恋のできないわたしたち



 かわいい。
 赤く染まる頬と、嬉しげに緩む唇。漏れる吐息はおそらく炎より熱く。
 楽しそうな後輩のそんな姿を見ながら、わたしは暖かく微笑む。

「ねえルル。ルル、聞いてるの?」

 白い頬と、クールに引き結ばれた唇。漏れる吐息はおそらく雪よりも冷たく。
 面倒そうな後輩のそんな姿を見ながら、わたしはやはり暖かく微笑む。

「聞いてるさ。なんだ?」
 
 恋はすばらしいと思う。少女を見ていると、そんなロマンチックな思考に溺れたくなる。
 少女はとてもかわいらしく、少年はとてもかっこいい。
 明るい彼女と冷静な少年は一見ちぐはぐな関係に見えるが、その実誰よりもお似合いにも感じられる、けれど。

 暖かな家庭で育った女の子。
 皇室から隠れ暮らす皇子。

 ふふ、なんて、不釣合い。
 
「会長」
「なぁに? シャーリー」
「この書類なんですけど」

 恋はかなしいと思う。少年を見ていると、そんな感傷的な思考に溺れたくなる。
 少年はとても優秀で、わたしもまた、優秀な部類に入る。
 一見お似合いに感じられる関係に見えるが、その実こんなにもちぐはぐな二人はいない。

 皇室から逃げ生きる皇子。
 家のために生きることを義務付けられた、わたし。

 ふふふ、なんて……。

「ね、シャーリー」
「はい?」

 結ばれるはずもない、ふたり。
 今が永遠に、続いていくと思っている、輝かしい、恋する彼女。
 過去から逃げ続け、恋なんて、考える余裕もない、彼。
 恋に生きるなんて、出来る筈もないと、分かっている、わたし。

 ふふ、と女の吐息を漏らして、わたしはシャーリーの耳元に赤い唇を近づける。

「ルルーシュのこと、好き?」
「んなっ!」

 からかわないでください、と少女が叫ぶ。
 どうしたんだという目を、少年が向ける。

 わたしは、紅茶のカップを持ち上げて、くゆりと揺れる水面を見つめる。
 歪むわたし、歪む世界、歪む気持ち。

 叶わぬ恋に、乾杯。



(さようなら、実らないわたしたちの、恋)







ミレイさんはシャーリーを応援しているように見えるけれど、ルルーシュがそれどころではないことも知っているはず。
まあミレイはルルが好きっていうのは私の脳内妄想上で決定事項なのですけれど
(相手がリヴァルの場合に限り意義は認める!)
どんな気持ちで見つめてるのかなあ、とか。








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