ。テロリストに過ぎないはずなのに、このあふれ出るような気品はなんだ。皇族以外の何者でもないではないか。
 もう迷うことはなかった。
 ジェレミアにとって、皇族とは絶対的な存在。ゼロだろうと彼に屈辱を味あわせた人間であろうと、皇族なのだ。叩き込まれた精神は、彼を害することを許さなかった。
 秀麗な顔を見つめながら、ジェレミアは固まるルルーシュを優しく助け起こす。
 乱心の主君を諌めるのも部下の仕事。彼がブリタニアを憎むのも致し方ないとは言え、分かってくれるはずだ。聡明な彼なのだ、きっと祖国のために生きる道を選んでくれるだろう。
 死なせずに済んでいたという事実が、ジェレミアの顔を至福に緩ませた。



(……いきなりどうしたんだ? このオレンジ)







バレネタの醍醐味を軽く無視してみました^^ 激しく一方通行。きっとルルは覚えてませんよね^^
この後がんばってルルを説得するオレンジ。やっぱり思い出せないルル。すれ違う想い。切ないね!






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