気がついたら、ひとりだった。
真っ暗闇と、動かない足を抱えて、ひとり、静けさの中で蹲っている。
気がついたら、ふたりだった。
優しく抱きしめる兄の手が、わたしを、慰めてくれる。
気がついたら、さんにんだった。
乱暴さにおびえたけれど、その手は、力強かった。
そしてまた、気がついたら
いかないで
ユフィ姉さまが、騎士を得た。それは私の、とてもよく見知った人、で。
スザクさんは姉さまの恋人なのだと。そう噂されている。
さよなら、私の淡い初恋。
お兄様は私の耳に入らないようにと気遣ってくれているけれど、これだけ騒がれているのに知らずにいられるはずがない。
ふふ、なぜお兄様はあんなにも悲しそうにしているのかしら?
確かにちょっぴり寂しいけれど、これは祝福すべきこと。
名誉ブリタニア人たるスザクさんが騎士になれたのは、ブリタニア史上で初めて。世界を変える切っ掛けになってくれる。
ユフィ姉さまがスザクさんのように優しい恋人を得たのは、幸せなこと。きっと世界は優しく変わってくれる。
なのになぜ、お兄様はあんなにも辛そうにしているのかしら?
なんとなく分かっていた。お兄様は私とスザクさんの仲を取り持とうとしていた。
とても嬉しかったけれど、私はお兄様さえいてくれれば、幸せなのに。
……なのにお兄様は最近出かけてばかり。たまに鼻を突くあのにおいは、血、のような。
……もうスザクさんもここへは来てくれないのでしょう。KMFを駆って、姉さまを助けるのだから。
私に出来るのはただ、無事を祈るだけ。
この暗闇を抱える瞳と、動かない足では、出来ることなど少なすぎる。
ああ、ほら。
手に持ったカップを壁に投げつける。割ることはできるけれど、破片を拾うことはできない。
シーツをビリビリに裂いてみる。破くことはできるけれど、繕うことはできない。
爪を立てて肌を掻き毟る。傷つけることはできるけれど、治すことはできない。
何も出来ない私の体。
ああ、帰ってきてください。私はここにいます。私には見えないから、貴方が探してください。
ああ、戻ってきてください。私はここにいます。私には歩けないから、貴方が探してください。
助けてください。私はここにいるのに、私はひとり。誰かここへ来てください。抱きしめてください。ひとりにしないで下さい。
折り紙で折った鶴を小さな手のひらで握りつぶす。飛ぶことの出来なかった偽者の鳥は、呆気なく紙くずと化す。
――毎日楽しそうですね、お兄様。
――おめでとうございますスザクさん。
精一杯の祝福を胸に、私はほんのちょっぴりの寂しさを覆い隠す。
(助けてと叫ぶ心に、どうして誰も気づかなかったの?)
やっと小説版読みました
その後の話
1.発見したルルーシュがゼロやめる
2.いっそ黒の騎士団で保護しちゃう
3.なぜか来ちゃったスザクが外部犯と勘違いして大事に
4.玉城が……ええと思いつかない
20080404