遠すぎるほどに近く



 恋人なのですか、と少女は問うた。
 その素直な表情にCCは苦笑した。少し嬉しげで、少し悲しげで。そこには兄の幸せを願う妹の姿と、しかし兄は兄以上にはなり得なく、自分もまた妹の枠を出ることが出来ない現実に、複雑な心を揺らす女の姿があった。
 優しい子だ。CCは、そう思う。ささやかに咲く一輪の花。誰の花にもなれない自分とは、大違い。

「将来は、誓い合った仲だな」
「そう、ですか……」

 明らかに動揺した態の彼女を、CCは温かく見下ろす。兄を取られたくない心情が手に取るように分かり、その愛らしさに心が和らぐ感じがした。
 守ってあげたくなるような女の子とは、まさにこの少女を言うのだろう。
 放っておいたらそのうち折れて消えてしまいそうに儚く、綺麗だ。

「ふふ。大丈夫だよ」
「え?」
「あいつの一番は、いつだってお前だよ。ナナリー」

 途端、少女が戸惑ったように首をかしげた。少し困惑げに、少し嬉しげに。そこには兄の恋人に遠慮する妹の姿と、最も大切にされていることへの歓喜を溢れさす女の姿があった。
 素直な子だ。CCはそう思う。暖かな、春の日差しのようだ。名前さえ忘れた雪とは、大違い。

「でも、CCさんは、あの、お兄様の……」

 少女の言わんとしているところを悟り、CCは苦笑した。
 恋人。恋人?
 黒の騎士団でもそう噂されていたことを思い出し、ため息をつく。
 恋人になんてなれるはずがない。共犯者はどこまでも共犯者であり、組んだその手が離れればそこで終わりだ。

「ナナリー、将来を誓い合った、ということはな」
「え、はい?」
「“今”なんて無い、ってことなんだよ」

 そしてきっと、誓い合った将来の先にもまた、何も存在していない。
 “今”しかないとでもいう風に寄り添いあう、兄と妹。
 “今”をただ闇雲に駆け抜けようとする、女と男。
 世界が違うのだ。
 CCの願いと、ギアスの力が結びつける、単なる利害関係。感情というあやふやなものよりもよっぽど信用はできる関係だが、全てが終われば何も残りはしないだろう。

「でも、CCさん」

 少女の小さな声に、CCは背を向ける。
 本来ならば出会うはずのなかった二人。どこまでも平行線で、互いに少年を共有する日など来ない。 

「私は、一緒に未来に進める力が、羨ましいです」

 部屋から歩み去ろうとするそのとき、一陣の風がつれてきた少女のやわらかい香りが、CCの胸を抉った。



(そうであれたら、どんなによかったことか)







ルルーシュとCCが恋愛関係ってなんか、想像が出来ない。
なんていうかCCの秘密を知ったルルーシュ、とか思い浮かべると、親密になるっていうより馴れ合い関係になるっていうほうがしっくり来てしまう気がしてきた
恋愛まで発展させてしまうのを怖がってる二人、みたいな、不器用な、あおいはる
まあルルって相手に理想を投影して(例:スザク・ナナリー)恋してる感じだから、理想を抱く必要性の無いCC相手だと……じゅくねんふうふ

20080328








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